「物事をはっきり言えない」まきは昔の自分と似ている

――初めて『子宮恋愛』の脚本を読んだときは、どんな印象を受けましたか。

松井愛莉(以下、松井) 全く違う性格のメインキャラクター4人がいて、抱えている悩みや問題も違っている。私が演じる(苫田)まきを中心に、それぞれが成長していく過程が丁寧に描かれていたので、ドロドロした展開は多少あるものの、しっかりとした人間ドラマだなと感じました。

――役作りのために特別な準備はされましたか?

松井 置かれている状況は違いますが、なかなか物事をはっきり言えないというまきの女性像が昔の自分に近かったので、役作りというよりは自分の昔の感情を引っ張り出すような作業でした。嫌なことがあっても、笑ってごまかすとか、まんま昔の私だなと(笑)。こんなに自分と似ている役は初めてかもしれません。

――自分事として捉えられたんですね。いつ頃まで、そういう部分があったんですか?

松井 10代で仕事を始めてから、20代前半ぐらいまでですかね。結構長い間そうでした。今も引きずっているところはありますが……(笑)。

――今はそういった面は変わったのですか。

松井 思ったことをちゃんと言うようにしていますし、分からないことがあったら聞くように心がけています。

――変わるきっかけはあったんですか?

松井 これといったきっかけがあった訳ではないんですが、この仕事を続けていくうちに、自分が強くないとやっていけないと感じるようになりました。伝えても上手く伝わらないことってあるじゃないですか。でも何も言わなかったら、そもそも何も伝わらないと気付いたんです。伝えることによって解決することもあるし。それに気付いてからは、言い方は下手でもなるべく伝えるようにしています。昔は周りの目を気にして「どうしようかな」と自分の中で悩むことが多かったんですが、生きるのが楽になりました。

――そんな、まきを演じるにあたって特に意識した点はありますか?

松井 まきは他人の目をすごく伺うというか、「この人は今どう思っているんだろう」というのを敏感に感じ取れる女性なんです。なので相手のセリフや感情の動きを聞き落とさないように、見落とさないように演じました。

――モノローグで心情を語るシーンも多いですが、表情で感情を伝える難しさもあったのではないでしょうか。

松井 まさに心の中に渦巻く感情を細かい表情の変化で表現するのは難しかったです。なるべく相手役の演技を受けたときに瞬時に反応できるように意識していました。

――まきが惹かれる会社の同僚・山手旭(大貫勇輔)と、まきの夫・苫田恭一(沢村玲)。松井さん自身は、どちらに惹かれますか?

松井 どちらかというと山手ですね。まきにとって、山手のように引っ張ってくれる男性は今まで出会ってこなかったタイプだと思うんです。ズケズケと言われるのも初めてだし、「なんで、この人はこんなことを言うんだろう」と思いながらも惹かれていく。誰しも自分に持っていないものを持つ人に惹かれやすいじゃないですか。山手がきっかけでまき自身も変わっていくので、彼の存在は大きいと思います。恭一は不器用で、自分を出せないところはまきと似ているんですよね。それに目線を変えれば、究極の一途で、そういうところを含めると、かわいらしいなと思えたりします。人それぞれの見方があると思いますし、どのキャラクターに感情移入するかによって印象も変わってくるし、そういうところがドラマを面白くしています。