生のベースじゃないと成立しないという曲が増えてきた
――前回の連載でベースについての言及がありましたが、今回のアルバムではベースの後藤マサヒロさんが全面的に参加されています。
Novel Core 後藤くんは武道館公演に合わせて作った「HERO」で、初めてベースで入ってもらって。もともとクマさん(Yuya Kumagai)やウッチー(Yuki Uchimura)とつながりがあって、下北沢のRPMといったセッションバーでも一緒に演奏する仲間でもある。僕も共通の知り合いが多くて、後藤くんはAWSM.というクリエイティブチームに所属していて。AWSM.はJUBEE、サンタくん(SANTAWORLDVIEW)、レオンくん(Leon Fanourakis)など、ラッパーの曲もたくさん手掛けているチームなんです。だから話も弾んで、「HERO」以降は定期的に参加してもらって、この最近の曲はすべてベースを弾いてもらっています。

――そもそもTHE WILL RABBITSがベースレスなのは、どういう背景があったのでしょうか。
Novel Core 当初は、僕がバンドでライブをやり始めた2022、23年あたりの時点でリリースした楽曲は、自分たちで制作しているというよりは、プロデューサーさんがいっぱいいて、コライト的な感じでセッションをして作っている曲がほとんど。そうなるとドラムも基本打ち込みだし、その裏でアタック感を持ってる808(TR-808)が鳴っていたり。シーケンス要素が強い分、それを生のベースに置き換えてしまうと、一気に曲が面白くなくなっちゃう、いわゆる普通のギターロックになっちゃうというのがあって。それを懸念して、シーケンスでベースとかは出して、ベースレスの編成でライブをやったほうが、自分たちの曲の良さが出るよねっていうので、やってきていたんです。でも、バンドとしてサウンドを作り替えていったタイミングから、「逆に生のベースじゃないと成立しない」という曲が増えてきたんです。そこから後藤くんにジョインしてもらっています。今後はライブにも入ってもらう可能性もあります。
――アルバムの新録曲についてお聞きします。「お金が足りない」は、アルバムの中で唯一、JUGEMさん以外の外部プロデューサーとしてXanseiさんが作曲と編曲で参加されています。
Novel Core 今回のアルバムは14曲中13曲がバンドで作っていて、それが今までのアルバムと一番大きな違いなので、方向転換をしたとか、リブランディングを大きく図ろうとしているふうに見えてしまうのが、自分的にはすごく嫌で。どちらかというと、今までやってきたことの延長線上で、精度が高まったとか、より自分の作りたいものに忠実になっただけで、そのために必要だったのが、バンドの力だった。めちゃくちゃ大きく舵を新しいところに切ったって感じに見えないためにも、今まで自分がやってきていたセッション形式での楽曲制作というのも、アルバムの中にピースとして残したほうが、それを受け取るOUTERからしたら受け入れやすいんじゃないかなと思って。1曲ぐらい誰かとセッションして作ろう、外部のプロデューサーと作ろうということで、僕が思いつく限りで一番ミクスチャーなプロデューサーがXanseiくんだったので声をかけました。Xanseiくんとは2、3年前から親交が始まったのですが、BMSGの他のアーティストの楽曲にも参加しているので、スタジオで会うこともありますし、フィーリングも合っていたので、このタイミングでやろうと。
――「お金が足りない」はどのように制作したのですか。
Novel Core Xanseiくんとやるんだったら、「SHIKATO!!!」のミクスチャー版みたいなのを作りたいと話を最初にしました。僕の曲の中でもライブで大事なピースの一つになっていて、曲を知らない人でも1サビで物事を完全に理解できるキャッチーさと同時に、自分の見せたいスキル面もちゃんと見せられるという楽曲。あれをバンドで鳴らしてもいいみたいなサウンド感でやれたら、もっといいなっていうのがあって。それをリファレンスでXanseiくんに相談したら、ビートを作ってきてくれて。わざとギターをデータ上でカットして、面白いものを作ってきてくれたんですけど、「SHIKATO!!!」のように耳に残る、みんなが口ずさめるフレーズみたいなのが入っていない状態だったんです。僕から、「メインのリフみたいなテーマがあったほうが、もっと曲としてよくなる気がする」と言って、それに合ったフレーズをその場で作ってもらって、追加してもらいました。

