これまでの自分の人生経験を照らし合わせながらトライした

――「MADDER(マダー)その事件、ワタシが犯人です」のオファーがあったときのお気持ちからお聞かせください。

山村隆太(以下、山村) 連続ドラマに出演するのは2017年の「突然ですが、明日結婚します」(フジテレビ)以来で8年ぶり。光栄な気持ちとともに、ものすごいプレッシャーがありました。撮影現場で迷惑はかけられないですし、果たして力になれるのかと思いながら台本を読んだら、自分の最大限の力を捧げたくなるような素晴らしい作品だと感じました。ミステリーですが、その裏には複雑な人間関係が描かれていて。僕がいただいた「黒川悠」という役はミステリアスであり、世捨て人というか、生きることに疲れているような人物なんです。でも人間的に理解できる部分もあって、これまでの僕の人生経験を照らし合わせながらトライしたいと思いました。

――序盤では黒川の正体が分からず、徐々にバックボーンなどが明らかになっていきますが、役作りで意識した点は?

山村 黒川は何を考えているのか分かりにくく、人との距離感を苦手としています。不器用なところがありますが、それは過去にたくさんの出来事を経験した結果なんです。黒川が黒川らしくいられなかったことで、こうなってしまった。生きていく中で失ってきた大切なものを、どこか探しているような、あるいはどこか諦めているような、そういう部分を自分の中でしっかりと掘り下げようと考えました。

――黒川に共感する部分はありますか?

山村 黒川は対人関係に深く悩んだ結果、人との繋がりを捨ててしまうような人間です。僕がそこまで人に向き合い、悩んできたかと言われると、そこまでではありませんし、共感はできません。ただ演じる上で大事なのは共感するというよりも、理解しようとすることです。なぜこうなったのか、どういう経験をして、どう考えてこうなってしまったのかを理解しようとすることを大切にしました。

――どんな事前準備をしましたか。

山村 僕は準備人間なので、ライブにしても、準備を徹底的にしないと自信が持てないタイプです。今回も一歩でも黒川に近づくために、セリフの一つひとつを読みながら、「なぜこういう言い方をするんだろう」と考え、台本に書かれていないことも想像しました。そして自分と違うところを箇条書きしながら役作りを進めていきました。今日は、そのノートも持参したんですが、いろいろなことを書き込んでいます。音楽活動においても、15年やってきて、表現というものは準備がないと生まれてこないものだと感じています。