初めて舞台に挑戦したとき、たくさんのキラキラがあった
――新曲の「where you come from」は『映画おでかけ子ザメとかいのおともだち』の主題歌ですが、原作の『おでかけ子ザメ』を読んだときは、どんな印象を受けましたか。
ロザリーナ 「こんなに平和な世界があるのか」と思いながら読み進めていくうちに、主人公の子ザメちゃんの表情や行動に引き込まれて、その世界に入り込んでいくんですよね。どんどん続きを読みたくなる作品でした。映画で描かれているストーリーは原作で描かれているのですが、それと並行してYouTubeで公開しているアニメも全て観ました。
――主題歌を担当するにあたって、アニメ制作サイドから何かリクエストはありましたか?
ロザリーナ 配信アニメ版の主題歌「よりみち」はポップでキュートな歌と曲調で、前向きな歌詞なんですけど、今回の映画はそういう感じではなくて、ちょっとエモーショナルな曲というオーダーだったんです。あとストーリーの進行が、子ザメちゃん目線ではあるんですが、周りの人間たちの会話でストーリーが進んでいくので、いろんな人の目線プラス子ザメちゃんの目線も入れてほしいというオーダーがありました。ただ泣いて笑ってみたいな感情的なシーンがある訳ではないので、どれぐらいのエモみなんだろうと私なりに考えました。
――子ザメちゃんは人の言葉を喋らないですよね。
ロザリーナ そうなんです。だから子ザメちゃん目線って何だろうと思ったんですが、原作を読み進めていくと、子ザメちゃんの好みが、周りの人たちとの会話で分かってくるんですよね。それで子ザメちゃんに共感できる部分を探しました。子ザメちゃんは好きなものを見ると、目がキラキラするんですけど、それをキーワードに、私自身の生活で目がキラキラする部分を探しながら曲を書きました。
――どんなときに“キラキラ”を感じたのですか。
ロザリーナ ちょうど制作期間が、人生で初めて舞台に挑戦したタイミングで、稽古期間でもあったんです。子ザメちゃんは都会に対して目をキラキラさせていましたが、私は初めましての舞台にキラキラしていました。普段はソロアーティストとして、一人でステージに立ったり、一人で曲作りをしたりすることが多いんですが、みんなで稽古をして、同じステージに立つのが新鮮だったんです。役者さんたちと一緒に切磋琢磨して、みんなの思いも聞いて、初めて経験すること、刺激的なことがある中で、たくさんのキラキラがありました。
――以前から曲作りで、その時々の日常がリンクすることは多かったのでしょうか。
ロザリーナ 多いですね。できるだけ嘘を書きたくないというか、自分で本当に感じたことじゃないと人に説明できないじゃないですか。だから、なるべく経験した中で共感できること、伝えられることを歌詞にしようと心掛けています。
――たくさんのタイアップ曲を手掛けていると、共通点を見つけるのが難しいこともあるのではないでしょうか。
ロザリーナ ありますね。でも、どんなタイアップでも人が作っている訳じゃないですか。だから、この作品を通して何を伝えたかったんだろうというのを探したり、ストーリーの中に出てくる心に残るセリフだったりを書き留めていって、共通点を探して書いていくことが多いです。
――メロディーと歌詞だと、どちらが先に浮かぶことが多いですか。
ロザリーナ 曲に応じてバラバラですけど、基本的にはキーワードがポンポン頭の中に出てきて、「このキーワードだったら、曲調はこっち系かな」というのがやんわりと浮かんで、そこからパーッと広がっていくタイプなんです。メロディーと歌詞は同時進行みたいなことが多いかもしれないです。今回も「where you come from」というキーワードが降りてきたんですが、その時点でほぼ曲は完成したような感覚なんですよね。
――最初に「where you come from」を聴いたときのスタッフさんの反応はいかがでしたか。
ロザリーナ 子ザメちゃんのストーリー自体、あまりセリフもないから、人それぞれ見え方や捉え方が違うなと感じていて、私側のスタッフさんは「これはちょっとエモすぎるんじゃないですか?」という意見だったんです。「私の思う“エモい”ってこういう感じなんですよね」と説明をした上で、アニメ制作サイドの意見が返ってくるのを待っていたら、すごく気に入ってくださって。私のエモいは、アニメ制作サイドが考えていたエモいと合っていたんだと思います。