――どうライブの時にバンドでアレンジするのか想像がつきません。
Novel Core サビだけフルバンドで演奏して、バースはシーケンスに委ねるとかっこいいのかなとチーム内で話しています。足し引きの美学というか、ここは無理に演奏しなくてもいいよねというふうに考えていくと、この曲のバランスはちょうどよかったなと思います。
――曲作りの段階で、ライブでどう演奏するかまで考えているんですか。
Novel Core どの曲も、あらかじめライブでどうやるかを想定しているので解像度は高いですね。音の積み方もそうで、どこをバンドメンバーに演奏してもらうか、どこをシーケンスで出すかも考えながら作っています。
――「あやとりコンテニュー」は非常にユニークな楽曲です。
Novel Core とにかく僕のボーカロイドのルーツを全面的に押し出した曲を作りたくて。「カミサマキドリ」も花譜ちゃんをゲストボーカルに入れて、ボカロマターの曲でしたが、もっとサウンド感も含めて、ボーカロイドに振りたかったんです。それでボカロPでもあるJUGEMと僕にしか作れないものをやりたいということでスタートしました。
――女性の声はどなたですか。
Novel Core ゲームボイスのサンプルを探して、声を加工して使っています。途中に入っているボーカロイド音声は、あえて初音ミクとか鏡音リンを使わずに、僕が抑揚をつけずに機械的に歌って、それをフォルマントやピッチシフターで引き上げて、あの形に仕上げています。
――なぜご自身の声を加工したのでしょうか。
Novel Core オリジナルで新しいものを作ることに意識が向いていましたし、一般的なボカロPとは違うことをやらないと、僕とJUGEMでやる意味がない。だから自分の声でやらせてもらいました。
――「ビリビリ feat. JESSE (RIZE / The BONEZ)」の制作過程もお聞かせください。
Novel Core オファーをする時に、デモがあるぐらいじゃ逃げられると思ったんです(笑)。とはいえ出会って1年ちょっとだし、忙しい人だし。でも、僕的には今回のアルバムを作るトリガーでもあり、僕がミクスチャーミュージックという自分の音楽を提唱して、ミクスチャーという旗を振り始めた理由も、あの人だし。大事なピースなので、この人に入ってもらわないわけにはいかない。かといって、並大抵のオファーの仕方じゃかわされる可能性もあるぞと自分的にあったので、固めた状態で渡そうと思って、逃げられないようにしました。
――JESSEさんのパートだけ空白にしてあったんですか。
Novel Core そうです。オケも僕のボーカルもレコーディング済みで、タイトルも「ビリビリ feat. JESSE (RIZE / The BONEZ)」と決まった状態。それで「LuckyFes 2025」に出た時に、僕の出演日の翌日にThe BONEZが出ていて。僕はそのままマネージャーさんたちと一緒に残って、次の日も遊びに行って。The BONEZのライブ終わりに楽屋にいたJESSEさんのところに突撃して、「アルバムで1曲やってもらいたいんですけど、いいですか?」と直談判して快諾してもらいました。
――どういうレコーディングだったのでしょうか。
Novel Core JUGEMとクマさんと3人でJESSEさんのスタジオに行ってレコーディングをしたんですが、JESSEさんは僕らが到着する寸前まで歌詞を書いていたみたいで。おそらく15分くらいで歌詞を書いて、そのままレコーディングして。タイムリーに出来上がったものを僕たちも見て、自分のバースと違うスタイルでやってくれたのが、めっちゃうれしかったし、そこの意図を言わずとも理解してくれたのも超うれしくて。ちゃんと圧倒的なスタイルウォーズが生まれたのが良かったです。
――JESSEさんからボーカル以外のアイデアも出たのでしょうか。
Novel Core JESSEさんのボーカルレコーディング自体は15分ぐらいで終わったんですけど、その前後で、JESSEさんから曲の構成や演奏の部分で、幾つかアイデアが上がってきて。「ここのパートは丸ごとなくして、ここにくっつけたらどうだろう」とか、「サビの最後の折り返しのところはハーフにしたほうがかっこよくない?」とか。長年フロントマンとしてバンドを率いてやってきた人ならではの、ライブアクトとしての体感で、「この曲はもっとこうしたほうが良くなる」「よりライブが盛り上がる」というアドバイスをいっぱいもらって。それを持ち帰って、次の日にトラックをいじったりして、あの形になったので、かなり構成も変わりました。
