全ての経験を活かすために、必死に生きてきた
――ロスに行った当初はレッスンについていくのも大変だったんじゃないですか。
shoji ですね。僕は大学のサークルでダンスを始めたので、独学に近い状態だったんです。大学時代はお金もなかったので、ダンスレッスンに行ってきた友達から、外で振り付けを教えてもらっていました。そういう覚え方をしていたので、アメリカに行って受けた90分のレッスンで、大量の振り付けを覚えることができませんでした。しかも僕がロスに行った時点で、3人はイケイケだったので、「ついにs**t kingzのリーダーが来るぞ」と最後のヒーロー登場みたいな注目をされていたんです。でも実際にレッスンが始まると、とにかく僕だけ振りを覚えられない(笑)。
――すでにs**t kingzの名前は知れ渡っていたってことですか。
shoji 3人はレッスンを受けていく中で、アメリカの有名なダンサーたちと仲良くなって、一緒に踊ったレッスン動画をYouTubeに上げていたので、「こいつらすごいぞ」みたいなことになっていました。そのおかげでs**t kingzという名前をアメリカでも知ってもらえて、「イベントに出ないか」「コンテストに出ないか」みたいなお話をいただいていました。
――そんな状況で、shojiさんだけ後れを取ってしまったと。
shoji レッスンの最後に上手い生徒が選ばれて映像を撮るときも、3人だけ呼ばれて、「君はいいよ」と言われたり。そういうことが毎日のように続いたので、後半はレッスンに行くのも苦痛で、「俺は何をしにアメリカに来たんだろう……」という後悔もありました。そんなときに素敵な出会いがあって、ジャファー・スミスというめちゃめちゃかっこいいダンサーの方なんですけど、ずっと笑顔で、大声を出して楽しそうにレッスンをするんです。その人のレッスンに出るときだけは、ダンスが楽しかったんですよね。僕も日本に帰ったら、こういう人になろうと。僕のようにダンスが好きだったはずなのに、嫌いになりそうなダンサーがいたとして、僕のレッスンを受けたり、僕と一緒に踊ったりしたとき、ダンスが楽しいと思ってもらえるような人になりたいって思ったんです。その方と出会えたから、今までダンスを続けこられたのかなと思います。
――帰国後、すぐにレッスンを持つことはできたんですか。
shoji なかなか自分のレッスンを持つことはできなかったです。他のメンバーがやっていたレッスンがあって。振り付けやツアーなど、仕事の都合でできないときは、代行の先生として僕がレッスンに行って。そこで「今日もみんなで踊っていこう!楽しもうね!」と大声を出してやっていました。独学でダンスをやってきたから、教えられる技術なんてなかったんですけど、ダンスの楽しさなら教えられると思ってやっていましたね。当時はダンスを通して自分の立ち位置を必死に探していた時期でした。
――レッスン以外の仕事はいかがだったんですか。
shoji 3人は本当に忙しかったと思います。たとえばBoAちゃんのツアーにkazukiとOguriがバックダンサーとして参加して、NOPPOは振付師として入っている。僕だけ何も関わっていなかったんですよ。3人はしょっちゅう一緒に仕事をしているのに、僕はいなくてもいいみたいな。そういうことが頻繁にあった時期もあったんですけど、アメリカ留学のときにもっと辛い経験を味わったので、意外とそういう環境に慣れていたのかなと思います。
――そんな中で、どうしてs**t kingzのリーダーになったんですか。
shoji 年齢がみんなより上だからです(笑)。あと僕が仕事を辞めて、3年ほどs**t kingzの活動をした後に、会社を立ち上げようということになって。今後s**t kingzをどうやって大きくしていくかを考えたときに、僕は唯一サラリーマン経験があるので、いろんな繋がりを作っていくことは自分にもできるなと。それで社長という役職を僕がやって、そういう流れもあったからリーダーという立ち位置になったんです。
――サラリーマン経験が役立ったんですね。
shoji その経験がなかったら、起業していなかったと思います。そもそも僕は自分が経験してきたことを、ネガティブな方向に意味づけるのが嫌なんです。運動神経が悪いのも、プロのダンサーになったら、もはやネタじゃないですか。サラリーマンをやっていた2年間って満足に踊ることもできなかったんですけど、その時間を無駄なことにするのは絶対に嫌なんです。その経験を意味のあるものにするためにも、「会社員をやっていたせいでダンスのテクニックが落ちた」ではなくて、「あの時期があったからこそ、s**t kingzをさらに大きい形にできたよね」と考えるんです。そういう生き方、考え方をしていくって若い時点で決めたので、全ての経験を活かすために、必死に生きてきたところもあります。