小学生の頃からネットっ子でボカロっ子
――ボカロを好きになったきっかけを教えていただけますか。
鈴木 小学校4、5年生くらいのときにクラスの子が「初音ミクというのがあるんだよ」と、こっそり秘め事ぐらいの感じで教えてくれて(笑)。そのときに「メルト」という曲に出会って、こんな新しい世界があるんだと知って。「どうやら『メルト』をカバーしている人たちがいるらしい」ということで「歌ってみた」に出会い、ニコニコ動画に初めて自分名義で会員登録というものをして、ボカロにハマっていきました。学校から帰ってきたら必ずニコニコ動画のボカロランキングを100位から1位まで全部チェックしたり、投稿の新しい順に曲を聴いたりして。毎日ネットに張り付いてボカロ三昧でした。歌ってみたの真似事もしていましたし、当時の私がプロセカに出会っていたら、めちゃくちゃニーゴに憧れているだろうなというくらい、ネットっ子でボカロっ子でした。
――どうして、そこまでボカロに惹かれたのでしょうか。
鈴木 ニコニコ動画にしても、初音ミクというコンテンツにしても、まだまだ可能性が未知数だったんですよね。ボカロを使って踊る人もいれば、歌う人もいて、いろんなことが自由にできるところに惹かれていました。
――ということはプロセカに曲提供しているボカロPさんへの思いも強いですよね。
鈴木 そうですね。たとえばDECO*27さんは、今でこそミクさんの印象が強いですけど、GUMIさんの楽曲も投稿当時から聴いていました。プロセカを通して出会うボカロPさん全員が、私にとっては神様みたいな存在で。初めてご挨拶させていただいたときは、「本当に実在するんだ」と(笑)。声優になる前はニコニコ動画で活躍する人になりたいという夢もあったので、ある意味その夢を絵名に叶えさせてもらっている感覚です。
――歌手としてボカロから影響は受けていますか?
鈴木 たくさん受けています。特に大きな存在が「やなぎなぎ」さんで、「ガゼル」という名前で歌い手をやられていた時代から愛聴していました。なぎさんの歌い方や、そのときに歌われていた楽曲が自分の好みに影響しています。プロセカに限らず他のコンテンツでも、すごい高音や早口を取り入れた難しい曲を歌うことがあるんですが、それに対応できるのもミクさんのおかげで。「初音ミクの消失」に始まり、「ローリンガール」「炉心融解」など、それまでの歌の常識を覆すような曲に挑戦することによって、自分のレンジや可能性が広がりました。
――人知を超えたような曲でも、練習すれば歌えるようになるんですね。
鈴木 ずっと練習していると意外と出せるようになって、それが楽しくなって、問題集を解くテンションで「ローリンガール」を歌うみたいなことをやっていました。ちなみにPSPで「初音ミク〜Project DIVA〜」もプレイしていました。
――声優デビューする前から、歌手活動をやりたい気持ちは強かったんですか。
鈴木 小学4年生くらいから国語の授業で朗読したり、学芸会で歌ったり演じたりというのが好きになって。同じタイミングでアニメやボカロを通して、こういう歌があるんだとか、こういう作品があって、こういう職業があるんだと知るようになって。仲の良い友達同士でカラオケに行ってボカロ大会を開いて、みんなに歌を聴かせたり。だから、いつか歌やお芝居をお仕事にしたいと思うようになりました。
――実際に歌手活動を始めて、歌うことに対する意識の変化はありましたか。
鈴木 自分が良いと思っている歌声のニュアンスと、お客さんが良いと思ってくださる歌声のニュアンスは違っていて。自分では恥ずかしいと感じた表現でも、それが良いと言ってくださる方々がいるので、聴き手が自分の可能性を広げてくれるんだと音楽を通して知りました。
――音楽の聴き方にも変化はありましたか。
鈴木 食わず嫌いをしないようになりました。それまでバラードや優しい音楽が好きだったんですが、パワフルな楽曲を歌っている鈴木みのりが好きだと言っていただけることが増えてから、そういう曲を自分でも探して聴くようになって。自分の目線だけではない聴き方になりました。
――最後に改めて映画『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』の見どころをお聞かせください。
鈴木 ミクさんファンの方もプロセカファンの方も、見たかったミクさんやキャラクターたちに出会える映画になっているので、ぜひ一度は劇場に足を運んでいただきたいです。ミクさんが世に出て約17年経って初めて劇場でミクさんの姿を見られますし、ボカロPさんたちも大活躍なので、プロセカを知らない方も必見です!
※「VOCALOID(ボーカロイド)」および「ボカロ」はヤマハ株式会社の登録商標です。
Information
『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』
絶賛公開中!
声の出演:初音ミク/ORIGINAL CV BY藤田咲、鏡音リン・鏡音レン/ORIGINAL CV BY下田麻美、巡音ルカ/ORIGINAL CV BY浅川悠、MEIKO/ORIGINAL CV BY拝郷メイコ、KAITO/ORIGINAL CV BY風雅なおと、星乃一歌/野口瑠璃子、天馬咲希/礒部花凜、望月穂波/上田麗奈、日野森志歩/中島由貴、花里みのり/小倉唯、桐谷遥/吉岡茉祐、桃井愛莉/降幡愛、日野森雫/本泉莉奈、小豆沢こはね/秋奈、白石杏/鷲見友美ジェナ、東雲彰人/今井文也、青柳冬弥/伊東健人、天馬司/廣瀬大介、鳳えむ/木野日菜、草薙寧々/Machico、神代類/土岐隼一、宵崎奏/楠木ともり、朝比奈まふゆ/田辺留依、東雲絵名/鈴木みのり、暁山瑞希/佐藤日向
原作:セガ / Colorful Palette / クリプトン・フューチャー・メディア
監督:畑博之
脚本:米内山陽子
アニメーション制作:P.A.WORKS
配給:松竹
製作幹事:サイバーエージェント
CDショップで聴いたことのないミクの歌を耳にした星乃一歌。彼女はモニターに、見たことのない姿の“初音ミク”を見つけ、「ミク!?」と思わず声に出す。その声に驚いたミクは、一歌と目が合ったものの、ほどなくして消えてしまう。後日、路上ライブを終えた一歌のスマホに、以前見かけたミクが姿を現す。寂しそうに俯くミクに、一歌はそっと話を聞いてみると、“想いの持ち主”たちに歌を届けたいのだが、いくら歌っても、その歌が届かないという。ライブで多くの人の心に歌を届ける一歌の姿を見て、彼女のことを知れば自分も“想いの持ち主”たちに歌を届けることが出来るのではと考えたミクは、一歌のもとにやってきたのだった。ミクの願いに「私でよければ」と微笑みながら一歌は答え、初音ミクと少年少女たちの新たな物語が始まる。
PHOTOGRAPHER:TOMO TAMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI