ショートヘアにしたのがターニングポイント
――『太陽がしょっぱい』が映画初出演になりますが、オファーがあったときのお気持ちはいかがでしたか。
平 美乃理(以下、平) すごくうれしかったですし、主演の重松りささんが演じる河合美波のお友達という素敵な役で出させていただくのもワクワクしました。
――ルッキズムがテーマの作品ですが、初めて脚本を読んだときの印象はいかがでしたか。
平 若い子たちの間でSNSが普及しているし、TikTokも流行っているので、それに影響されて、「こうなりたい」「自分もかわいくなりたい」と憧れる人がたくさんいると思います。でも、そういう人たちがルッキズムにとらわれずに、ありのままの姿でいられるようになればいいということを優しく伝えてくれるような映画だなと思いました。クスッと笑える部分もあって、テーマの重さとのバランスがいいなと感じました。
――ご自身が演じた彦坂キララには、どんな印象を抱きましたか。
平 美波とは正反対の女の子で、イケメンの彼氏がいて、学校生活も楽しんでいて、あっけらかんとしたキャラクター。なので本番でも重く考え過ぎずに演じることを意識しました。
――ご自身の高校時代と重なる部分はありましたか。
平 何も考えていないような、あっけらかんとしたところは似ているかなと(笑)。私も育った場所が田舎町で、高校の友達も幼稚園から一緒という子が多かったんです。そういう環境も似ているなと思いました。
――西川達郎監督から特別な指示はありましたか。
平 美波からするとキララは輝いている存在なので、学校で一番の美人オーラを出してほしいと言われました(笑)。あとは、あっけらかんとした感じを出してほしいと。ただ考え過ぎなくていい、そのままでいいよとも言っていただき、現場では普段よりも元気良くいるようにしました。
――現場の雰囲気はいかがでしたか。
平 ロケ地が愛知県の豊橋市だったのですが、自然に囲まれた素敵な場所で。撮影中も常に和やかな雰囲気でした。撮影後、みんなでご飯に行って、ラーメンを食べたのも良い思い出です。
――重松さんの印象かいかがでしたか。
平 撮影中はずっと一緒にいたのですが、撮影中も空き時間も、そんなに変わらない雰囲気で。お芝居のことも教えてくださいましたし、普段のことも楽しく話してくださって、実際に学校生活を送っているような、青春な感じでした。
――キララの彼氏を演じた松尾 潤さんとの掛け合いも面白かったです。
平 松尾さんのほうが年上なのですが、すぐに意気投合して仲良くなりました。それもあってか、二人でのお芝居は西川監督からも「雰囲気があって、めちゃめちゃいいよ」と言ってもらえました。
――映画ならではの空気感みたいなものはありましたか。
平 映画の直前に、初めてドラマの撮影を経験したのですが、ドラマはスケジュールがタイトで、効率よく撮影が進んでいきました。対照的に映画は長い時間をかけて、ゆったりと撮っていくので、落ち着いてお芝居ができました。
――特に印象に残っているシーンは?
平 クランクアップの日に撮影したのですが、美波が告白されるときに、私と松尾さんが後ろでコソコソ覗きながら応援するシーンが大好きです。告白する男の子を演じた斉藤天鼓さんが、独特のお芝居でオドオドした気まずさを醸し出していて。それが面白過ぎて、撮影中も笑っていました。
――完成した作品を観たときの印象はいかがでしたか。
平 上映会で観たのですが、自分が出演している作品を大きな画面で観るのが初めてだったので、最初は緊張でしかめっ面をしながら観ていました(笑)。現場の雰囲気にも助けられて、キャストの方々に馴染んでいるなと感じました。あと自分が参加していない美波と家族のシーンが印象的で、美波、美波の両親、おばあちゃんと、三世代の絡み合いが面白かったです。
――平さん自身、美波のように容姿に悩んだ経験はありますか?
平 モデルというお仕事をしているので、ファッションショーや撮影で他のモデルさんと会ったときに、「かわいい子が多いな」とか、「綺麗な人ばかりだな」とか、自分と比べてしまうことも多かったです。岡山から東京に行ってオーディションを受けていた高校生の頃は、特にその思いが強くて。今は他人と比べなくていいんだ、ルッキズムにとらわれなくてもいいんだと思えるようになりました。
――そういう気持ちになれたきっかけが何かあったんですか?
平 私はショートヘアがトレードマークなのですが、「似合うね」と言っていただけることもあって、自分ならではの良さがあることに自然と気付けたのが大きかったです。
――以前はロングヘアだったそうですね。
平 高校1年生まで長かったです。
――どうしてショートにしようと思ったんですか。
平 特に理由はなくて、いろんな雑誌やSNSを見て、ショートヘアってかっこいい、かわいいなと思って。直感で動くタイプなので切りました。それから、ずっとショートですね。
――事務所の方に止められなかったんですか?
平 ちゃんと許可を取ったのですが、止められることはなかったです。当時は『Seventeen』の専属モデルになる前で、ミスセブンティーンも含めて、いろいろなオーディションを受けていたのですが、なかなか受からなかったんです。だから、どこか変わりたいなというのもあったと思います。切ってからオーディションにも受かるようになったので、何か悪いものが落ちたのかもしれません(笑)。