俳優もスタッフさんも泊まる施設が一緒で裸の付き合いができた

――初めて『SOMEDAYS』の脚本を読んだときの感想からお聞かせください。

本田剛文(以下、本田) 僕たちが演じる5人組ヒップホップ・グループ「SOMEDAYS」のメンバーは養護施設出身ですが、自分自身が経験したことのない境遇で、理解が薄い部分があったので、不安を感じました。その一方で歌って踊るグループの物語で、そこは僕たちとシンクロするので、自分が知っている世界と、知らない世界が両方あって、ドキドキとワクワクを感じました。

――本田さん演じる洋介には、どんな印象を抱きましたか。

本田 僕よりも繊細で、脆さがあって、いまいち自分のことが好きになりきれていないセンシティブな役柄。だから自分と共通する部分は少なかったんですけど、その分、この役を愛してやりたい。洋介の良いところをいっぱい見つけて演じられたらいいなと思いました。

辻本達規(以下、辻本) 僕の演じた良太は自分に近いところが多かったんですけど、養護施設出身というコンプレックスは、僕らが考えるよりも根深いものだろうなと思いましたし、そこに対する難しさや不安は、現場に入ってからも感じていました。ただ撮影期間中は、俳優もスタッフさんも泊まる施設が一緒だったので、曽根剛監督と一緒にお風呂に入りながら、その辺の質問をさせてもらいました。

――まさに裸の付き合いですね。

辻本 そうなんです。温浴施設だったので、露天風呂を始め、いろいろなお風呂やサウナがあって、平松、辻本、曽根監督でサウナにも入りました。そういった話し合いがストレスなくできたので、徐々に脚本に対する不安はなくなっていきました。

――勇翔さんは主演ですが、プレッシャーも大きかったのではないでしょうか。

勇翔 そこまで主演をやる機会が多くはないので、どうやって良い作品にしていこうか考えました。ただ撮影前日に、別の作品の舞台挨拶があって、共演した市原隼人さんに「明日から映画の撮影なんですけど、僕が主演なんです」って相談したら、いろいろなアドバイスをいただいて、それを胸に主演としての意識を持って撮影に臨みました。

――たとえば、どんなアドバイスがあったのでしょうか。

勇翔 「自分が演じるキャラクターの気持ちを伝えるのも大事だけど、相手のキャラクターを作り上げるのも自分のお芝居」ということを仰っていて。その言葉の通り、自分の中で役を完成させるだけではなくて、しっかりと相手に気持ちを届けて、リアクションを引き出すことを意識しました。

――勇人と共通する部分はありましたか?

勇翔 脚本を読んだときに、似ているなって思いました。勇人は幼い頃にお母さんと別れてしまいますが、僕自身、子どもの頃から仕事で親がほとんど家にいない状態で。賑やかな家庭ではなかったので、勇人と通じるところが多くて。だからキャラクターを作り上げる作業は、すんなりできました。

平松賢人(以下、平松) 初めて脚本を読んだときに、養護施設がどんな場所なのか、そこで育ったらどういう人間になるのか、想像を膨らませながら役を作らないといけないなと気が引き締まりました。SOMEDAYSのメンバーは親がいない状況の中、養護施設で仲間たちができて、それこそ家族みたいな存在になって。その絆は相当強いんだろうなと思いました。そこは僕たちも13年グループとしてやってきているので、メンバーは家族みたいな存在だし、そこはリンクしているのかなと。実際、現場に入ってからも、阿吽の呼吸があるなと感じましたし、もちろんお芝居はしているんですけど、お互いナチュラルに演じられたのは良かったです。

――メンバーとは家族よりも一緒にいる時間が長いですよね。

平松 これだけ現場で一緒にいると、家族よりも長くいると思いますし、僕に関してはまだ実家暮らしをしているので親と顔を合わせる機会も多いですけど、勇翔、辻本の家族は愛知と違う場所に住んでいるから、圧倒的にメンバーといる時間のほうが長いんじゃないですかね。

辻本 僕と勇翔は18歳で名古屋に出て来ていますからね。

勇翔 家族と会うのは一年に一回あるかどうかです。

辻本 長野でライブをやるときは、いつも勇翔のお母さんが観に来てくれるよね。

本田 勇翔のお母さんは長野から、いろんな種類のおやきを持って来てくれるんです。

勇翔 そばのときもあるよね(笑)。

本田 おそらく勇翔のお母さんと会う頻度は、僕らと勇翔で、そんなに変わらないです(笑)。

辻本 俺と勇翔と、勇翔の母さんで、長野で一緒にご飯に行ったことがあるよね。お酒も飲んで。

本田 長野ロケのときだ。

辻本 こんなに会わへん親子の水入らずの時間に、俺が行っていいのかって迷ったよ(笑)。

本田 確かにね。親子が会うのは貴重な機会ではあるから。

辻本 お母さんに「ぜひぜひ来てください」って言われたから行ったけど。

――辻本さんは、よくご家族に会うんですか?

辻本 僕は岐阜で、そこまで遠くないから、愛犬のハチローに会いに行くついでに実家にも寄ります。たまに外で飼われているハチローにだけ会って、家に入らんこともあります(笑)。親には「来とったんなら入ってよ」って言われますけどね。そもそも岐阜が大好きなので、時間ができたら帰ります。

本田 達規の家族も、よくライブに来てくださるんですけど、達規のお母さんは最中を差し入れしてくれるんです。

辻本 僕の地元・大垣の名物で、だるまの形をした「起き上り最中」を差し入れしてくれるんです。その最中には、ことわざの「七転び八起き」にちなんだ深いメッセージがあって。

本田 何度でも立ち上がれというね(笑)。

辻本 それが家族からのメッセージだとしたら、「やかましいわ!」と思うけどね(笑)。