高校生の頃から東京ロッカーズ周辺のバンドは聴いていた

――最新の主演映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』は、1978年に勃発した日本のロックに革命を起こした伝説的なムーヴメント「東京ロッカーズ」を基にした実話ベースの青春音楽映画です。もともと東京ロッカーズ周辺の音楽はお好きでしたか。

峯田和伸(以下、峯田) リアルタイムでは経験できなかった世代なんですけど、高校生の頃から、この映画に出てくるFRICTION、THE STALIN、じゃがたらなどのアルバムを聴いたり、当時の雑誌を読んだりしていました。

――東京ロッカーズの魅力をどこに感じましたか。

峯田 音がめちゃめちゃかっこいいんですよね。海外のパンクに影響を受けて、そのまま鳴らしたような音なので、説得力がまったく違うんですよね。30代に入ったあたりから改めて好きになって、中古レコード店を回ってはアナログを買い漁っていました。中でもFRICTIONはライブ盤も含めて最高ですね。

――映画の原作である地引雄一さんの『ストリート・キングダム―東京ロッカーズと80’sインディーズ・シーン』(以下、『ストリート・キングダム』)は以前から知っていましたか。

峯田 前から持っていました。現場を実際に見てきた人が書いたノンフィクションとして、「本当にこんなことがあったのか」と思うほど刺激的な内容で。自分はその場にいられなかったから、想像することしかできなかったんですよね。今回の映画で、当時のライブハウスそのまま再現したセットを組んで、ライブシーンを撮影したので、1978年当時を追体験しているような感覚でした。

――著書にも登場する地引さんが撮影した風景が、そのまま再現されていて驚きました。

峯田 そうなんですよ。たとえば今、歌舞伎町にある新宿ロフトで撮影しても、どうしても「今の新宿ロフト」になってしまう。だったら当時の新宿ロフトを建てようということで、廃中学校の体育館の中にセットを作って再現したんです。細部までこだわっていて、本当に美術さんはすごいなと思いました。セットだけじゃなく、お客さんの乗り方一つにしても、「それじゃあ今っぽいんだよな。もうちょっとバラバラに乗ってみようか」と監督の(田口)トモロヲさんから指示が入っていてリアルでした。

――田口監督は東京ロッカーズの現場にも行かれていたのでしょうか。

峯田 東京ロッカーズ自体は行ったことがなかったそうなんですが、FRICTIONやTHE STALINのライブは観ていたそうです。

――峯田さんが演じるのは地引さんがモデルの主人公・ユーイチですが、オファーがあったのはいつ頃ですか。

峯田 9年前です。トモロヲさんから『ストリート・キングダム』を映画化したいという話を聞き、「地引雄一をやってほしい」と声をかけてもらいました。東京ロッカーズの映画なのに、バンドマン役じゃないんだと戸惑いもありましたが、カメラマン役として自分に声をかけてくれるのが、いかにもトモロヲさんらしいし、きっと何か勝算があるんだろうなと思いました。

――なぜ9年もの時間がかかったのでしょうか。

峯田 撮影する予定だった時期にコロナ禍が重なったんです。お客さんが集まるシーンも多い作品だったので、撮影が難しくなってしまって。その影響で、これだけの時間がかかりました。

――事前に地引さん本人とはお会いになりましたか。

峯田 撮影の3カ月くらい前に地引さんの家に伺って、初めてお会いしました。その時に当時使っていたカメラの機種を教えてもらって、同じものを探して買いました。

――役作りの上で、地引さんの立ち居振る舞いなどは意識しましたか。

峯田 トモロヲさんから「地引さんのままでいこうとしなくていい。脚本を読んで、峯田くんがこうしたいと思ったことを出してくれたらいい」と言われたので、そこまで意識はしなかったです。

――ユーイチは写真家になる夢を一度は挫折しながらも、東京ロッカーズと出会うことで、再びカメラのシャッターを切るようになります。

峯田 目の前にかっこいいバンドたちがいて、それを自分が記録しないで、誰がやるんだという気概はすごいなと思いました。僕自身もバンドをやり始めた時から現在まで、撮ってくれるカメラマンがいて。地引さんのような気持ちで撮影してくれていたんだなと改めて気づかされました。ユーイチは写真を撮るだけじゃなく、あれだけかっこいいバンドマンが周りにいて、「じゃあ自分はどうする?」と考え、自分でもイベントを主催しますが、駆り立てられる気持ちもすごく分かりました。