期待に応えたいと思いながらアフレコしていた

――原さんは『すずめの戸締まり』(22)の主人公・岩戸鈴芽、間宮さんは『BLUE GIANT』(23)の沢辺雪祈で長編劇場アニメの声優を務められていますが、今回のオファーがあったときは、どういうお気持ちでしたか。

原 前回は声だけでお芝居することの難しさを、身をもって体験したので、改めてプロの声優さんの素晴らしさを感じたんです。正直、もうやらせていただく機会はないんだろうなと思っていたので、お話しをいただいたときは、うれしいという気持ちと同時に、すごく不安で怖かったです。『すずめの戸締まり』のときは1行1行、細かく録っていただいたんですが、今回は長尺を一気に録るみたいなことが多くて、声優さん本来の録り方と近いやり方でした。私には基本的な声優の技術がなかったので、前回以上に難しかったです。

間宮 僕の場合は菜乃華が主人公を演じるということで、少しでも力になればと思ってお受けしました。ただ、菜乃華の声での表現があまりに素敵で、圧倒されて、最終的には「お邪魔させていただきます」といった心持ちになりました(笑)。

——原さんはどんな役作りを意識されましたか。

原 今回の音響監督さんは、『すずめの戸締まり』のときにもお世話になった方だったんです。事前に「『すずめの戸締まり』のときとは全然違う原さんの声を聞かせたい。原さんが演じていると分からないようなお芝居にしたい」とお話があって、何度もテイクを重ねました。りせの年齢に合うようなお芝居や声のトーンを作るために、毎日課題を出してもらったんですが、スキルアップのためという気持ちが伝わってくるのがうれしくて。その期待に応えたいと思いながらアフレコしていました。

――実際、今までの原さんの声とは違っていて別人のようでした。

間宮 大袈裟じゃなくて菜乃華と分からないですよね。菜乃華って分かって観ているのに、「こんな声も出るんだ」というシーンの連続で。

原 本当ですか?うれしい!

――しかも無理して作った声ではなく、ナチュラルでした。

原 ありがとうございます。スタッフの皆さんのおかげです!

——間宮さんは今回の役でどんなことを意識されましたか?

間宮 脚本には役柄のバックボーン的なことまでは詳しく書かれていなかったのですが、りせの祖母・文子と僕が演じた浦井洸はどういう距離感で接していて、どういった経緯でアリス記念館の館長になったのかという説明が、事前に監督からありました。細かいことはできないけど、ざっくりと「いい声のほうがいいんだろうな」と思ってアフレコに臨みました。

原 アフレコは別々だったのですが、完成した作品を観て、やっぱり間宮さんはいい声だな、素敵だなと、しみじみ思いました。

――それぞれ、ご自身の演じたキャラクターのビジュアルを初めて見たときの印象はいかがでしたか。

原 かわいいけど落ち着きもあって、アリスとの対比で、大人の女性という印象でした。これまで私は、どちらかというとアリスのように元気で表情がコロコロ変わるような、楽しげな女の子を演じることが多かったので、りせのような役柄は新しいチャレンジでした。

間宮 浦井は落ち着いていて、包容力というか、柔らかい雰囲気があって、ビジュアルからもいい声なんだろうなという印象を受けました。

――原さんは劇中でラップにも挑戦されています。

原 あれをラップと呼んでいいのか分からないんですが……(笑)。監督が「自由に楽しくやってください」と言ってくださったので、ノリと勢いで頑張りました。ほぼ一発OKだったので不安だったんですが、終わった後にブースを見たら、監督が頭の上で拍手をしていて、他のスタッフさんも笑ってくださっていたのでホッとしました。