メジャーデビュー10周年を経た初のベストアルバムは音楽業界を「サバイブ」してきた証に

――初のベストアルバムは、2014年6月にリリースした1stミニアルバム「焦燥」でのメジャデビューから10周年を記念した作品となりました。

松尾レミ(以下、松尾) 純粋に突き進んでいたら今になった感覚で、色々とあったんですが、全力投球でした。ベストアルバムのマスタリングでは、1曲目の「焦燥」から通しでチェックしたんです。初期の曲も最新曲も「全部カッコいい」と自信を持てたし、過去の自分への答え合わせができたし、10周年までの幸せな時間を経て「また一直線に頑張ろう」と思えました。

亀本寛貴(以下、亀本) 10周年まではあっという間でした。こうしたインタビューでも常に新鮮な気持ちで答えているんですけど、若手だと思っていたら、いつのまにか若手じゃなくなってしまいましたね。出演者の入れ替わりが激しいフェスでは、すっかり後輩ばっかりになりました。デビュー当時に褒めてくれた先輩たちのように、初対面の後輩に「いいね!」と声をかけるようになって、音楽業界を「サバイブしてきたんだ」と実感しています。

――2枚組のベストアルバムに収録されたのは28曲。ファンのリクエストを受けて、2人で選曲されたそうですね。

亀本 ファンのみんなが選んでくれたのは大事にしたくて、結果として、28曲でも「曲数が少ない」と感じちゃいましたね。

松尾 曲に思い出があるので「あれもこれも」とはなりました。ただ、ベストアルバムを私たちへの入り口として聴く人もいるわけじゃないですか。全曲を通して“GLIM”の深いところへ入っていけるように、過去のアルバム全作からも少しずつ曲を入れています。

亀本 1枚目の<DISC 1>は「怒りをくれよ」とか「大人になったら」とか、収録曲はすんなり決まったよね。松尾さんと「これは入れなきゃダメでしょ」という曲が一致して、議論の余地もなかったです。

松尾 2枚目の<DISC 2>は悩んだ。<DISC 1>はライブでずっと歌ってきた曲ですけど、<DISC 2>では比較的新しい曲を入れたんです。未発表の6曲も収録して、コロナ禍でたがいに自宅で録音した曲もあるし、音楽の新たな引き出しを増やせた意味も込めたので、長い旅にはなりますが<DISC 1>から<DISC 2>を、一度は通しで聴いていただきたいです。

――そんな思いも込めた<DISC 2>収録の最後を飾る「愛が満ちるまで feat. LOVE PSYCHEDELICO」は、LOVE PSYCHEDELICOさんとの共作です。

松尾 ベストアルバムでは「10周年までに出会った人たちとコラボレーションしてみよう」というテーマもあったんです。LOVE PSYCHEDELICOさんはその1組で、現場でお会いするたびに「何か一緒にやろうよ」とは言ってくださっていて、私たちもそう思っていたし、オファーしたらKUMIさんとNAOKIさんから快くオッケーをいただきました。

亀本 お2人のスタジオには、僕らの世代ではプレミアが付いてとても手に入れられない楽器やレコーディング機材が、置いてあるんですよ。1950年代のレスポール・スペシャル(ギター)とか、1960年代のVOX(アンプ)とか。レトロな機材を使ってのレコーディングは現代の方法論と異なっていたので刺激になったし、「同じベクトルでは勝負できない」と痛感できる時間でした。