CGチームに自分のスペック以上の殺陣に仕上げていただいた

――劇場版『牙狼<GARO> TAIGA』で、ヒーロー作品としては自身初の悪役を演じましたが、オファーがあったときのお気持ちはいかがでしたか。

瀬戸利樹(以下、瀬戸) 正直、すぐに「やります」とは言えなかったですね。歴史のある「牙狼<GARO>」シリーズで悪役、しかも魔獣ホラー・蛇道という重要な立ち位置。僕の中では、もうちょっと上の世代の、貫禄のある方が演じるイメージを抱いたんです。それに殺陣のシーンも多くて、ほとんど殺陣の経験がない自分に蛇道を演じることができるか不安ですとお伝えしました。

――一度は迷われたんですね。

瀬戸 そしたら雨宮慶太監督が時間を取ってくださって、直接お会いしました。そのときに懸念点をお話したんですが、「どうしても瀬戸くんがいい」と言ってくださって。そこまで求めていただけるならと思い、お受けしました。

――なぜ雨宮監督は瀬戸さんにオファーしたと思いますか。

瀬戸 おそらくですが、雨宮監督はご自身で絵を描かれるので、自分で言うのもなんですが、ビジュアル的に僕が蛇道のイメージに合っていたんだと思います。

――出演するにあたって、過去の「牙狼<GARO>」シリーズは観ましたか?

瀬戸 いくつか観ましたが、確固たる「牙狼<GARO>」の世界観はあるなと思いつつ、「牙狼<GARO>」だからこうしようと考える必要はないと感じました。時代ごとに描き方も違いますし、そこまで過去作を意識せず、自分が演じる蛇道の空気感を作ればいいなと思ったんです。世界観から外れすぎるのは良くないですが、自分だから出せる“今”の悪役を作ろうと思って臨みました。

――十分、貫禄が伝わってきました。

瀬戸 そこは蛇道のキャラクターに助けられた部分が大きくて、自分自身の貫禄はまだまだだなと思います。でも最終的には、こういう機会をいただけて本当によかったと思います。

――ふんだんに用意された殺陣のシーンも、様々なバリエーションがあって、スピーディーで迫力も凄まじかったです。

瀬戸 最初のお話では、あそこまで殺陣があるとは聞いていなかったです(笑)。

――練習期間はどのくらいあったんですか。

瀬戸 意外と短くて、1ヶ月前から週1回のペースで殺陣の練習を始めて、最後の週は2回やりましたが、トータルで4回くらいしかできなかったんです。以前の「牙狼<GARO>」シリーズでは、もう少し練習期間があったそうで、アクション監督も「大丈夫かな……」と言っていました。主人公の冴島大河を演じた北田祥一郎くんとの合同練習も1日だけだったので、その日に二人でしっかり合わせて、本番に臨みました。

――そんなにタイトな練習期間とは思えないほど息の合った殺陣でしたが、蛇道の動きは独特ですよね。

瀬戸 王道のスタイルではないから、なおさら難しかったですね。蛇っぽさを意識して型を作ってくださったのですが、そういう崩した型って基礎ができてからやるものだと思うんです。経験の乏しい僕は、見よう見まねで必死にやるしかなかったです。

――二人で合わせたのが一日とは思えないほど、北田さんとの呼吸もぴったりでした。

瀬戸 一緒に練習した様子を撮影した映像を見返して、イメージを膨らませて、本番前にも北田くんと殺陣の確認をしたのですが、個人的には慣れすぎるのも良くないと思うんです。もちろん危険を回避するためにも、時間をかけてやったほうがいいとは思いますが、あまり合わせ過ぎてしまうと型にはまってしまうんですよね。本番では1,2回でOKが出ましたが、そこは北田くんとの相性が良かったんじゃないかなと思います。

――殺陣のシーンに後からCGが加わるので、撮影中に仕上がりをイメージするのも難しかったのではないでしょうか。

瀬戸 難しかったですね。アクションチームから、「こういうエフェクトがつくよ」と簡単な説明はあったのですが、想像を巡らせて演じるしかなかったです。でも仕上がりを観たら、CGチームには本当に助けてもらって、自分のスペック以上のものに仕上げていただけて驚きました。