LOSTAGEの見ている景色が桃源郷のように思えた
――47都道府県ツアーで、集客に苦戦した場所もあったのでしょうか。
五味 もちろん厳しかったところもあったんですけど、たとえば100人キャパのライブハウスに10人しか来なかったとしても、僕たちの音楽に対する思い入れが薄いのかと言われたら逆じゃないですか。10人しかいないところに、よくたどり着いたなと思うし、その熱量に対してちゃんと答えないといけない。次に同じライブハウスに来た時、11人になっていたらいいなと。だから苦戦したというよりは、10人に対してやれることを考え直すきっかけになるし、そこは音楽を数で見たらダメな部分だと思うんです。もちろん普段から数字のことを考えるのも大事なんですけど、そうじゃないものを忘れると本末転倒になる。数字で見えないものを見るために各地を回っているし、数字だけにとらわれないスタンスは自分が守ろうと思っているものです。
――ツアーを通して収支がプラスになればいいわけですからね。
五味 そうですね。ここに行ったら損をするからやめようとか、そういう感覚ではやっていないです。結果的に、どの場所も行ってよかったなという感想しかないです。
――話は変わりますが、LOSTAGEの楽曲はサブスクに入っていないですよね。
五味 便利だというのは分かっていて、自分もサブスクで音楽を聴くことはあります。でも、その中に自分たちの音楽があるということに違和感があるというか、納得いかない部分もある。一回再生されて幾らみたいな対価を得ることの数字が不透明で、手放しで信用できないですし、何より届けている実感が湧かないんですよね。CDを作って発送するとか、ライブ会場に持っていくとか、自分のお店の店頭に並べるみたいなことでしか得られないコミュニケーションがあると思うんです。サブスクに入ったからといって、それがなくなるわけじゃないと思うんですけど、まだ直接的なコミュニケーションに希望を見出しているんです。ただ知らない間に、レコード会社に所属していた頃の楽曲がサブスクに入っていたことがあって、「僕らはこういうスタンスでやっているので取り下げてもらえないですか」という交渉をしたら、その時の担当の人が、「わかりました」とすぐに取り下げてくれました。
――ただ新しい層や若い世代に届けるにはサブスクの役割は大きいですよね。
五味 それは悩んでいるところでもあって。サブスクきっかけじゃないと届かない層は絶対にあるし、TikTokみたいに若い世代が使っているツールも使ったほうがいいのかどうかという葛藤もあります。ただ、今回みたいに映画館で映画を届ける、映画が好きな人やLOSTAGEの物語に興味のある人に音楽を届けるというのも、新しい表現の一つだと思うんです。行ったことのない場所に行くとか、やったことのないことにチャレンジする気持ちは持っていたいなと。それが今回は映画という形でしたが、他にもやり方はあると思うので、今後も模索していきたいですね。
――MINORxU 監督は10数年ぶりに撮影を再開した時、切り口はどう考えましたか。
MINORxU 2011年と比べると、ある程度はLOSTAGEの活動も固まってきて、彼らが思う理想のやり方が完成に近づいているイメージがあったんです。だから何かが起こるタイプのドキュメントじゃないなと思って撮り始めました。実際、2024年に関しては、引きがあるような出来事が起こったわけじゃない。この映画は今LOSTAGEがやっている活動が、彼らなりの幸せであり、成功であるというふうに見えたらいいなと思って。その視点が切り口としてありました。

――ここでピリオドを打つわけではなく、これからもバンドは続きますからね。
MINORxU みんなが楽しそうに生活していて、充実していて、お店に行けば人が集まっていて。彼らの見ている景色が、僕には桃源郷のように思えたんですよね。
五味 良いところだけ見れば、そうかもしれないですが(笑)。光が当たるところには影もありますし、実際は泥臭いことも多いですけどね。
MINORxU もちろん大変なこともあるだろうし、ここに至るまでの積み重ねも映画では描いているつもりですが、「こういう価値観もありますよ」というのを提示したいという思いは強かったですね。
五味 バンドだけじゃなく、家族、街のコミュニティなども巻き込んでいるので、こういうやり方もありますよ、こういう正解もありますよ、だって僕らはこうしてやってきているからというのが映画から伝わるとうれしいですね。
MINORxU LOSTAGEがいいなと思うのは、仕方なく選んだ道ではなく、自分たちで選んだ道なんですよね。その先に今の形がある。みんながイメージするバンドとしての成功からそれていった時に、仕方なく仕事を始めたり、必要に迫られて何かを失っていったりするイメージがあるんですが、兄貴たちはちゃんと自分たちで選び取った末に、いわゆる王道とは違う場所で、自分たちなりの幸せをつかみ取っているなと思えたんです。だから悲壮感がないんですよね。
――妥協した選択ではないですからね。
MINORxU ただはみ出したんじゃなくて、選んではみ出した方向に行った結果、彼らなりの成功があったというイメージです。実際、この映画を観て、爆発的に売れていないから残念なバンドとは感じないと思うんです。既存の価値観だったら、彼らは成功していないかもしれない。でも違う価値観を、この映画が感じ取ってもらえたらなというのが僕の希望です。
Information

『A DOCUMENTARY FILM OF LOSTAGE-ひかりのまち、わたしたちの-』
2026年1月2日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー
出演:LOSTAGE
監督:MINORxU
奈良を拠点に全国のライブハウスで活動を続けるスリーピースロックバンド・LOSTAGE(ロストエイヂ)。彼らの作品はヒットチャートには反映されない──大手の流通や販売方法を使わずに、チャートに載らない道をあえて選び、それでも全作品が5,500枚以上のセールスを記録し、旧譜は今もなお再プレスされ続け、売上を更新し続けている。40代を迎えてからは、47都道府県すべてを巡る全国ツアー(各地ソールドアウト続出)や、日比谷野外音楽堂でのワンマン公演成功など、年齢や性別を問わず全国に熱狂的ファンを持つ稀有な現役バンド。結成25年目。メンバー3人はそれぞれ奈良で家庭を築き、地域密着の店を運営するなど、生活と地続きのまま音楽活動を続けている。かつては“ロックバンドとして大成すること”を期待され、メジャーデビューも経験した彼ら。その後、2011年を転換点に、現実に翻弄されながら歩んできた紆余曲折の日々と、その軌跡。数多くのバンドマンから“神格化”されるほどの存在でありながら、同時に“生活者”として地に足をつける3人。家庭を持ちながら、夢のような活動を続けてきたLOSTAGEの「ありのまま」の謎・魅力に迫る、密着ドキュメンタリームービー。
INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI
