芸能の仕事が無理でも新卒として就職できるだろうという感覚があった

――ここからは高橋さんのキャリアについてお聞きします。芸能界に入ったきっかけは?

高橋 母親が僕の知らないところでオーディションに応募していました。もともと小学校1~3年生くらいのときに、お昼の番組で『Ya-Ya-yah』(TX)っていうのがあって。その番組のオーディションに確か母親か姉貴が応募していて。その番組に出演したのがきっかけですね。その後、高校生のときに事務所に入りました。

――はじめのころは芸能の世界でやってみたいという思いがあったんですか?

高橋 当時はなかったんですけど、人前に出ることは好きだったので、たぶんそういう姿を見て母親も応募していたのかもしれないです。なので、仕事っていう意識よりは課外授業みたいな感覚でやらせてもらっていました。それが大学入学後も続いて、そのまま大学も卒業して。気づいたら、これで食っていかなきゃいけないなと。

――どの段階で、この世界でやっていこうと決意したんですか?

高橋 本腰を入れたのは大学を卒業してから。当時、卒業3年目までは新卒扱いを受けるって聞いていたので、もし芸能の仕事が無理でも新卒として会社に就職できるだろう、みたいな感覚がありました。でも、気づいたら4年目を迎えて、「やばいな」と思って。そこからですかね。

――俳優として本格的に活動を始めた経緯は?

高橋 10代のころ、俳優として『Rの法則』(NHK)というトークバラエティーに出演していました。番組上、20歳になったら卒業しなきゃいけないので、その終わりが見えたときに、次のステップとして舞台のオーディションを受けるようになりました。そうするうちに『ウルトラマンX』(TX)のオーディションに合格したので本格的に、という感じです。

――俳優として、影響や刺激を受けた方はいますか?

高橋 小栗旬さんです。『花より男子』(TBS)の花沢類や、『クローズZERO』の滝谷源治、『銀魂』の坂田銀時まで、いろいろな役を演じられて、そのすべてが生き生きとしているのは素敵だなって思います。実は先日、ミュージカル『のだめカンタービレ』シンフォニックコンサート!のステージで、竹中直人さんとご一緒させてもらう機会があって。制作発表のときに竹中さんが「小栗に似ているな」って言ってくださって、うれしい気持ちになりました。

――刺激を受けたからこそ、その言葉は自信にも繋がりますね。

高橋 小栗さんは役者の働き方に関しても素晴らしい取り組みをされています。日本はなかなか稽古にお金が出なかったり、「やりがい」や「好き」っていう気持ちだけじゃ続けられない部分があったりする。そういう現状を変えていこうと、小栗さんをはじめ第一線で走っている先輩方がケアしてくださっています。そういう、お芝居以外の部分にも惹かれます。

――影響を受けた方を挙げていただきましたが、ご自身が出演して、手応えを感じた作品は?

高橋 正直に言うと、僕らは舞台が多いので、お金を払って観てもらっている以上、すべての作品を代表作にしなきゃなっていう思いはあるんですけど……。ここが難しい問題で、こちらが作り込んで「どうだ!」って意気揚々と出たときが意外とハマらなかったり、逆に瞬発力だけで突き抜けたような作品が「よかったよ!」と絶賛されることもある。その中で言うと、僕は歌が得意じゃなかったんですけど、昨年、初めて東宝のミュージカル『GIRLFRIEND』に出演する機会をもらいました。最初は「歌えない!」って、何回も逃げ出したかったし、正直なところ辞めたかった。自分は基本的にスーパー明るくて、落ち込むこともほとんどないんですけど、その時期だけはマネージャーにも強く当たっちゃったこともあって……。役者人生の中で一番ストレスがかかっている状態。それでもなんとか本番をやりきることができて、結果的にそこからのご縁で、東宝の新しいミュージカルにも呼んでいただきました。あの現場から逃げ出していたら今の自分もないだろうし、手応えとは違うけれど、向き合い続けてよかったと思います