普段のイメージとは逆のキャラクターを演じることの難しさ
――現在公演中の『明けない夜明け』で舞台初主演を務めていますが、オファーがあったときにプレッシャーはありましたか。
小島藤子(以下、小島) 三姉妹がメインのお話なので、そこまで主演というプレッシャーは感じなかったです。ただ年に何回も舞台に出る訳ではないので、いまだに舞台は慣れないです。
――『明けない夜明け』は2002年に福岡県久留米市で実際に起こった看護師4人による保険金連続殺人事件をモチーフにした作品で、2022年8月に上演した演劇企画集団Jr.5 第13回公演『白が染まる』の続編になります。初めて脚本を読んだときの印象はいかがでしたか。
小島 この事件は今年6月に「奇跡体験!アンビリバボー」でも特集されていましたが、『白が染まる』は事件の当事者たちがメインだったんですけど、『明けない夜明け』は加害者の子どもたち(三姉妹)が主人公です。大人になった三姉妹の話ですが、どうして父親が殺されたのか、母親が逮捕されたのかが分からないまま、施設にバラバラに入れられて過ごしてきました。真相を知らないまま急に親がいなくなるという状況に恐怖を感じましたし、実際に起きた事件を調べて、人を信用できなくなる事件だなと憂鬱な気分になりました。
――舞台はコメディ要素もあるんですよね。
小島 三姉妹の関係性は重くて暗いんですが、外部の人との関わりは笑えるシーンも多いですし、テンポの良い会話劇になっていると思います。
――小島さんが演じるのは次女の河内恵、長女・河内愛役は尼神インターの誠子さん、三女・河内茉菜役は吉本実憂さんが演じられています。
小島 それぞれの施設に長女の愛が迎えに来てくれて以来、ずっと3人で暮らしているんですが、事件のことが周囲にばれるたびに引っ越していて。そんなこともあって愛は肉体的にも精神的にも疲れ切ってニート、恵は仕事を転々としていて今はお花屋さんのパート、茉菜は甘えん坊だけど三姉妹で一番しっかりしていて、ちゃんと稼ぐためにホステスをやっています。
――やっぱり誠子さんの役柄はコメディ要素が強いんですか。
小島 それが誠子さんは長女で一番苦労していて、引きこもりになっちゃったので役柄的に一番ふざけられないんですよ。
――確かに誠子さんは喋らないと儚げな雰囲気を持っていますよね。
小島 普段からニコニコ優しい方なんですけど、そういう雰囲気も持ってらっしゃいますよね。
――恵を演じる上で、どんなことを意識しましたか。
小島 笑ってるのに笑ってないみたいなところがある役柄と言われたんですけど、無理やり愛想笑いしてるのとはまた違うと。その辺のバランスを演出家の小野健太郎さんと話し合いながら役作りをしています。台本に書かれている訳ではないんですが、おそらく恵は事件のことがばれて仕事を辞めたこともあっただろうし、今は事件を知らない人たちと一緒に働いているけど、相手が親切でやってくれたことに対して、トラウマが蘇ることもある。そういうときの表情を舞台上で表現しなくてはいけないので本当に難しいです。
――誠子さんの印象はいかがですか。
小島 優しくて、世話好きです。何となくおっとりした方かなと思っていたんですけど、すごくハキハキしていて、私が何か言うと、すかさず反応してくれます。コンビではボケを担当されていると思うんですけど、めちゃめちゃツッコミが上手いですし、私がふざけたことをすると、何でも笑ってくれますし、本当のお姉ちゃんみたいです。
――吉本実憂さんの印象はいかがでしょうか。
小島 三人の中で一番しっかりしています。ちゃんと周りを見ているので、誠子さんと私は、年上なのに実憂ちゃんを頼りにしています(笑)。
――ご自身と恵で共通する部分はありますか。
小島 どちらかというと私は性格が子どもっぽいんですが、恵は何かと対立する姉と妹の間を取り持つような大人な立ち位置なので、正反対のタイプかもしれません。姉妹と話していても、他人と話していても、何を考えているのか分かりにくいし、姉と妹に「悲劇のヒロインぶってる」みたいなことを言われても、怒らずに肯定してしまう。嫌なことや辛いことがあったときに自分の中に閉じ込めちゃうところも、私とは違いますね。私は怒って全部言って発散させるほうなので(笑)。だから私自身は妹たちに当たり散らしている、誠子さんの演じる愛に近いかもしれません。
――それは面白いですね。
小島 逆に誠子さんは、「自分は恵に似ているから、演じてみたかった」と仰っていて。お互いに自分とは反対のタイプを演じているんです。小野健太郎さんも、あえて普段のイメージとは逆のキャラクターをやらせたらどうなるんだろうと考えてキャスティングをしたと仰っていました。