これまで培ってきた経験を全て詰め込んで作った曲

――『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』の各ユニットの書き下ろし楽曲制作のオファーを受けたときのお気持ちをお聞かせください。

DECO*27 まずは「本当におめでとうございます」という気持ちでした。プロセカは始まりから関わらせてもらっているので、リリースから4年経って、こんなにも大きなコンテンツになって、ついに劇場版にまでなるということに感動しました。今回いただいたオファーは僕のキャリアの中でも初めて挑戦する内容のものだったので、自分ができる精一杯のものをお届けしたいと思いました。劇中でミクがハミングを歌うのですが、そのメロディーが最終的に「ハローセカイ」という楽曲になります。ハミングのメロディーが各ユニットに届き、各ユニットはそのメロディーから自分たちなりの楽曲を作っていく。なので、「ハローセカイ」に含まれているメロディーが他の5つの書き下ろしユニット楽曲にも組み込まれていて、実際には全ての曲がメロディーで繋がっているんです。「とんでもないものが来た!」と驚くと同時に、これまで自分が培ってきた経験やスキルを活かせそうだ、とやりがいを感じました。

――初音ミクが映画のスクリーンで動いて歌うというのは初めてのことです。ボカロPとしてどのような思いがありますか?

DECO*27 16年間、バーチャル・シンガー「初音ミク」と一緒に楽曲を作ってきた身としては感動しますね。それに対して自分も楽曲という形で参加できることをとても光栄に思っています。僕の曲のファンや音楽ゲームのファンとはまた違った、これまでプロセカには触れてこなかったアニメ映画のファンの方にも、初音ミクという存在を知ってもらってプロセカをプレイするきっかけになるかもしれない、と。そしてこの劇場版が公開されることによって、より一層プロセカやボーカロイドを取り巻く環境が盛り上がればいいなと思っています。

――楽曲の制作中、印象に残っていることはありますか?

DECO*27 制作の流れの中で、同じメロディーを運用しなければならないというテーマがあったので、そこを守りつつも、6曲全て同じような曲になってしまうのは避けなければならならない。どの曲も新鮮に、かつ各ユニットに合っていると感じてもらいたかったので、親交のあるボカロPの方々の力を借りる運びになりました。正式にオファーをする前の段階で、歌詞やメロディーを書きながら「この曲はあの人にお願いしたいな」とイメージしていたのですが、僕が思い描いていた方たちが全員オファーを受けてくださったことがとてもうれしかったです。参加してくださる方々はそれぞれ自分の作風をお持ちなので、デモの段階でどこまで作り込むべきかというのはとても悩みました。僕が作り込みすぎて、アレンジャーさんが個性を出す余白がなくなってしまったら、コラボする意味が薄れてしまう。でも、仕上がりのイメージは共有したかったので、オンラインでミーティングを重ねながらお互いの良いところの塩梅を探っていきました。

――作詞で特にこだわったところはありますか?

DECO*27 作詞に関しても、今回は楽曲を通して誰かを救ったり勇気づけたりしたいというのが根幹にあるので、伝えたい想いはみんな一緒なんです。だけど、想いが同じだとしても各ユニットが楽曲にして誰かを励ますならば、そこで個性が出ます。みんなが一様に同じ励まし方であるはずはなくて、Vivid BAD SQUADだったら「俺たちも行くからお前も来いよ!」と背中を見せてグイグイ引っ張っていく感じであったり、Leo/needなら同じ目線で「私たちも行くから一緒に行こう」と言ってくれたり。そういうメッセージ性でユニットごとの特色を出しつつ、歌詞で最終的な雰囲気の調整をしていきました。

――映画が公開したら、何回くらい観に行かれる予定ですか?

DECO*27 え!何回でしょう(笑)。僕は普段あまり映画を観ないのですが、気に入ったものは何度も劇場に行って観たりすることもあります。今回は自分の楽曲も流れるので、そこも集中してみなければなりませんね。ボーカロイドに詳しくない友人を誘って行って、感想を聞いてみたいです。