映画『がんばっていきまっしょい』には青春のすべてが詰まっている

――先ほど『がんばっていきまっしょい』に出演する前は苦しかったというお話がありましたが、詳しく聞かせていただけますか。

田中 このまま普通の高校生として過ごしていくのかなと思うと怖くて眠れなくて。俳優以外の道は一切考えられなかったので、思い詰めていた時期でした。本当に死ぬか生きるかという感じでしたね。

――そんな時期を、どうやって乗り越えたのでしょうか。

田中 空に向かって、「誰か私を見つけてください」と願っていました(笑)。あと毎夜、仕事に行く自分の姿を想像しながら眠ったりもしていました。ただ地元の九州で、2年ほどコマーシャルの仕事をコツコツ続けていたら、「期待のCMガール」みたいな形で雑誌に取り上げていただけることもあって、地道な活動を続けていれば、誰かが見つけてくれるんじゃないかという希望は持っていましたし、母親もそう言ってくれていたので、それが支えになっていました。

――演じることへの興味はいつ頃からあったんですか。

田中 小さい頃から映画やドラマが大好きで、小学校に入る前から、母親と一緒に見ていたドラマに入り込んでいました。小学生の時は、見ていたドラマの台本みたいなものを自分で書いて、友達と一緒に演じてビデオを回したりもしていました。気づいたら演じることが身近にありました。

――『がんばっていきまっしょい』の撮影で、今でも印象に残っていることは何でしょうか。

田中 私自身が自然に囲まれた場所で育ったので、映画の舞台になった松山も海があって山があって島があって。素敵な景色の中で撮っていたので、そこで暮らしているような感覚があって。主人公の悦子になりきっていたので、自分の自然な部分を引き出してもらっている感覚でした。

――2024年に池袋の新文芸坐で、『がんばっていきまっしょい』がフィルム上映されて、田中さんはトークイベントに登壇されました。

田中 久しぶりに観返して、改めて名作だなと思いました。キラキラした部分だけじゃなくて、昔の自分自身みたいなモヤモヤ感、不器用さ、うまくいかないことへの焦り、そういうもの全部が青春で。当時の自分に伸び悩んでいる部分があったからこそ、ボートを漕いだ時に見える湖に映った太陽のきらめきや、オールが水面を打つ時の水しぶきが、より美しく見えて。素敵な映画に参加できたんだなと感じました。

――普段から田中さんは、よく映画館に足を運ぶそうですね。

田中 シネコンからミニシアターまで幅広く観に行っています。ミニシアターだとトークショーや舞台挨拶が近い距離で見られるので、こっそり忍び込んだりもします(笑)。純粋に観客として客席にいるので、「こんなお話が聞けて得した」「素晴らしい作品を作ってくれてありがとう」という気持ちになれますし、自分が舞台挨拶やトークショーで登壇した時の参考にもなります。

――最後に改めて『黄金泥棒』の見どころをお聞かせください。

田中 金を盗みに行くことで美香子は生き生きしていきますが、彼女が追いかけているのは金という物質的なものじゃなくて、自分の人生を取り戻しに行くことだと思っているんです。自分の生き方や取り戻したいものって何だろうとか、40代になって自分の本音に触れてみようとか、自分の中にも美香子のように眠っているものがないかなと問いかけながら映画を観ていただいても楽しいんじゃないかと思います。

Information

『黄金泥棒』
2026年4月3日(金)より全国公開中

田中麗奈 森崎ウィン 阿諏訪泰義 石川恋 岩谷健司 中村祐美子 勝野洋 宮崎美子
監督・脚本:萱野孝幸
主題歌:広瀬香美
配給:キノフィルムズ
©2025『黄金泥棒』FILM PARTNERS.

平凡な日々に退屈していた専業主婦の美香子は、訪れた百貨店で株式会社SGCが販売する数百万円もする金(きん)のおりんをつい盗んでしまう。金の魅力に取り憑かれて世界が一変。「私にしかできないことをする」という幼き日の夢が蘇り、100億円の秀吉の金茶碗を盗み出す計画を企てる。美香子を利用しようとするSGCの社員・金城との駆け引きや、なし崩し的に泥棒の共犯者となった夫の浮気など、数々のトラブルに見舞われる。

公式サイト
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田中麗奈

1980年5月22日生まれ。福岡県久留米市出身。1998年、『がんばっていきまっしょい』で映画初主演を務め、数々の映画賞の新人賞を受賞。4月28日スタートのNHKドラマ10「コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店」(毎週火曜・22:00)の出演も控えている。

PHOTOGRAPHER:YUTA KONO,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:RYO,STYLIST:MAKI IWATA