小さい頃に観た平幹二郎さんのギリシャ悲劇に衝撃を受けた

――『オイディプス王』の初演はパルテノン多摩のリニューアルオープン1周年記念として2023年7月に上演されました。パルテノン多摩の印象はいかがですか。

三浦 お稽古期間中のまだセットが組まれてないときに劇場に行って、ステージから客席を見させていただく機会があったんです。マイクは付けていなかったんですが、恐る恐る声を出してみたら、とんでもなく綺麗な反響で一気にテンションが上がりました。その瞬間、いろんな思いや不安があったんですが、「よし!ここに立つんだ」と覚悟が決まりました。昨年も『リーディングシアター GOTT 神』でお世話になりましたが、また『オイディプス王』の再演でパルテノン多摩に立たせていただけるのは光栄なことです。

――前回、ギリシャ悲劇を演じるということで、どんなことを意識しましたか。

三浦 小さい頃に平幹二郎さんの演じたギリシャ悲劇を観させていただいたんですが、平さんが出てきた瞬間、ライトが変わったのかと思うぐらいステージが輝いたんです。それは平さん自身が放つオーラで、それが確かに見えました。華のある平さんの大きさや溢れ出すパワーが衝撃的で、今でも忘れられないんです。僕がオイディプス王としてギリシャ悲劇を演じるにあたって、あのときの平さんの印象や雰囲気は意識しました。どんな形でもいいから、さっと空気を一変させるような存在感。ことさら存在を大きく見せるということではなく、僕だからできるオイディプス王。そこでも石丸さんの「三浦なりのオイディプス王でいいから」という言葉が支えになりましたし、僕を信じてくれていることが感じられました。

――古典ならではのセリフ回しですが、それを自分の言葉にする難しさもあるのではないでしょうか。

三浦 仰る通りですね。昨年は改めてお芝居を勉強しようと、様々な作品に取り組んできたんですが、文字に追われてしまうと、どこかに気持ちが置いてきぼりになる瞬間があるんです。それを1ミリでもなくしたいというのが今回の目標です。たとえ難しく感じる言葉でも、そこに気持ちが乗っかっていたら、きちんと伝わると思うので、改めてそこを強化していきたいです。

――先王ライオスの妻でオイディプスの母、のちにオイディプスの妻となるイオカステを演じた大空ゆうひさんの印象はいかがでしたか。

三浦 前回は僕に余裕がなさ過ぎて、気付いたら始まって、気付いたら終わっているぐらいの感覚で、ほとんどのキャストの皆さんとお話しできなかったんです。でもお芝居は不思議なもので、同じことを毎日やっているのに、「今日は乗ってないな」とか、「今日はこういう感じだな」とか、いろんなことを感じるんです。そういった押し引きがあったり、お互いの空気を感じたりというところで繊細に生きられたなと思います。それはイオカステ役が大空さんだったからこそだし、僕を支えてくださっていたと思います。あと大空さんはどう思っているか分かりませんが、僕と似ている部分がある気がするんですよ。そういった部分も今回話してみて答え合わせをしたい気持ちもあります。

――どういう部分が似ていると感じるんですか。

三浦 抽象的な話になるかもしれませんが、ちゃんと理解しないと、そこから一歩も進めないところが似ているんですよね。理解した“つもり”の状態でお芝居をやろうと思えばできちゃう人も中にはいらっしゃると思います。そこは技術で埋められるかもしれませんが、僕はお芝居で嘘をつけなくて。ちょっとした引っかかりでも、それがあると前に進めない。もちろんお芝居ですから嘘なんですけど、でも嘘をつけないところが大空さんにもあって。今回も嘘のない芝居を二人で作りたいなと思っています。

――今回は再演ということで、前回よりも共演者の方々とコミュニケーションは取れそうですか?

三浦 いつもコミュニケーションを取りたい気持ちはあるんですよ。実のところ僕は一人ぼっちが嫌いなんです(笑)。なので今回は自分から行けるように努力します。