周りに助けを求めながら頑張りたいと思った

――映画初主演となる『他人は地獄だ』ですが、オファーがあったときのお気持ちはいかがでしたか。

八村倫太郎(以下、八村) 映画の主演を任せてもらえるのは、それだけ期待していただいているのかなと思いましたし、お芝居も映画も大好きなので、率直にうれしかったです。ただ「佐原先生と土岐くん」でドラマ初主演を務めさせていただいたときもそうだったんですが、自分にできるのかという不安もありました。ドラマとはまた違う環境になるし、プレッシャーもあったんですが、W主演の俊さん(栁 俊太郎)を始め先輩の俳優さんが多かったので積極的に頼ろうと周りに助けを求めながら頑張りたいと思いました。

――本作は韓国発のWEBコミックが原作のサスペンスホラーですが、もともとホラー作品はお好きでしたか?

八村 むしろ苦手で、グロテスクな描写や幽霊系はまともに観ることができません。作り物とは分かっていても割り切れないというか、夜トイレに行くとき怖いだろうなとか、いろいろ考えちゃいます。そういう作品を観たことがなかったから、『他人は地獄だ』でお芝居をするにあたって、自分の中に引き出しがないんじゃないかという不安もありました。

――初めて台本を読んだときの感想はいかがでしたか。

八村 複雑な構成で、最後にそう来るかみたいな意外性もあって面白かったです。どういう映像になるのかとワクワクしながら、想像力を膨らませながら台本と向き合うことができました。

――ユウを演じるにあたって、どんな役作りを意識しましたか。

八村 アクの強い登場人物が多い中で、ユウが一番普通で、観る側が感情移入できるキャラクターです。どんどん変化はしていきますが、最初はまともなので、お芝居の積み重ねで、自分の中で役を蓄積して演じられそうだなと思いました。児玉和土監督も「ユウは普通でいいよ」と仰ってくれたので、気持ちも楽になりました。

――ユウに共感できる部分はありましたか。

八村 ユウは夢を追いかけたい気持ちから家族に冷たく当たってしまうけど、本当は家族思いで、周りにいる人たちに対しても愛を持とうという人間です。僕も家族が好きだし、ユウに共感できました。

――前半と後半では、ユウは別人のように変化していきます。そのギャップを表現する難しさはなかったのでしょうか。

八村 順撮りではなかったので、シーンに応じて前後の展開を想像しながら演じなければいけないのは大変でした。ただ今回の撮影を通して、自分の中で整理したり想像したりする作業が好きだなと気付いたので楽しかったです。確かにユウは感情の入れ替わりが激しいのですが、別人格があるというよりは、周りの人間に影響されて変化していく一人の青年という感覚があったので、ひたすら自分とユウとの距離を詰めていく作業でした。