誰しも親族や自分の故郷を思い出す瞬間がある
――初めて映画『じっちゃ!』の脚本を読んだ時の感想からお聞かせください。
小笠原海(以下、小笠原) 僕の祖父母が青森出身ですし、おじいちゃんと孫の話ということで、縁深いなと感じながら読んだのですが、とても温かくて、観た人の心にしっかりと残る作品になるだろうなと思いました。

――海さんが演じた、藤⽥勝吾にはどんなイメージを抱きましたか。
小笠原 津⽥寛治さん演じる北⾒英明のセリフにもありますが、真っすぐで嘘がつけない。仕事に対して実直に向き合って、自分のやりたいことにも、ひたむきに進んでいける人なのかなと感じました。
――共感する部分はありましたか。
小笠原 僕は人生の半分以上を今の事務所でお仕事させてもらっている中で、自分のやりたいことや好きなものと真っすぐに、ひたすら向き合ってきました。僕はポケモン、ファッション、K-POPなど、一度好きになったものがずっと好きなんですよ。ポケモンに関しては25年以上、好きであり続けていますからね。
――飽きることがないんですね。
小笠原 好きすぎて、深まっていく感覚です。同じ時期に好きになった友達が、一度離れる時期が来ても、僕だけはずっと好きなんです。特にポケモンは中学生くらいで一度離れるタイミングがあるじゃないですか。でも僕はずっと好きで、それがお仕事につながることもあるし、自分の強みになる。そこは大事な部分ですし、自分の中でも誇りに思っています。好きなものに対する思いや、自分の信じるものに対するまっすぐな向き合い方は、勝吾と近いなと感じました。
――つがる市でのロケはいかがでしたか。
小笠原 青森は超特急のライブやイベントで何度か行かせていただいたことはあるんですが、今回のロケは主に山間部で、畑のある場所に行くのは初めてでした。地元の方ともお話させてもらったのですが、のどかな場所で、人情味にあふれるというか、人の温かみがあって、僕たちを迎え入れてくれているのを感じました。祖父母は長く宮城に住んでいるので、プライベートで青森に行くことはなかったのですが、東北自体が好きな地域なので、つがる市にも親近感を覚えました。
――現地にはどれくらい滞在されたんですか。
小笠原 1週間弱ぐらいです。時期は7月で、東京よりは涼しかったですけど、役柄的にスーツを着ていたので暑かったです。でもジメジメというよりは、カラッとした暑さで、気持ち良かったですね。

――地元の空気感がお芝居に影響したところはありましたか。
小笠原 勝吾も関東からつがる市に来て、その土地の人たちと触れ合う中で、自分の仕事への理解や、つがる市という土地と地元の人たちに対する愛情が深まっていきます。そういう部分では、実際に過ごしてみて、人の温かさに触れて、リンクできるところがありました。
――役作りはいかがでしたか。
小笠原 千村利光監督とは5、6年前にドラマでご一緒させていただいたことがあって、それ以来の再会だったのですが、よく僕のことを分かってくれているんです。脚本も千村監督が書いていらっしゃるのですが、勝吾は僕へのあて書きに近い形だったそうで、だからこそ感情移入しやすかったですし、役作りもしやすかったです。
――改めて千村監督の演出にどんな印象を抱きましたか。
小笠原 千村監督は温厚でユーモアがあって、かわいらしさもある方。「僕はこう思っているんです」と意見を伝えると、「じゃあ、それも取り入れてやってみようか」とすごく柔軟で、自由にやらせてくれるんです。一方で、千村監督の中にぶれない部分がしっかりとあるので、僕が違う解釈をしていたら、「ここはこうだから」と優しく導いてくれるんです。
――主演の中村静香さんはどんな方でしたか。
小笠原 優しいお人柄で、僕も含めてキャストの方々と積極的にコミュニケーションを取られていて、温かい印象があります。後から現場に入った僕が緊張せずにいられたのは、中村さんの存在が大きかったです。
――W主演の小野武彦さんとも共演シーンがありました。
小笠原 共演シーンは少なかったんですが、短い撮影時間で、いろいろなお話をさせてもらいました。小野さんのほうから、僕の普段のお仕事のことなどを聞いていただいて、興味を持ってくださっているのがうれしかったです。本当のおじいちゃんみたいな優しい雰囲気でした。
――東京・神楽坂のスイーツ店でのシーンもありました。
小笠原 普段、神楽坂に行く機会がないので、街の雰囲気が新鮮でした。あのスイーツ店も実際に営業されているお店で、時間があったら、ゆっくり食べたかったです。お店でいただいたメロンが本当に美味しくて衝撃を受けました。
――完成した映画を観た感想を教えてください。
小笠原 僕自身、気づいたら祖父と自分の関係性に置き換えていたのですが、この映画を観ると誰しも親族や自分の故郷を思い出す瞬間があると思います。ふと親や祖父母に連絡してみようかなと思える、温かい作品だなと思いました。僕は祖父母のいる宮城に行きたくなりました。
