千秋楽まで、常に探求して作品を深掘りしていきたい
――ターニングポイントとなった舞台をお聞かせください。
小松 先ほどお話した『ロミオとジュリエット』の初日のカーテンコールの景色が鮮明に残っていて、「また、この景色を見たい」と思いました。それって一人では絶対に無理なことで、お客様があって成り立っているもの。お客様に何を届けるかを、カンパニー一丸となって作り上げていく時間を、もっともっと体感したいという思いが芽生えました。その経験がなかったら、もしかしたら舞台を中心に活動する可能性は低かったかもしれません。

――蜷川さんの作品で学んだことは?
小松 初舞台ではありましたが、序盤の一言しかないシーンで2時間も稽古してもらったんです。しかもメインキャストの方々が待っている中で、セットも衣装も全部ある状態、稽古場も本番と同じ彩の国さいたま芸術劇場。度胸も鍛えられましたし、お芝居って簡単じゃないなと痛感しました。その時に蜷川さんがおっしゃっていたのは、「自分が自分であるためにはどうしたらいいか。その役を演じるのは誰でもいいわけじゃない。その役をやる上で、自分である必要性をしっかり考えてやりなさい」ということでした。だから今回も、自分にしかできないレームを演じたいと思っています。
小西 僕は最近で言うと、ミュージカル『刀剣乱舞』です。2021年の「東京心覚」で初めて出させていただいて、長く続いてきた作品に出るということで覚悟を持って臨みました。稽古は大変でしたが、お芝居に打ち込めることが楽しいと改めて思いましたし、お芝居だけじゃなくて殺陣もあって、さらに歌って踊って、太鼓もやって。まさに総合芸術というに相応しいエンターテイメントで、自分の蓄えになったという新しい感覚がありました。

――最後に『わが友ヒットラー』の意気込みをお聞かせください。
小松 劇場の空気感がどういうものになるのか、お客様の反応がすごく楽しみです。というのもセットもシンプルで、4人での究極の会話劇なので、いつも以上に劇場の空気感を感じられると思います。ピリッと緊張感のある空気感になるのかな、とか。その中で自分たちがどれだけ集中して、どれだけこの世界の中を生きることができるのか、どんな景色が待っているんだろうというのが楽しみです。
小西 政治の話ではありますが、ものすごく生々しい人間ドラマが描かれています。台本を読めば読むほど新しい発見があって、まだまだ深掘りできていないことがたくさんあって。稽古もそうですが、本番をやっていく中でも千秋楽まで、常に探求して作品を深掘りしていきたいですし、それが役者としてのやりがいでもあるので、すごく楽しみです。
Information
『わが友ヒットラー』
日時:2025年12月11日(木)~12月21日(日)
会場:新国立劇場 小劇場
12月11日(木)18時半/12月13日(土)18時半☆/12月14日(日)12時
12月16日(火)18時半☆/12月18日(木)13時☆/12月20日(土)12時
12月21日(日)12時
☆出演者全員によるアフタートークあり
アドルフ・ヒットラー:谷佳樹
エルンスト・レーム:小松準弥
グレゴール・シュトラッサー:小西成弥
グスタフ・クルップ:森田順平
作:三島由紀夫 演出:松森望宏
美術:平山正太郎 照明:小原ももこ 音響: 青木タクヘイ 音楽:西川裕一
衣裳:藤崎コウイチ ヘアメイク:ナリタミサト 舞台監督:筒井昭善 演出助手:石川大輔
制作:間宮春華 製作:児玉奈緒子 票券:サンライズプロモーション 著作権管理:酒井著作権事務所
主催・企画・製作 一般社団法人CEDAR/株式会社MAパブリッシング
1934年にナチス党内で発生した「長いナイフの夜」を題材に、権力闘争と友情の崩壊を描描く。主人公アドルフ・ヒットラーは、突撃隊(SA)の指導者エルンスト・レームと旧友でありながら、党内での権力維持のために彼を粛清しなければならない立場に追い込まれる。レームの革命的な改革姿勢がヒットラーの政治的立場を脅かし、最終的に彼は裏切られ、命を落とす。独裁者の孤独、政治における友情の脆さ、そして革命の必然的な崩壊を鋭く描き出していく。
PHOTOGRAPHER:HIROKAZU NISHIMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:工藤有莉
