自分と向き合うきっかけになる映画になれば

――岡崎さん自身、ご兄妹はいらっしゃるんですか?

岡崎 妹がいます。

――では菜穂子に共感する部分もありましたか?

岡崎 お姉ちゃんに憧れているからこそ、お姉ちゃんと仲良くしている妹への嫉妬みたいなものは、この作品とは方向性が違いますけど、分かる部分はあります。菜穂子はお姉ちゃんにとっての一番になりたいはずだけど、お姉ちゃんは杏奈のことを気にかけている。確かに嫉妬はしてしまうんですけど、でも自分の妹でもあるしというところから、少しずつ菜穂子の中で成長みたいなのもあって。ただ嫉妬で終わる訳ではなくて、そういう面も丁寧に描かれていて、人間味がある作品だなと思いました。

――歳が離れていると、妹のことがかわいくてしょうがないんじゃないですか。

岡崎 そう思いますよね?でも、そんなこともないです(笑)。仲良しなんですけど、ケンカもしますしね。

――今も妹さんとはよく会うんですか?

岡崎 頻繁ではないですけど会います。ちょうど妹が就職ぐらいの年齢なんですよね。私は19歳で上京して、ずっと一緒にいた訳ではないので、知らないうちに就活をしていて、「もう、そんな歳になったのか」という感動もあって、親みたいな心境です(笑)。

――完成した映画を見て、どんな印象を受けましたか。

岡崎 (脚本の)文字で見るよりも、登場人物の心の動きがよく分かる作品になっているなと思いました。心と心が静かに、複雑に絡んで動いていくところも面白かったですし、全体を通してすごく繊細で儚い印象を受けました。

――改めて映画の見どころをお聞かせください。

岡崎 三姉妹が抱えている傷や踏み込みにくい問題は三者三様ですが、異母姉妹だからこそ繋がっている部分もあって、そこがまた複雑なんですけど、映画の中で「葉脈」という言葉が出てくるんです。3人が持っているしおりがあって、この作品のキーポイントになっているんですが、「枝分かれしているけど、辿れば一つ」という意味合いが込められていて。タイプの違う三姉妹の悩みや心の揺れ動きを見て、自分と向き合うきっかけになる映画になればうれしいです。

Information

『緑のざわめき』
9月1日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

出演:松井玲奈 岡崎紗絵 倉島颯良
草川直弥(ONE N’ ONLY) 川添野愛 松林うらら 林裕太
カトウシンスケ 黒沢あすか

監督・脚本:夏都愛未
プロデューサー:杉山晴香 / 江守徹
撮影:村松良 照明:加藤大輝 音楽:渡辺雄司
配給:S・D・P 製作:「緑のざわめき」製作委員会
2023年/日本/カラー/4:3/Stereo/115分 ©Saga Saga Film Partners
文化庁「ARTS for the future!2」補助対象事業

過去の痴漢被害のトラウマを抱えて生きてきた響子(松井玲奈)は、病を機に女優を辞め、東京から生まれ故郷のある九州に移住しようと福岡にやってきて、元カレの宗太郎(草川直弥)と再会する。異母姉の響子と繋がりたいと、彼女をストーカーする菜穂子(岡崎紗絵)は、異母姉妹ということは隠し、響子と知り合いに。施設に預けられていて、8年前から佐賀県嬉野で叔母の芙美子(黒沢あすか)と暮らす高校3年生の杏奈(倉島颯良)は、自分宛の手紙を勝手に読んだ叔母に不信感を募らせていた。「まずは話してみませんか?」という支援センターの広告を見て、身元もわからない菜穂子からの電話に、悩みを打ち明け始める。同じ頃、杏奈に思いを寄せる透(林裕太)は、杏奈とうまくいくよう、集落の長老・コガ爺(カトウシンスケ)に相談しに行っていた……。就職活動がうまくいかない中、 地元・嬉野に戻り、親友の保奈美(松林うらら)に就職の相談をする響子は、ひょんなことから自分と杏奈が異母姉妹ということを知ってしまう。菜穂子は、宗太郎に恋焦がれる絵里(川添野愛)等いつもの女子会メンバーとの旅先を嬉野に決め……。

公式サイト

Twitter

岡崎紗絵

1995年11月2日生まれ。愛知県出身。2015年より俳優として実績を重ね、代表作ではドラマ「教場Ⅱ」、「ナイトドクター」、「オールドルーキー」等、話題作に出演。「花嫁未満エスケープ」では主演を務めた。映画では、今泉力哉監督の恋愛群像劇『mellow』(20)でヒロイン役を好演。近年の出演作に『名も無い日』(21)、『シノノメ色の週末』(21)がある。

PHOTOGRAPHER:TOSHIMASA TAKEDA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:CHIAKI SAIO(Lila),STYLIST:YURINA INABA(KIND)