いろんな楽しみ方をしたい人たちが共存できる環境を作りたい
――7月12日の大阪公演で幾つもの課題が見つかったと前回の連載で仰っていましたが、そこから7月27日の川崎 CLUB CITTA’公演まで、約2週間という短期間で、どのようにブラッシュアップを図ったのでしょうか?
Novel Core バンドとのコミュニケーションに関しては、RECデータを聴いて、定点の映像を見て、外音がどういうふうに出ていたのかということを確認して、シーケンスを間引きするか逆に増やすか、ギターの演奏やドラムの譜割の変更、キーボードのサウンドの変更など、細かい作業を全部しました。大阪公演を経て、みんなで演奏を再構築しました。あとテンションコントロールの面をみんなで意識するために、本番想定でのフルパワーのリハーサルを何回もやらせてもらいました。
――Coreさん自身、体力面や歌い方の課題があったとも仰っていました。
Novel Core 大阪公演が終わってからの2週間は、走り込みの回数や有酸素運動を増やして、肺活トレーニングもして、自分自身を鍛えるのと同時に、歌い込みも今まで以上にやらせてもらいました。演出面も大阪公演の映像を見ながら変更点を伝えるなど、チームと細かくやり取りをしました。
――CLUB CITTA’は2020年9月8日に無観客での初単独ライブ、2022年1月22日に初の有観客単独ライブを開催した場所でもあります。
Novel Core 今もお仕事をさせていただいているスタッフさんたちと初めてお仕事をした場でもあり、そこから続いてきたストーリーがあるので、今の状況で自分たちがCITTA’でできることって何なんだろうと考えました。昔の僕からしたら、こんな景色が見られる未来があるという、いち人間としての感動もあるけど、今は自分の中で設けているハードルがめちゃくちゃ高くなった分、それを超えるために死ぬ気でやらなきゃいけない。また昼夜二公演だったんで、今の僕のライブのスタイルで2ステージを一日にやるのは無謀というか、一回一回すり減らしながらやっているところもあるので、体力面や喉の部分も心配はしていました。でも、そういうヒリヒリ感も含めてCITTA’に帰ってきたなという感覚があったし、今の集大成というか、自分たちの最大限を見せられた「“BACK TO AGF” TOUR 2025」を象徴する公演にできたんじゃないかと思います。
――アリーナクラスの演出とライブハウスの演出が融合している印象を受けました。
Novel Core 「シンプル」「ストイック」がツアー全体のテーマであり、いわゆるライブハウス出身のバンド・アーティストとは違った出自が自分にある訳で、その血筋もミックスした上で表現したいというのもテーマの一つとしてありました。ストイックなバンド公演であり、フィジカルが第一。だけど、そこにNovel Coreである理由が乗っかってくる必要があるとも思っていて、演出家としての自分をどう活かすかを意識しました。CITTA’での初ライブはスーパー足し算みたいな内容だったので、当時の雰囲気を感じてもらいたいという思いもあって、あえて今回も特効演出を追加しました。でも将来的には、もっとストイックな形にしていきたいし、そうできるなと今回の川崎CITTA’で確信しました。特効がなくてもみんなついてくるし、僕とバンドメンバーとOUTERの絵だけで十分持つということが自分の中でも確認できました。
――ラストに披露した新曲「DiRTY NASTY」についてはどうですか?
Novel Core リリースはだいぶ先になると思うんですが、あえて今回の公演でやらせてもらったのには理由があって。EP『BABiES AGAiN』のリリースも控えて、「Novel Coreはミクスチャーサウンドを自分の主軸として、音楽活動しているアーティストなんだ」という名刺ができるタイミングだったので、こんな次弾が控えているというのをみんなに見せておきたかったんです。今までで一番ハードな曲調で、そこに自分のラップのプレゼンスが混ざっているので、今の段階で大きな音で聴いてもらったほうがいいなと思って、流させてもらいました。
――先を見据えたメッセージを感じました。
Novel Core ツアー名に“BACK TO AGF” というタイトルを大々的に掲げて、原点回帰でツアーを回るということは、純粋に原点をみんなに見てもらう、思い出してもらうだけじゃなくて、僕たちが次はどこに向かっていくのか、これから僕たちが何をやらなきゃいけないのかを明確に示せないと駄目だなと分かった上で走っていたんです。そのためにも「DiRTY NASTY」や、そのほかの新曲を聴いてもらって、新しいライブハウスの遊び方をみんなに知ってもらって、たとえエラーが起きたとしても、それも含めてみんなで勉強して成長していくということを、今回のツアーでやりたかったんです。そこは意義深くやれたのかなと思います。
――次のアリーナ公演を目指す上で、何かテーマはあるのでしょうか。
Novel Core 去年の日本武道館、年頭のKアリーナ横浜と、次にやるであろうアリーナのライブは僕の中で明確に違っていて、もっとミックスしないといけないと考えています。あまり“層”という言葉は好きじゃないので使いたくないんですが、あえて分かりやすくするために使わせてもらうと、お客さんの層がもっと重なって、多重になって、混ざって、分厚くて、という状況で次のアリーナをやらなきゃいけない。たくさんのお客さんが入るとか、いつも見に来られない子たちに見てもらうのが大前提にありつつ、その上で大きな会場でやる意義は、フロアを区切って、いろんな楽しみ方をしたい人たちが共存できる環境を、ライブハウス以上に作りやすいからなんです。会場内にスタンディングのエリアも作るし、シーティングのエリアも作るし、スタンディングの中でも激しいモッシュが起きるエリアもあれば、そういうのが起きないエリアも作るし、子どもたちが見れるエリアも作りたい。そういうことを実現させるために次のアリーナがある。今までとは全く違った目指し方になると思います。
——異なる楽しみ方をする観客同士の共存ですね。
Novel Core 僕自身、いろんな遊び方を知っているし、様々なカルチャーが自分のDNAに入っています。たとえばライブハウスでの激しい遊び方のカルチャーも血の中に入っているし、アイドル文化のようにペンライトを持ったり、座席で自分たちの立ち位置からステージを見るような楽しみ方も通ってきています。両方知っている上で、この二つが共存できる場所を作りたいというのが一番の目標なんです。ジャンプしたりモッシュしたりダイブしたりと暴れている人たちが特別かっこいいとも思わないし、静かに見ている人たちがダサいという訳でもない。それぞれの楽しみ方、それぞれのかっこよさがあるんです。違う者同士が、お互いの違うところを見つけて、憎しみ合うのではなく、似ているところや共通項を見つけて称え合うような雰囲気を作るために、全てがあるんだということを大前提として大事にしたいと思っています。