どれだけ勘違いしながら芝居と向き合ってきたのか、徹底的に見つめ直せた

——お二人のキャリアについてお伺いさせていただきます。現在、幅広く活動されていますが、俳優としてターニングポイントになった作品は何ですか?

髙橋 いろいろあるんですけど、まずは初ミュージカルだった『デスノート THE MUSICAL』(2020)です。ど素人が、いきなりグランドミュージカルの舞台に立つという大事件が起きて(笑)。「このままではまずい!」と、そこから歌唱指導や音楽監督の方に猛特訓していただき、リューク役の横田栄司さんにもみっちり稽古をつけてもらいました。稽古の前に稽古をして、終わった後も復習して、濃密な時間を過ごさせていただきました。

——髙橋さんは、昨年のリーティングミュージカル『アンドレ・デジール 最後の作品』での稽古も壮絶だったとお聞きしました。

髙橋 演出の鈴木裕美先生に、全部の粗をさらけ出されて、厳しい愛の鞭で全身丸焦げになるくらい鍛えられました。毎日満身創痍でした。もちろん今も未熟だとは思っていますが、そこで自分がどれだけ勘違いしながら芝居と向き合ってきたのか、徹底的に見つめ直されたんです。その経験を経て、ようやく初級に足を踏み入れた感覚があります。だからこそ、今回の作品では、これまで培ってきたすべてを出し切りたい。誠意を持って、貢献するためのことを考え続けたいと思います。

糸川 僕も思い入れのある作品はたくさんありますので、一つに絞るのは難しいのですが、2.5次元の作品は大きいですね。いろいろなイメージを持たれるジャンルだとは思うのですが、僕にとっては芝居の難しさや、「役を演じる」ということの本質を強く突きつけられた場所でした。少しでも上辺だけで演じてしまうと、ただの物真似になってしまう。それでは原作を本当に愛している人たちを納得させられない。じゃあ、どこまで深く役に潜っていけばいいんだろう、と考え続けるようになった原点。そういう意味でも、2.5次元作品には強い思い入れがありますし、これまで関わってきたすべての作品に感謝しています。

——糸川さんは昨年、俳優10周年を記念して1人音楽劇『夜啼鳥』を上演されましたね。

糸川 この挑戦で自分の殻を初めて破れたと感じました。以前にも一人芝居は経験していたんですが、音楽劇という形は初めてで、スタッフの皆さんと一緒に企画から作り上げた作品でした。これが本当に大変で、生まれて初めて「もしかしたら自分には演じられないかもしれない」と思ったほどです。毎日しんどかったのですが、その重圧を乗り越えた瞬間に、「生きているな」と心から感じましたし、「今、自分は成長しているんだ」と実感できた作品でした。あの経験は自分の中で特別で、一生忘れられない快感として残っています。芝居は本当に過酷だなと思いますが、それでも「自分はこの世界にいたい」と思える。だからこそ、これからもそういう挑戦を続けていきたいです。今回の『最後の事件』は二人芝居で、かなり極限に近い状況に追い込まれる作品。この舞台を終えたときに自分が何を感じているのか、それが今はとても楽しみです。

Information

ミュージカル『最後の事件』

東京公演:2026 年2 月7 日(土)~3 月8 日(日) 銀座 博品館劇場
大阪公演:2026 年3 月13 日(金)~3 月16 日(月) サンケイホールブリーゼ

アーサー・コナン・ドイル:加藤和樹、矢崎広、髙橋颯
シャーロック・ホームズ:渡辺大輔、太田基裕、糸川耀士郎

脚本・作詞・演出:ソン・ジェジュン
作曲:ホン・ジョンイ
翻訳・訳詞・演出補:福田響志
音楽監督:岩崎廉
振付:松田尚子
美術:伊藤雅子
照明:杉田諒士
音響:佐藤日出夫
衣裳:小西翔
ヘアメイク:水﨑優里
歌唱指導:吉田純也
アクション:冨田昌則
稽古ピアノ:treetop (栗山梢、豊住舞、久保奈津実)
通訳:シンユ
演出助手:坂本聖子
舞台監督:仲里良

患者が訪れない病院の医師であり、読者に見放された作家、アーサー・コナン・ドイルは人生を変えるため探偵小説を書き始める。その小説の主人公の名はシャーロック・ホームズ。ホームズは完璧なプロファイリング能力を備え、探偵として必要な全てを兼ね備えた最高の探偵である。作家と小説の中の登場人物でありながら、ドイルとホームズは最高のパートナーとなり、探偵短編小説を完成させていく。小説内の様々な事件を華麗に解決していくホームズに、人々は熱狂していった。ドイルはホームズが主人公の探偵短編小説で成功している中、長年夢に見てきた歴史長編小説を書きたいと願うが、出版社からは「ホームズが登場しない小説は必要ない」という拒絶ばかりを受ける。ドイルは自身の夢を叶えるため、ホームズとの運命を変える重大な決断を下す。小説と現実が入り混じる中、果たして二人の結末はどうなるのか――。

公式サイト
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糸川耀士郎

1993年5月28日生まれ、島根県出身。確かな演技力と高い身体能力、そして透明感のある歌声を武器に、2.5次元舞台から声優、映像作品まで幅広く活動する実力派。ミュージカル『刀剣乱舞』浦島虎徹役、ゲーム『ディズニー ツイステッドワンダーランド』ルーク・ハント役などをはじめ、近年は、ミュージカル『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』アンソニー役や主演を務めた歌絵巻「ヒカルの碁」序の一手で大きな注目を集める。昨年は1人音楽劇『夜啼鳥』や、ミュージカル『ミセン』へ出演し、表現者としてさらなる進化を続けている。

髙橋颯

1998年5月8日生まれ、埼玉県出身。ホリプロ初の男性ダンス&ボーカルグループ「WATWING」のメンバーとして、圧倒的な歌唱力とダンスでファンを魅了する一方、俳優としても着実にキャリアを重ねる。TBS日曜劇場『DCU』などのほか、近年はミュージカル界でも躍進中。2025年には、大ヒットミュージカル『ジェイミー』や、『アトム』で主演に抜擢。アーティスト活動で培った表現力と繊細な演技力で、次世代を担うスターとして期待が寄せられている。

PHOTOGRAPHER:TOMO TAMURA,INTERVIEWER:TETSU TAKAHASHI,HAIR&MAKE:HIKARU(LEIMAY),STYLIST:中村剛(ハレテル)
衣装協力:RIPO trenta anni(髙橋)  IMMEZ(糸川)