会話から発生するフレーズを大切にしている
――キャリアについてお伺いします。多彩なジャンルの楽曲を制作されているDECO*27さんですが、ご自身の音楽のルーツはどこにあるのでしょう?
DECO*27 僕がギターを始めた13歳の頃は、19(ジューク)や唄人羽などフォークデュオで活動されている方々の曲をよく聴いていました。自分がギターを始めたことでロックや洋楽にも興味を持って、GreenDayやSum41なども聴くようになったので、その辺りがルーツになっていると思います。ただ、ジャンルへのこだわりは特になく、自分が良いと思った音楽を聴いてきました。それは今でも変わりません。
――どのようなきっかけでボーカロイドに興味を持ったんですか?
DECO*27 大学一年生の頃に、ニコニコ動画というものがあると教えてもらって、それからいろんな動画を見るようになりました。その過程でkzさんの「Packaged」という曲を聴いたのが初音ミクとの出会いです。初音ミクを知って、その声にとても魅力を感じました。これまで自分がやってきたギターや作曲活動と組み合わせたら、何か新しいものが作れるんじゃないかと思ったんです。
――初音ミク独特の機械の声にはすぐに馴染むことができましたか?
DECO*27 ボーカロイドを始めたとき、それまでの自分の作風と初音ミクを組み合わせようとは考えずに、あくまで自分の作曲スキルを使って、初音ミクの曲を作っていきました。いざ作り始めると、聴いているだけの場合とはミクの声に対する感じ方も変わってくるんです。自分では「このメロディーとこの歌詞は合いそうだな」と思っても、実際にやってみると「ミクの声が活きないな」と思ったり。「じゃあこうだったらどうだろう?」と数ヶ月はいろいろと研究していた期間がありました。新しいものと出会って、自分自身の作曲スタイルも新しいものに変わっていく、という感じでした。
――DECO*27さんはニコニコ動画での楽曲の投稿ペースが速いイメージがあります。たくさんの曲を作るためのインスピレーションはどのような瞬間に湧くのでしょう?
DECO*27 人と会話しているときに浮かぶことが多いです。僕は、楽曲制作の工程の中で作詞が一番好きなんです。作詞をするときには、やはり言葉がヒントとして重要になってきます。人が言った印象的なフレーズが心に残って、そこからイメージが湧いて、世界観を広げていく。僕の場合、不思議と書いたり読んだりしているときにイメージが湧くことは少ないです。歌が人の喉から出てくるように、人そのものから発生するということが大事なのかもしれません。
――作詞をする上で大切にしていることはありますか?
DECO*27 「DECO*27」の歌詞は基本的に愛をテーマにしていて、そこから外れるものはほとんどありません。愛には、家族や友達や恋人、そして自分自身への愛などさまざまな形や対象があります。それをテーマとしてピックアップして、ストーリーや世界観を構築して曲を書き上げています。
――愛をテーマにした歌詞の言葉選びはどんな部分にこだわっていますか?
DECO*27 こだわりは「違和感」です。愛を伝えるときに「愛してる」と言ってしまったら、それはもう歌にする必要がないと感じてしまいます。「愛している」と伝えるために、どれだけ遠回りをしつつ、聴いてくれる方に分かってもらえるか。好意を伝えるときに普通は使わないようなワードをイメージの外から、それこそ先ほど言ったような、誰かとの会話の中で発生した言葉を持ってきて組み合わせています。