いろんなところで、誰かがサポートしてくれたおかげで今がある

——トンツカタンを結成して最初に手ごたえを感じたのは?

森本 コントしか作っていなくて、めちゃくちゃスベりまくっていたのですが、僕が得意の英語を使う「カタコト塾」というネタを作ったときに、同期のネタ見せで披露したら、いつものように全くウケませんでした。「これも駄目か」と思っていたら、当時の人力舎の社員の方がわざわざ連絡をくれて、「今日のネタ見せではウケてなかったけど、これは絶対に面白いと思う」と言ってくださったんです。それで次の同期ライブでやったら、めちゃくちゃウケて、初めて1位を獲ることができました。そのときに何となくネタ作りのコツが分かりましたね。

——なぜウケたと分析しますか?

森本 他の人にはない僕の個性として英語があったんですが、それまでは荒っぽく面白い部分を出していただけだったんです。そこでネタの作り方を変えて、英語で伝えるなら丁寧にやらなきゃいけないなという意識が働き、初めて「英語という分かりやすい面白ポイント」みたいなものができたんですよね。そこから逆算したネタができたというのが大きかったです。それまではとっ散らかった面白いことを無理やり形にして出していたのが、一つの強い軸に向かってどう作るかという部分を、自分の中で丁寧に作れたんです。

——『おもしろ荘』に出演して状況は変化しましたか。

森本 しばらくはオファーが続きました。その勢いで、賞レースでも結果を出すのがベストだったんでしょうが、なかなか上手く行かずで。2016年に「第7回お笑いハーベスト大賞」で優勝して、その実績を元にネタ番組にもちょろっと出させてもらえるようになりましたが、ネタ番組って、あんまり他に繋がらないんですよ。ネタだけでは人となりも分からないですし、いきなりテレビのロケに呼ばれる訳でもない。ネタ番組に出たら、またしばらくテレビに呼ばれずということを繰り返していて、光が見えない状況でした。大きな賞レースで勝たない限り、この状況を脱却できないのかという怖い時期でしたし、今がマックスの露出なんじゃないかと思っていました。

——森本さん個人の転機は何だったのでしょうか?

森本 細々と転機があったと思います。たとえばフワちゃんがYouTubeの世界にいざなってくれたり、大学時代の知り合いが『ブチ切れデトックス』(テレ朝チャンネル1)という番組で僕のツッコミを軸としたCS番組を作ってくれたり。この番組でテレ朝内での僕の評価がちょっと上がりました。そこからテレ朝深夜の『バラバラ大作戦』という枠に呼ばれることも増えましたし、今回の本で帯を書いてくださった佐久間宣行さんのYouTubeチャンネル『NOBROCK TV』に出させてもらって、お笑い好きの人たちから「森本ってこういう奴なんだ」と評価してもらうこともありました。いろんなところで、誰かがサポートしてくれたおかげで、ちょっとずつ僕の背中を押してくれました。

——ピンでの活動が増えることに戸惑いはなかったですか。

森本 ありました。ピンで出るって、その人に強烈な個性があるとか、何かでバズったとか、何がしかの理由があると思っていたんです。プレーンに肩書きのないツッコミで出るというのは今も大変ですしね。たとえば「M-1決勝に出てます」とかだったら、お笑いの先輩たちが全員見た上で接してくれますけど、いきなり知らないツッコミが現れたぞという状況で、誰も僕への信頼がないまま現場に行って、「何者なんだろう」で収録が始まる。ゼロから信頼を勝ち取っていかなきゃいけないという大変さはめちゃくちゃありました。でも、そういう時期に培ったことが、今回の本にも反映されています。

——大阪の芸人さんと絡む局面も多いですが、ツッコミで関西弁が使えない難しさもあるかと思います。

森本 よく言われるのが「なんでやねん!」が使える・使えないの差は大きいと。関西弁だからこそ、強い言葉でも、あまり怖くないというか。お笑いで使われている馴染みのある言葉なので、不快感を与えないんですよね。「しばくぞ!」とかもポップじゃないですか。でもそういう言葉が東京にないからこそ、こういう形のツッコミになったのかもしれません。それに加えて、実績もなく現場に呼んでもらったからこそのシナジーで出来上がったスタイルなのかなと思います。

——最後に『ツッコミのお作法 ちょっとだけ話しやすくなる50のやり方』の注目ポイントをお聞かせください。

森本 読み物として面白いものを心がけたので、実にならなくても笑える内容になっています。コミュニケーションの本としても成立するように書いているんですが、それが日常生活で全部有用かと言われたらなかなか難しいと思うんです。なので実生活で一つでも使えるなと思えて、さらに1回でも実践できたら僕は万々歳ですし、それでちょっとでも読んだ人の生活が豊かになったらうれしいです。

Information

『ツッコミのお作法 ちょっとだけ話しやすくなる50のやり方』
好評発売中!

著者:森本晋太郎
価格:1,760円(10%税込)
発売・発行:株式会社KADOKAWA

公式サイト

森本晋太郎

1990年1月9日生まれ。東京都出身。お笑いトリオ「トンツカタン」のツッコミ担当。プロダクション人力舎のお笑い養成所・スクールJCA21期を経て、現在はテレビやラジオで活躍中。

PHOTOGRAPHER:YASUKAZU NISSHIMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI