どんなときでも、いかに自分を貫けるかが大事
——人力舎の養成所に入る前は、大学のお笑いサークルに所属していたんですよね。
森本 ICU(国際基督教大学)のお笑い研究会に所属して、主に漫才をやっていました。
——大学のお笑いサークルから直で事務所に所属するのはハードルが高かったのでしょうか。
森本 よっぽどお笑いコンテストなどでの成績が良かったりするとスカウトもあって、同年代だと真空ジェシカが、そのまま人力舎に入ったんですが、僕の場合は養成所に入るためのお金を地道に貯めていました。
——大学に行く前からお笑いをやると決めていたんですか?
森本 何となく決めていました。高校卒業してすぐに養成所に入ってもいいかなと思ったんですが、親から「大学だけは行って欲しい」と言われたので進学したんです。親的には、大学の4年間で諦めるだろうと思っていたんでしょうけど、お笑いをやりたいという気持ちは変わらなかったですね。
——養成所に行くと伝えたときの親御さんの反応はいかがでしたか?
森本 めちゃくちゃ反対されました。芸人になってからも、「いつ辞めるの?」と言われていましたからね。たまたまデビュー2年目の2014年に『おもしろ荘』(日本テレビ)に出させてもらって。番組内では仰々しく「何百組から選ばれて」みたいな紹介をされるので、まんまと『おもしろ荘』を見た親が真に受けて、「何百組の中から勝ち抜くなんてすごい」と。そこから風向きは変わりましたが、それまでは肩身が狭かったですね。
——大学のお笑い研究会には何人ぐらい所属していたんですか?
森本 本当に小さなお笑いサークルで、4、5人しかいませんでした。ライブをやるにも組数が少ないから、同じ人が別の人と組んで組数をかさ増しして、何組も出るというのをやっていました。でも少人数だったからこそ経験も積むことができて、学生のお笑い大会でも決勝に進めたんです。そこで真空ジェシカとも出会いました。そのときに全く歯が立たなかったら、「大学で無理なら、プロは無理だろう」とお笑いを諦めていたかもしれません。養成所に行くときは不安もありましたが、決勝までは行けていたので「まだまだ行けるかも」という気持ちがありました。
——当時、お笑い大学サークルの注目度はいかがでしたか。
森本 今ほどではなかったですけど、ちょうど盛り上がり始めた時期で、『学生HEROES!』(テレビ朝日)というオードリーの春日(俊彰)さん司会の深夜番組があって、大学お笑い特集で呼んでもらったこともあって、ちょっとずつ自信がつきました。
——真空ジェシカ以外で今活躍されている芸人さんには、どんな方がいましたか?
森本 サツマカワRPG、ストレッチーズ、さすらいラビーなどで、交流もありました。面白い人たちは大学時代からブレていないんですよね。
——森本さんは、どんなネタをやっていたんですか?
森本 基本的に漫才コントで、幾つか兼任したコンビで一番成績が良かったのが男女コンビでした。相方の女の子が演劇をやっていたので、演劇チックにボケて、僕がマイクに向かってツッコむみたいなネタでしたね。
——大学のお笑いサークルと養成所ではライブの雰囲気も違うのでしょうか。
森本 大学のときはお客さんも大学生だし、ターゲットが狭かったんです。同世代にウケるものを押さえておけば、それなりにネタも通用していました。でも養成所ライブは一般のお客さんではなく、ご家族、友達が来るので、分かりやすいほうがウケやすい。老若男女に受けるベタなネタのほうが笑いを取りやすくなりました。ところが、いざプロになるとベタだと弱いんです。ちょっとエッジを利かせないと、わざわざライブに来るお笑いファンの方は満足しないので、そこの乖離で苦しんだ人は多いですね。ずっと養成所で1位を獲っていた人が、プロになった瞬間、一切ウケなくなったりするのを見て残酷な世界だなと思いました。結局どんなときでも、いかに自分を貫けるかが大事なんです。
——トンツカタンはどういう経緯で結成したのでしょうか?
森本 僕は養成所でもずっと漫才をやっていたんですが、相方が「新しい夢を見つけました。獣医さんになります」と言ってお笑いを辞めてしまったんです。しかも卒業間近の1月に解散だったので、他のコンビは今の相方と卒業するのが確定しているんですよね。そんな中、お抹茶と櫻田(佑)はバイト先の同期で一緒に養成所に入って、ずっと二人でコンビを組んでいたんですが、そのタイミングで「僕らはツッコミがいないのかも」「ツッコミが足りないのかも」と気づいて。僕がコンビを解散して誰かと組みたいなと思っていた時期と合致したんです。僕の中ではコンビで漫才をやりたい気持ちが強かったので、ピンよりはいいかなとお試し感覚で入りました。でも、なんとか上手くいって、人力舎にも所属できて、2年目で『おもしろ荘』にも出られて、今も続いています。
——お抹茶さんと櫻田さんとは仲が良かったんですか?
森本 喋る間柄ではありましたけど、めちゃくちゃ仲が良いとかではなかったです。普通に話しやすい同期の一人って感じでしたね。
——二人のネタを見て、「ツッコミが足りない」と感じていましたか?
森本 当時はお抹茶が無理やりツッコミをやっていたんですけど、全然上手くなくて。本人もやりたがっていないのが分かるパフォーマンス。「これは駄目だ。いずれ解散するんだろうな」と思いながら袖で見ていました。まさか、そこに加入するとは思いませんでした。
——トリオでのネタ作りは難しかったですか?
森本 知らない仲ではなかったのでネタ合わせはスムーズでしたが、ネタ作りは難しかったですね。そもそもコント自体を大学時代からあまりやっていなかったですし、初めてのトリオだったので苦しみました。ただ当時から櫻田は独特な雰囲気がありましたし、お抹茶のほんわかした空気感も僕と櫻田にはないもので、役の割り振りはしやすかったですし、それぞれの個性を生かしながら、徐々にコツを掴んでいきました。