『ROPE』には現代の若い子たち特有の人との距離感が描かれている
――『ROPE』は企画・主演の樹(いつき)さんと監督の⼋⽊伶⾳さん共に⻑編初主演・初監督作となる映画ですが、どのようにオファーがあったのでしょうか。
芋⽣悠(以下、芋生) 最初は樹くんから連絡があって、脚本と一緒に、この作品でどういうことをしたいかという内容が書かれていました。『ROPE』はスタッフもキャストも同世代の子たちが多いんですが、初めての打ち合わせで「同世代で作っていくけど、そこにとどまらず、どこまでも連れて行けるような映画にしたい」と仰っていて、その言葉が頼もしいなと思いました。それに加えて、脚本が面白かったんですよね。不思議な言い回しや、独特な距離感・空気感があって、その中で切実に伝えたいこともあって、この現場は面白いだろうなと思い、ご一緒させていただきました。
――樹さんとは面識があったんですか。
芋生 お名前を聞いたことはあったんですが、今回が初めましてでした。
――どうして芋生さんに声をかけたんでしょうね。
芋生 どうしてでしょうね(笑)。八木さんと樹くんが二人で話していたときに、「今回の役は芋生さんがいいと思う」と言ってくれたと聞いています。
――一般的な青春映画とは一線を画していますよね。
芋生 主人公たちは、私よりも少し若いですが、現代の若い子たち特有の人との距離感みたいなものがあって、それが寂しくもあったんですよね。若い子たちの群像劇って、いろんな人と出会って、喧嘩したり、泣いたり、笑ったり、ぶつかり合いながら成長していくような物語をイメージするんですが、『ROPE』の脚本を読んだ印象だと、そういう群像劇とは違っていて。樹くんの演じた修⼆と、私の演じた翠は一定の距離感を保っているけど、そこに心地よさを感じて。その距離感があるからこそ、お互いのことを打ち明けられるのだろうし、その関係性がいいなと思いました。
――二人は自分のことを相手に分からせようとしないですよね。
芋生 不思議な関係ですよね。でもリアルに今ってそういう子たちが多いのかなと、なんとなく感じました。
――何に対しても無気力な修⼆の気持ちは理解できましたか?
芋生 正直、自分には理解しがたい部分もあるんですが、社会がそういうふうにさせているのかなと。本来は夢を持ちたかったはずなのに、社会全体がそうさせない状況にしているのかなと感じました。
――八木監督とはどのようなやりとりがあったのでしょうか。
芋生 監督はシャイな方で、いつも緊張しているんです(笑)。ただ樹くんとすごく仲が良いので、通訳さんみたいに樹くんが代わりに話していました。もちろん八木さん自身、たくさんの思いがあって、それは脚本に全て詰まっているんだろうなと思ったんです。だから脚本を何度も読み込んで、八木さんの思いを知ろうとしました。シャイだけど掘れば掘るほど面白い人ですし、それが脚本にも表れていました。
――映画は脚本に忠実でしたか?
芋生 映像になったものと、ほぼ同じ内容でした。唯一、私が出ているシーンでアドリブ的なものがあるとしたら、同居する親友・貴子(中尾有伽)の帰りを待って、翠が一人で家の掃除をするシーンです。脚本には「家を掃除したり、ごはんの用意をしたり、家事をしている」としか書かれていなかったんですが、「曲を流して踊りながら掃除をしていたらいいんじゃないか」と私から提案したら、八木さんが「実は自分もそう思っていて、曲はこれがいい」とロックな曲を流してもらって、それに合わせて家事をするという形になりました。