みんながやっていることを同じようにやっても、突出した何かがないと届かない

――五味さんは自主レーベルを始める際に、通販のやり方などはイアン・マッケイに教わったと発言されています。日本でお手本になる存在はいましたか。

五味 「ないものは自分で作るんだ」というパンク的な精神は海外国内問わず共通していて、PIZZA OF DEATH、ZK Records、less than TV、Snuffy Smileなど、DIY精神のインディーレーベルは当時もいっぱいあったと思うんですが、モロに影響を受けた人たちは国内にいなかったです。ライブでいろんなところに行ったり、オンラインのサイトを作ってみたり、レコードショップを作って自分自身でお店に立ったり。自分たちなりのやり方でやりながら、いまだに微調整を繰り返しています。これが完成形というのはないですね。

MINORxU 僕らの世代だと、DIYでやるというのは日本のインディーシーンにもいっぱいいたんですけど、アメリカのやり方を踏襲するのが一般的だったんですよね。そうすると日本と事情が違うから、だいたい失敗するんです。そこがLOSTAGEは柔軟で、もちろん雛形はあったんでしょうけど、それを自分たちのやれる範囲のやり方に変えて作っていくのが上手いんです。

五味 応用してやるというかね。日本は島国なので、アメリカの規模感と同じ考え方では続かないんです。人口も、流行っている音楽の世代間の違いも、外国とは全く違う。ある意味ガラパゴス化していて、「まだCDが売れているんだ」とよく揶揄されますけど、それは自分たちの視点から見たら大きなメリットなんです。それに大きい国ではないから、物理的な距離も近くて、実際に行って届けることが可能なんですよね。

――CDの販売戦略について、劇中でも語られていますが、何十万枚と売るわけではなく、自分たちで届けられる数を現実的に考えるということは、レーベルを始めた当初から念頭にあったのでしょうか。

五味 ありました。レーベルを立ち上げて、実際にCDは1枚幾らで作れるのかというお金の計算をし始めて、数字でも音楽の動きを見るようになって。こうやったら、これくらいの利益が出せて、生活していけるなというのが具体的になってくる。仕事として、自分たちが作ったものを売るための数字は意識するようになりました。他のバンドは漠然と100万枚とかを目指してやるのがセオリーだったんですけど、そこまでCDが売れない世の中になっている。でもちゃんと計算したら、5000枚でもなんとかなるというのが分かったんです。

――47都道府県ツアーは計5200⼈超の動員、アルバム販売枚数は4300枚超という結果を残しました。

五味 『PILGRIM』で47都道府県ツアーを回った時に考えたのは、5000枚を売ろうと思ったら、各都道府県で100枚ずつ売ればいい。100枚ずつ売ろうと思ったら、200人キャパのライブハウスを回って、半分くらいチケットが売れて、CDも欲しいと思ってもらえればいい。そうすればツアーが終わった時に、5000枚近く売れるじゃないかと。そのためにツアーのライブ会場でしか買えない限定販売にして、それを持って回って直接届けるというやり方をやれば、5000枚という数字が見えてくるなという感覚でツアーを行ったんです。まだ僕らはCDが売れているほうとはいえ、ちょっとずつ数字は落ちているのが現実ですからね。そこに抗おうと思ったら、そういうやり方でやったほうがいいのかなという気持ちは今もあります。

――YouTubeやSNSなどを積極的に使うという方法は考えましたか。

五味 上手い使い方はあると思うんですけど、みんながやっていることを同じようにやっても、大きな会社がお金をかけてやるとか、誰も思いつかないようなアイディアを持った人がやるとか、突出した何かがないと届かないと思うんです。自分がそれをやれるかと言われたら難しい。それよりは活動のフィールド自体をずらした方が、みんなのところに届きやすいんじゃないかと。見る人によっては逆張りに見えるかもしれないですけど、そういうつもりはなくて、みんながやっていることと少しずらすことで届きやすくなるんじゃないかという感覚ですね。

――レコードショップを始めたのはいつからですか。

五味 2012年です。レーベル立ち上げと並行してお店を始めていました。僕も30歳前後で子どもができて、それまでアルバイトをやったりやらなかったりを、ちゃんと安定した仕事として自分の軸になるものがあったほうがいいと思って、レーベルとは別でお店を始めたんです。仕事としてやれることを増やしておきたかったんですよね。その時にデザインもやり始めたのですが、いろいろな仕事を並走させることは今も続いていて、何かがぽしゃっても、なんとかなるようにしているんです。

――レコードショップの売り上げはいかがですか。

五味 店頭でCDを手に取る人は減っていますけど、奈良は観光地なので、海外の方がレコードを見に来るんです。お客さんの半分以上は海外の方ですね。地元のおじいちゃん、おばあちゃんがいらなくなったレコードを売りに来て、それを僕が査定して値段をつけたら、海外から来た人が買っていくみたいな。お店では、自分が売ったり買ったりしているバンドのフィールドとまた違う音楽の価値観やサイクルが見えるので、それは自分にとっての幅になりますし、勉強にもなります。