ただただお客さんに楽しんでもらうショーをするのが変わらないコンセプト

――s**t kingzを組んだ時点で、長く活動していこうという気持ちはあったんですか。

Oguri まずは1回、チームじゃなくてユニットでパフォーマンスしようというところから始まりました。当時、ユニットを組むのが流行っていたので、その中の一つという感じでしたね。長く続くとは思っていなかったし、チームだと決め付けて気負うのが嫌だったんですよね。でも、この4人で初めて踊ったときに、すごくスペシャル感を感じたんです。気も合うし、踊りも楽しかったし、1回だけじゃもったいないから、もう1回くらいやってみようということで、どんどん続いていって、気づいたら「もうチームだね」みたいな。長続きしないチームは多いですけど、先輩方には10年20年と続いている人たちもいるので、憧れはありましたし、こうして15年経った今も続いているのはうれしいことです。

――最初から気が合ったということですが、長く続けられている秘訣はありますか。

Oguri いろんな山を一緒に乗り超えて、自然と生まれる結束力があって。だから家族に近いというか、時と場合によっては家族よりも長い時間会っていますからね。かと言って、ずっと一緒にいる訳ではなくて、プライベートはバラバラだし、程よい距離感が上手くいくポイントかもしれません。

――先ほど海外でのワークショップのお話がありましたが、早くから海外からのリアクションはあったんですか。

Oguri ちょうどYouTubeが広がり始めたときで、YouTubeで見たダンサーのレッスンを受けに、s**t kingzのメンバーとアメリカに行ったりしていた時期で。自分たちもYouTubeに動画を上げていたら、海外の人が発見してくれて、ワークショップに呼んでくれたんですよね。最近、自分よりも若い海外のダンサーがワークショップのために日本に来て、それを受けに行ったんですよ。そしたら彼が10代だった頃、YouTubeで俺らの動画をめちゃめちゃ見ていたらしくて、「s**t kingzだ!僕にとって特別な存在です」と言ってくれて、不思議な感覚でした。

――海外への発信は意識的に考えていたんですか。

Oguri そこまで深くは考えてなくて。まだYouTubeの影響力も今ほどではなかったんですけど、いろんな人にs**t kingzを見てほしいという思いが強くて。海外のダンサーがYouTubeに動画を上げていたので、それを真似したという感じです。

――s**t kingzのパフォーマンスは芝居のようなドラマ性を感じますが、結成当初から多彩な表現方法にこだわっていたのでしょうか。

Oguri 初めてユニットとしてショーをしたときから、他のダンスチームがやってないようなスタイルでやりたいというのが共通認識で、そのときにアメリカで流行り始めていたのがストーリー味のあるパフォーマンスだったんです。もちろん、その前からストーリー味のあるパフォーマンスはあったんですけど、ジャズダンスやバレエなど、綺麗なダンスが主流でした。ところが当時アメリカで流行っていたのは、ヒップホップやストリートダンスをベースにストーリーを表現することで、それがすごく新鮮だったんです。そういう表現を自分たちでもやっていきたいけど、ただの真似事になってしまうのは違う。だったら、それまで培ってきたスキルや、自分たちのバックグラウンドを上手く今の流行りに混ぜようと。そんなことを考えていた時期に、たまたま大学の授業で『雨に唄えば』(1952)という映画を観たんです。それが衝撃的だったので、みんなにも見せて、こういうダンスがあるんだと。そこからクラシカルなものにも興味を持ち始めて、いろんな要素がミックスされていって、ちょっとずつs**t kingzらしさが確立されていきました。

――s**t kingzで国内のダンスコンテストに出るという選択肢は当初からなかったんですか。

Oguri 4人ともバトルで戦うというタイプのダンサーではなかったんですよね。その前にkazukiはたくさんのコンテストに出ていたんですけど、争うためにダンスの練習をすることに疲れたと言ってて。それをやりたくないから、この4人を集めたところもあったんです。だから、ただただお客さんに楽しんでもらうショーをするのが俺らの変わらないコンセプトですね。