足りないところと向き合って生きることが大切

――ミュージカル『ジョン&ジェン』に登場するのは、ジョンとジェンの二人のみ。ジョン役は森崎さんと田代万里生さん、ジェン役は新妻聖子さんと濱田めぐみさんのWキャストで、4通りの組み合わせで公演します。オファーがあったときのお気持ちはいかがでしたか。

森崎ウィン(以下、森崎) すごく面白そうだなと思いました。ありがたいことに最近は大掛かりなミュージカルに出させていただく機会が多かったんですが、『ジョン&ジェン』はストレートプレイに近くて、しかもキャストは二人だけで作り上げるので、力量が試されるし、大きく成長できるチャンスだなと。蓋を開けてみたら、稽古が想像以上に難しくて、人はそういうのを乗り越えて強くなっていくんだなって思いました(笑)。

――初めて脚本を読んだときの感想をお聞かせください。

森崎 家族のお話で、人間は完璧じゃないし、足りないところがあって当たり前、それぞれが足りないところと向き合って生きることが大切だということを教えてくれて。ドーンと落ち込む瞬間もありますが、ふと勇気をもらえる瞬間もある脚本だなと思いました。

――一幕が姉(ジェン)と弟(ジョン)の話で、二幕が母(ジェン)と息子(ジョン)の話。家族だけど、なかなか分かり合えず、すれ違いを繰り返していきますが、共感する部分はありましたか。

森崎 めちゃめちゃあります。特に二幕のジョンには、「分かるな」という部分がたくさんあって。愛の形っていろいろありますけど、母親の行き過ぎた愛を受け止め切れないジョンに共感しました。

――一幕のジョンは青年、二幕のジョンはまだ子どもですが、その辺の演じ分けはどう考えていますか。

森崎 二幕のジョンはこの年齢だから、ガラッと声を変えて、子供っぽく喋るという役作りもありますが、しっかりと脚本が二人のジョンを書き分けているので、そこに頼るのが正解なのかなと。どう考えても大人が言わないようなセリフが書かれていますから。だから身体的な見え方などを前面に打ち出すというよりも、リアルな心情で話すだけでも伝わるのかなと思いながらも、どこまで振り切ったら良いのか試行錯誤しながら稽古しています。ミュージカルなので、歌も含めてキャラクターとして構築していくところにやりがいを感じます。

――脚本も手掛けているアンドリュー・リッパ氏の音楽はどんな印象ですか。

森崎 重めのストーリーですけど、音楽は逆のところに位置すると言いますか。もちろん音階などで心情を提示しつつも、悲しい感情の曲ばかりではなくて、二人の会話を聴いているような軽やかさもあります。音楽的にはクラシックの要素も入ったポップスで、キーや拍子などはクラシックの影響が大きいなと感じます。