持ち前の“あざとさ”を活かした「星屑のエスケープ」と演技経験が活きた「終わらないインソムニア」

――ソロでのシングルリリースは、2024年4月リリースの『圧倒的LØVE/Pink Temperature』以来で2作目となります。

稲場愛香(以下、稲場) ソロデビューシングルは準備段階から一杯一杯で、グループのメンバーでなくなった私の歌がどう評価されるのか、私に会いに来てくれる人がいるのかという不安がありました。制作では作詞家さんや作曲家さんともお会いして、私からも意見を出し、マスタリング(音源の最終調整)にまで参加する環境の変化もあったし、みなさんを代表して曲を背負うプレッシャーもあったんです。でも、そうした不安やプレッシャーを乗りこえられた経験が自信につながったし、2ndシングルではひとまわり成長しました。今回、レコーディングのディレクションを務めてくださったのは、カントリー・ガールズ時代にお世話になった方だったんです。お会いしたのが10年ぶりぐらいで、右も左も分からなかった当時よりも成長した自分を見せたい気持ちもありました。

――2ndシングルのタイトル曲「星屑のエスケープ」は、シティポップ調のダンスナンバーです。

稲場 前作の「圧倒的LØVE」ではアイドルっぽさにカッコよさをプラスして、私らしく“あざとさ”も出そうとして歌っていたんです。でも、今回の「星屑のエスケープ」は違った“あざとさ”で、小悪魔な歌詞に寄せています。印象的なフレーズ「ダメ ダメ」では甘い声で歌ったり、オチのDメロでは大人っぽい声で歌ったり。自分の声もひとつの楽器として、曲中でのどの位置を変えながら歌う感覚でした。

――室内や車内、ダイナーと、空間がコロコロ切り替わるMVは、どこかレトロな雰囲気もただよいます。

稲場 レトロな空間が好きで、撮影では時代を感じさせるアイテムにワクワクしました。髪の毛を下ろしているシーンとツインテールのシーンがあるのは私のアイデアで「できれば髪型を変えたいです」と、お願いしたんです。歌声で目立った変化があるのは(先述の)Dメロだけなので、視覚的な変化があれば「飽きずに見てもらえるかな」と思って。26歳(撮影当時)のツインテールは「どうなんだろう」とためらいもあったんですけど、「圧倒的LØVE」のハーフツインとはまた違ったスタイルで、インナーカラーにも初挑戦しました。

――かたや、もうひとつのタイトル曲「終わらないインソムニア」は眠れぬ夜をテーマにした、シックな曲調です。ただ、MVでは晴れやかな青空の下で、稲場さんが優雅に踊っていて。明るい曲調の「星屑のエスケープ」は夜空の下で、真逆な印象も受けました。

稲場 私も曲を受け取った時点で、同じことを思っていたんです。でも、抜け出したくても抜け出せない恋をして、眠れないまま朝を迎えてしまったと考えると納得できました。終盤で感情を爆発させながら「朝日が笑う 私は笑い返すの」と口ずさんで踊るシーンでは、そこまでのシーンとのギャップもあります。撮影では、過去に受けた演技レッスンで「感情を伝えるときは、逆の表情をするとより感情が伝わる」と教わったのを思い出したんです。例えば、ドラマではストレートに泣くのではなく、笑いながらもこらえきれない涙を流すシーンでは、もらい泣きしてしまうと思って。「終わらないインソムニア」の終盤では「笑うのは辛いはずなのに、笑ってみせる」と意識していました。