意識が変わるきっかけになった映画『mellow』

――キャリアについてお伺いしたいんですが、この世界に入ったきっかけはお父さんだったそうですね。

岡崎紗絵(以下、岡崎) 家族で地元の飲食店でご飯を食べていたときに、いきなり父が女将さんに「紗絵はモデルになりたいんです」と言って。確かに興味はあったんですけど、両親に「モデルの世界に入りたい」とか「憧れている」みたいな話をした記憶がないんです。だから父の言葉に驚いて。そしたら女将さんの息子さんの同級生がカメラマンをやっているということで紹介されて、スタジオで撮影することになって。その写真を事務所に送ったのがデビューのきっかけです。

――モデルに興味はあったんですか?

岡崎 中学生の頃から、おしゃれに興味を持ち始めて、ファッション誌を見るようになって。「このモデルさんの、この服かわいい」ぐらいの感覚だったので、それをお仕事にしたいとまでは考えたことがなかったですね。

――事務所に入るときに一番興味があったのはモデルだったんですか?

岡崎 そうですね。毎月、ファッション誌を買っていたので、勝手に身近に感じていたんです。テレビに出るとか、お芝居をするとかは、違う世界なのかなと思っていました。

――2012年に『Seventeen』の専属モデルオーディション「ミスセブンティーン2012」に合格して、同誌の専属モデルになります。モデルのお仕事を始めたときは、どういう気持ちで撮影に臨んでいましたか。

岡崎 最初は緊張の連続で……。表情の練習から始まって、現場で先輩の動きなどを見て勉強していましたが、本当に難しくて。服やシチュエーションに応じて表情をコロコロ変えなきゃいけないし、「自分はモデルに向いている」なんて考える余裕もなくて必死でした。

――撮影現場の雰囲気には、すぐに馴染むことができましたか。

岡崎 同世代の子たちが集まるので、楽しくて学校みたいな雰囲気がありました。当時は地元の名古屋から通っていたので、お仕事という感覚よりは、学校や部活の延長みたいに思ってしまう部分もありましたね。

――お芝居に興味を持ったのは、いつぐらいのタイミングでしょうか。

岡崎 19歳から20歳になる間ぐらいに、映画『脳漿炸裂ガール』(15)に出させていただいて、その前から興味はあったんですけど、お芝居経験のない自分がやれるものではないと思っていました。そんな私にきっかけをくださって、お芝居に挑戦したんですが、最初は難し過ぎて、台本を読むのも不安で……。参加させていただいたのはありがたかったんですけど、何が何だか分からなくて怖かったです。ただ、学園もので同世代の子たちも多かったので、徐々に打ち解けていくと恐怖心も薄れていきました。監督も寄り添って、「頑張ろうね」と声をかけてくださったので、何とかやり切ることができました。その後もドラマと映画にコンスタントに出させていただいたんですけど、心から楽しいと思えることは少なくて。徐々に楽しい瞬間は増えていったんですけど、難しいなと悩むことのほうが多かったです。

――俳優としてターニングポイントになった作品は何でしょうか。

岡崎 意識が変わるきっかけになったのは映画『mellow』(20)です。

――『mellow』では父親のラーメン店を継いだヒロイン古川木帆を演じていますが、自然な演技が印象に残っています。

岡崎 映画ならではの空気感みたいなのが流れていて、みんなで一緒に作品を作って、自分も作品の一部なんだとダイレクトに実感できた現場でした。

――今泉力哉監督の演出はいかがでしたか。

岡崎 一緒に悩んでくれる優しい監督です。俳優ファーストというか、私たちが動きやすいように考えてくださいますし、一方で違うところはちゃんと違うって柔らかい言葉で伝えてくださるんです。その現場自体がメロウな雰囲気だったので、私もはっきりスイッチを入れることなく、自然と演じさせていただけたのは、そういう空気を今泉監督が作ってくださったからだと思います。