高橋怜也くんは、ずっと一緒に『テニミュ』シリーズをやってきた戦友
――いよいよミュージカル『新テニスの王子様』The Fifth Stageの東京凱旋公演が始まります。
今牧 今回の舞台は、越前リョーマ以外のキャラクターにスポットを当てた試合が続くので、他のキャストの方たちを見守る形で稽古に臨んでいました。僕も今年で『テニミュ』シリーズ出演5年目となり、おかげさまで先日400回目の公演を迎えました。この5年で自信もついたし、「貫禄が出たね」「存在感のある座長だね」と言ってもらえる機会も増えました。今回初めて『新テニミュ』に出演する方や初舞台の方にアドバイスできるようになったのは、自分の成長でもあるなと実感しました。ずっと見守ってもらうことのほうが多かったので、見守る立場になったことに自分でも驚いています。

――今牧さんから積極的にアドバイスすることもあるのですか。
今牧 基本的には聞かれた時にアドバイスをして、どうしても気になる時は自分から声をかけることもあります。ただ自分で解決策を見つけられそうな人には、あえて言わないようにしています。座長という立場ですし、洞察力や空気を読む力は自分の武器だと思っているので、その力は発揮できているのかなと。
――この5年間でスキル的な成長はもちろん、意識の面でも変化はありましたか。
今牧 良い意味で大きな変化はないですね。「常に謙虚で」と心掛けてきたので、自分がすごいとは思っていません。ただ心に余裕ができました。全力でやりつつ、力の抜きどころを見つけられるようになったんです。僕は性格的にすべてを一生懸命やってしまうところがあって、役に打ち込みすぎて体を壊すなど、悪い方向に作用することがあるんです。そうならないような加減を覚えました。
――越前リョーマというキャラクターにも成長は感じますか。
今牧 ずっとリョーマは強いんですけど、公演を重ねていくにつれて、テニスの技術面だけではなく、精神的にも強くなっていると思います。最初の頃は自分さえ勝てればいいというタイプの人間でしたが、今はチームメイトのことを大事に思っています。原作『新テニスの王子様』は『テニスの王子様』の後のお話ですが、かつてライバルだったキャラクターを「頑張れ」と心から応援するんですよね。今回の舞台で言うと、跡部景吾は過去に倒したライバルですが、励ましの言葉をかけるのはリョーマの成長だと思いますし、演じながら「大きくなったなぁ」と感慨深いものがあります。
――跡部景吾を演じる高橋怜也さんとは、どんな関係性ですか。
今牧 今回の舞台は跡部景吾の集大成とも言えますが、怜也くんは5年間、ずっと一緒に『テニミュ』シリーズをやってきた戦友です。楽しい時もしんどい時もずっと横にいましたから、誰よりも怜也くんのことを思っている自信があります。怜也くんも僕を信頼してくれていて、お互いに必要不可欠な存在でいられているなと実感します。

――出会って、すぐに仲良くなれたんですか。
今牧 最初から仲が良かったですね。初舞台の時に壁を取っ払った瞬間、生意気にもタメ口でした(笑)。一緒にいて落ち着くというか。隣にいればなんとかなるでしょう、みたいな。怜也くんも僕に安心感や信頼感を持ってくれているのは、5年間で培った関係性です。
――東京、大阪、岐阜と公演をしてきて、お客様の反応はいかがですか。
今牧 どこに行っても盛り上がりがすごいです。『テニミュ』シリーズ史上初だと思うんですが、全試合が約40分あるんです。今までは1試合15分から20分くらいだったので、40分は異例の長さです。決勝戦で今回やるのは3試合なんですが、少ないがゆえに一つひとつの試合が濃密に描かれていて、回想シーンも盛り込まれています。選手一人ひとりにもフォーカスが当てられていて見応えがありますね。
――リョーマの試合シーンもあるんですか。
今牧 兄・越前リョーガとの試合が少しだけあります。でも2人の父・南次郎が倒れて、試合が先延ばしになってしまうので、病院に付き添うために舞台上からもいなくなるんです。全試合が面白いからこそ、早く自分の試合をやりたくなります。ただ短い試合だからこその挑戦があって、今回は自分たちでラリーの動きを考える機会をいただいて。そこで今までの経験を大いに活かしました。試合時間で言ったら1分にも満たないんですが、その中でどれだけ『新テニミュ』らしさをお客さんに見せられるか。その1分に全体力を注ぎ込もうという気概で臨んでいます。
――今回の公演で、特に印象に残っていることは何ですか。
今牧 一幕と二幕の間に短いお芝居があって、大阪公演と岐阜公演に出演の手塚役の(手島)章斗くんと一緒に、初めて幕間を担当させていただきました。すごく楽しかったですけど、内容を考えるのが大変でしたね。キャラクターを守りすぎると、リョーマも手塚もクールなキャラクターなので、盛り上がりに欠けてしまうんです。だから、やり過ぎない程度に、ちょっとだけキャラクターをデフォルメしました。よくアニメのエンディング後とかに、二頭身のかわいいキャラクターが出てくるパートがあるじゃないですか。『テニプリ』のアニメにも、そういう回があるので、そのノリに近かったかもしれません。
