中学1年生のときにリアルタイムで観て衝撃を受けた『宇宙戦艦ヤマト』

――第1作目の『宇宙戦艦ヤマト』(1974)の思い出を教えてください。

山寺宏一(以下、山寺) 僕が中学1年生のときに始まったんですが、初回から毎回欠かさずリアルタイムで観ていました。当時は録画機能もなかったですし、再放送も簡単には放映されなかったですからね。どこかで噂を聞いて観始めたんですが、1話目から衝撃的でした。当時は大人向けのアニメも少なかったので、中学1年生にもなると、もうアニメを卒業してもいいかなぐらいの年齢だったんです。でもヤマトが始まって、学校でもその話題でもちきりでした。「地球の滅亡まであと〇〇日」というカウントダウンに、「やべえぞ」って危機感を持っていました。宮城県の田舎で、それぐらい夢中になって、最後まで一回も欠かさず観た記憶があります。

――中学生が観るには、やや難解なストーリーだったのではないでしょうか。

山寺 そうですね。大人が観ても面白い作品だったので、背伸びをする感覚で観ていたと思いますし、それまで観ていたアニメとは全然違うなと感じました。

――当時はどのキャラクターに惹かれましたか?

山寺 やはり主人公の古代進ですね。まだ声変わりしたかしないかぐらいの年齢でしたが、古代進を演じていた富山敬さんのモノマネで「雪~!」なんて叫んでね。緒方賢一さん演じるアナライザーも真似しましたが、さすがに伊武雅刀さん演じるデスラーの声は出ないなとか(笑)。

――デスラーの印象はいかがでしたか?

山寺 悪役なのにかっこいいと思いました。ちょっと恐ろしいんだけど、あの冷たさも良かったですし、何より伊武雅刀さんの声がめちゃくちゃ素敵でね。それまでのアニメで観てきた敵役で、デスラーのような魅力を感じたことはなかったんです。大抵、ロボットアニメの敵は「嫌な奴」っていう感じでしたから、子ども心に人間ドラマとして捉えていたんでしょうね、

――それが何十年も経って、ご自身がデスラーを演じることになるのは感慨深かったのではないでしょうか。

山寺 びっくりですよ。僕が敬さんのモノマネが好きだと聞きつけた方がいて、それが大きかったですね。

――富山さんと交流はあったのでしょうか。

山寺 何度か共演させていただいたことがあります。僕はアニメや映画の吹き替えで「富山敬さんだったらこう演じるんじゃないか」というのをよくやっていたんです。敬さんは多岐にわたる役を作っている感じもなく自然に演じられる、大好きで尊敬する先輩でした。演技力があるから、そこまで声色を変えなくてもハマるんですよね。ある作品の吹き替えで、いつものように「敬さんのイメージでやったら、この俳優さんの役にぴったりくるんじゃないか」ってやっていたんですよ。そしたら、その作品の主役が敬さんと後で知って、「どうしよう……」と困ったこともありましたね(笑)。スタッフさんからも「敬さんに似てない?」と指摘されましたしね。そりゃそうですよね。真似している訳ですから。

――プライベートでも富山さんと親交はありましたか?

山寺 仕事終わりに飲みに行くこともあったんですが、大勢いましたし、僕も若手だったので、緊張してなかなか話しかけられなかったです。とにかく優しい人でしたね。当時から「敬さんほど優しい人はいない」って後輩はもちろん、敬さんと同世代の方も仰っていました。厳しい先輩が多い中、敬さんは穏やかで、誰にでも優しくしてくれる稀有な存在でしたね。一度だけ二人でランチを食べたことがあるんですよ。赤坂のスタジオで休憩時間、パッと入ろうと思ったお店に敬さんがお一人でいらして。「山寺君、一緒に食べよう」と言ってくださって、二人きりで話したのは、そのときぐらいです。

――どんなお話をされたんですか?

山寺 「山寺くんはいいよ」と褒めてくださって。「僕なんかは二枚目をやるときに無理して構えてやらなきゃいけないけど、山寺くんはすっと二枚目の声ができて、三枚目もできるからいいよね」と。そのまんま敬さんに返したい言葉ですよ。天にも昇る気持ちで、今でも鮮明に覚えています。