当初から、大衆的になることに重きを置きたくなかった

――制作において、最初からスタッフさんなどにこうしてほしいと言われることはなかったんですか。

Novel Core 全くなかったです。A&Rチームの越智さんが初期からずっと一緒にやってくれていて、越智さんはSKY-HIの制作も、BMSG設立のはるか前から携わっていましたし、THE MAD CAPSULE MARKETS やm-floの制作にも関わっていたので、僕のルーツの混ざり方を理解してくれていて、信頼を置ける方です。時折、僕から相談や意見を仰ぐことはありますが、「こうするべき」という答えではなくて、あくまで僕が今何をやりたいかを優先してくれています。それだけ自由にやらせてもらえる環境だからこそ迷うこともあったんですが、そういう葛藤も大事な時間です。

――ヒップホップならヒップホップ、ロックならロックとジャンルを明確にしたほうが売りやすい側面もあると思うのですが、そこを自由にさせてもらえる環境は素晴らしいですね。

Novel Core ありがたいです。僕は当初から、大衆的になることに重きを置きたくないと話していました。自分の作りたい音楽を本気で作って、それが正当に評価される状況を作るところまで行きたいという考え方で。日本にあまり前例がなかった分、時間はかかるけど、それを面白がってくれて「とことんやろうよ」と初期から長期的な視点で言ってくれたのは心強かったです。

――タイアップの仕事はどういうスタンスなのでしょうか。

Novel Core タイアップはアニメやドラマなど、それぞれの作品の世界観と自分の共通項を探して、自分だったらこう歌うかな、こう映すかなという作業に近いんです。全く自分にないものを作るというよりは、僕の中にある作品へのエナジーを探すというか。たとえば『キングダム』第5シリーズのエンディングテーマ「RULERS」も、常日頃から思っている正義の曖昧さに対する気持ちを作品の世界観と混ぜて歌わせてもらいました。アニメの主題歌じゃなくても、普段から自分の曲として歌える内容になったし、自己分析する時間にもなりました。

――これまでのタイアップは、どれもCoreさんの音楽性を上手く活かしている曲ばかりですが、タイアップなどによって、自分の音楽性がブレることはないんですか。

Novel Core タイアップやエントリー的な公募などのお話をいただいた時は、どういう目線でチームとして向き合うのか定期的に話をしていて、スタッフさんが決まる前段階から細かく確認してくれています。僕の今のテンションやルーツが、その作品やテーマに対してやりづらくないか、自分を変えないと馴染みづらいものじゃないかというストレスの有無をチェックしてくれるんです。オファーがない時でも、日常的に「こういう漫画とこういう漫画があったら、どっちが好きですか?」みたいな会話もしているので、チームの中で共通言語が多いんです。僕が「かっこいい」と言った時に、みんながイメージする「かっこいい」が明確にあって、そこから外れないかを僕以上にスタッフさんが分かってくれています。だからブレることはないですね。

――スタッフさんとの意思疎通が上手くいっている理由は何でしょうか。

Novel Core 純粋にメンバーに恵まれているというのが一番です。運命的に集まってくださったスタッフさん一人ひとりが、持っているルーツや得意な分野は違うけど、僕にない要素、僕が必要としている要素を一つずつ埋めてくれているんです。凸と凹がガチャと合って、歯車が回っているので、誰一人として代わりが利く人がいないチームで、絶大な信頼を各セクションに置けている。この分野に関してはこの人たちのほうがプロ、でもこの部分は僕がプロ、僕のファンのことに関しても、僕が一番プロという自負があって、僕以上に僕のファンのことを理解している、理解しようとしている人はいない、みたいな。ちゃんと線引きができている。任せるところはとことん任せるし、僕が責任を持つべきところはめちゃくちゃ責任を持って担当する。それが許される空気感があって、お互いに背中を任せ合える純粋な仲の良さがあります。

――仕事以外でも交流があるんですか。

Novel Core めちゃくちゃあります。レコーディングが早めに終わったら「ちょっと飲みに行きますか」みたいな。僕はお酒を飲まないですけど、飲みに行くのは好きなんです(笑)。友達と遊ぶみたいな感覚で集まったり、ご飯を食べたり、一緒に映像を観たりすることが多くて。フェスにプライベートで行くこともありますし、そういうのを日常的にみんなとやっているのが大きいと思います。

――スタッフさんとのチーム感も、日髙さんがトップにいることの影響は大きいですか。

Novel Core 日髙さんはアーティストへのリスペクトが強くて、アーティシズムを殺さない、才能を殺さないというのが会社の設立スローガンであり、日髙さんの行動原理です。所属アーティストへのリスペクトが強い日髙さんがいるからこそ、会社のボスからリスペクトされているからこそ、僕たちも自分たちを支えてくれるスタッフさんをリスペクトするのが当たり前だよねという感覚になるんです。

――日髙さんとは定期的に話す機会があるんですか。

Novel Core みんなで集まって喋る機会もありますし、特にShota (Aile The Shota)と僕は日髙さんと直接話すことが多いです。自分たちの目線から見て、会社の中で気になることや「ここ大丈夫ですか?」ということがあったらポンと言えるし、日髙さんから意見を求められたり、「俺はこう思っているんだけど、お前はどう思う」とお互いに相談し合える関係なので、そういう会話は日常的に多いですね。

――日髙さんはアーティストでありながらビジネスのセンスもあるというのがすごいですよね。

Novel Core 本当にそうです。人一倍勉強されていると思います。SKY-HIの「タイトル未定」に“必死に学んだ経営と戦い方”というリリックがありますが、日髙さんはBMSG創設前からたくさん本を読んで勉強していたし、「THE FIRST」開始後の一番忙しいオーディション期間中で世間からのリアクションも大きくて、会社の根本を整えなきゃいけない、事故ったら終わっちゃうという1年目の忙しさの中でも、ずっと勉強していました。いろんな経営者の方と会って話して意見を仰いだり、あちこち飛び込み営業にも行ったりと、そもそものバイタリティがすごいと思います。