みんなで一緒になって正解を作っていくことのできた現場
――中島監督はゾンビ映画で好きな作品は何ですか?
中島 やっぱりジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968)と『ゾンビ』(1978)は好きですし、『28日後…』(2002)や『バイオハザード』シリーズも好きです。
中村 私も『バイオハザード』がきっかけでゾンビ映画が好きになりました。主人公のミラ・ジョヴォヴィッチみたいに強い女性になりたいなと(笑)。今回、私が演じたリカも強い女性だったのでうれしかったです。
中島 最近だと韓国のゾンビ映画が迫真の演技で熱いですよね。
中村 『#生きている』(2020)とか良かったです。
――真山さんはいかがですか。
真山 私は怖いのが苦手なんです……。なので27年間、ゾンビに限らず、全くホラーを見ない人生で、大好きなアニメも怖すぎる作品は避けています。でも『死が美しいなんて誰が言った』は、ホラーの要素もありつつ、ゾンビを美しく描いているので、すごく見やすかったですし、ゾンビ初心者でもオススメです。
――真山さん演じるユウナが、とある場所に囚われていく描写は、かなりグロかったですよね。
真山 どんな気持ちでユウナが囚われているのかという視点で見ていたので怖さよりも美しさを感じました。
中村 光が差し込んでいて綺麗だったよね。
――造形やビジュアル面では、どんなことを意識したのでしょうか。
中島 スタッフもアニメ出身者ではなくて実写畑なので、試行錯誤を繰り返しながら、だんだんと発見していくみたいなことが多くて。今お話に出たシーンも、何となくのアイデアはあったんですけど、たまたま肉塊を作ったスタッフがいて。それを壁に貼っていったら、「かっこいいぞ!」と。それで光を入れてみようみたいな流れでできた造形でした。
――アフレコはどのように進めていったのでしょうか。
中村 一人ずつ録ったんですが、モーションアクターの方の声を聞いて、それを基にキャラクターの表情や動きに合わせて声を乗せて、一つひとつ監督と話し合いながら録っていきました。監督から「こういう温度感でやってみたらどう?」みたいな感じで丁寧な指示があったので、私はアニメのアフレコ自体が初めてだったんですけど、スムーズに録れた記憶があります。
――どんな役作りをしましたか。
中村 リカは正義感が強くて、意志を曲げない女性なので、そこを大事にしました。また主人公のレイがどちらかというと受身なので、彼を引っ張って成長させる役割でもあるなと。そういう関係性も考えつつ、監督と相談しながら声の調整をして。監督は私の声を知っていたので、監督の考えるリカのイメージがあったみたいなんです。そこに私も助けられて、役に入り込みやすかったです。
中島 レイを守りたいという気持ちが声に出過ぎると、お母さんみたいに見えちゃうんですよね。それにリカの中には、もう自分は死ぬだろうという諦めみたいなものもあって、その感情を表現してくださいとお願いしたら、イメージ以上の声にしてくださいました。
――声だけで表現する難しさは感じましたか?
中村 実際に体を動かすわけではないので、頭の中でイメトレしながら、息遣いまで表現するのは難しかったです。今回、すごく勉強になったので、また機会があったら挑戦したいです。
――真山さんはいかがでしたか。
真山 モーションアクターの方の声を聞きながら、それに合わせて台本を読んで、自分の表現で喋っていくという作業は、普段、私はアイドルをやっているので歌のレコーディングに近いなと感じました。
――モーションアクターの方の声が、曲のデモみたいな役割を果たしたんですね。
真山 だからアフレコの緊張みたいなものが、いつもよりもなかったです。ただユウナは子どもなので、どんな声を出すんだろうという悩みがありました。でも監督が、そこはあまり気にせずに、自分で作ってきたものを大切にしてくださいと仰ってくださいました。それで自分のイメージしたユウナを演じたら、「ちょっと芯が強いね」とご指摘をいただいたので、微調整を行いました。
中島 真山さんは最初からパチッ!てキメてきたんですよ。すごく上手かったんですけど、もうちょっと僕のイメージしたユウナに寄せていただいて。
真山 監督とのセッションというか、話し合いながら、ちょっとずつ正解を作っていけたのかなって思います。
中島 画像生成AIならではの利点として、声を録ってから、それに合わせてキャラクターの表情を変えるなど、柔軟に変更することもできるんです。普通のアニメは絵が決まっているから、そこに合わせるという判断になると思うんですけど、そうじゃなくて、役者さんのお芝居が、作り手側にも帰ってきて、変更を加えられる。お二人とも素晴らしいご提案をしてくださったので、アフレコ後に変更したシーンが幾つもあります。