二人は役柄に真摯に向き合い、いろいろな提案をしてくれた
――監督から見たお二人の印象はいかがでしたか
中島 役柄に真摯に向き合ってくれますし、今お話しした通り、いろいろな提案をしてくださったのがうれしかったです。個人的に「僕が言うことを表現してください」というよりも、「私だったら、こういう表現をします」って役者さんから言っていただくのが大好きで。そういう芯の強さがお二人にはあって、すごく楽しかったです。それによってキャラクターの新しい側面が出てきますからね。たとえばリカなら、強い女性だけど、実はこういう表情もするよねみたいなのが中村さんの声から感じられて、それによって絵の表情も変えることができました。
中村 監督とのコミュニケーションはスムーズでした。お互いに伝えたいことが察知できるというか。台本に書かれていることを、そのままやるのとは違って、自分が用意してきたものを役に被せたら、それに対して監督は寄り添って理解してくれるんです。
真山 印象的だったのが、ユウナが長台詞を言うシーンで、淡々とした喋り方だと単調になってしまうから、そこに笑いを入れてみようかと監督が指導してくださって。そのときに私は竹中直人さんの、笑いながら怒る人をイメージしたんです(笑)。
中島 よく知っていますね(笑)。
真山 確かにそう演じたら、自分でもユウナのキャラクターが活きてくるなと感じて。監督と一緒に導き出せたというか。すごく安心感のあるアフレコだったんですが、それも監督の人柄のおかげですね。
――どうして今回、プロの声優さんを起用しなかったのでしょうか。
中島 実写の人たちでアニメをやるというのが前提としてあったので、声優さんもそうしたかったんですよね。僕は実写ドラマでプロの声優さんに出てもらったこともあるので、間近で声優さんのお芝居は見たことがありますし、声に色があってすごさも分かっています。ただ今回のように実写っぽいアニメのスタイルには俳優さんが良いなと。声のお芝居ですけど、表情が見えてくるようなものを求めていて、今回出演していただいた方々は、それを上手く表現してくださいました。
――最後に改めて監督から『死が美しいなんて誰がいった』の見どころをお聞かせください。
中島 演劇のように長いセリフの熱い掛け合いもあって、キャスト4人の命を振り絞るようなお芝居が大きな見どころです。重たい映画かと思いきや、アクションシーンも満載で、最後は怪獣も出てくるという少年の夢が詰まったエンタメで、いろいろなクリエイターも集結した作品なので、ぜひ映画館まで足を運んでください。
Information
『死が美しいなんて誰が言った』
2023年12月22日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋HUMAXシネマズ他、全国順次公開
出演:長江崚行、中村ゆりか、真山りか、山田ジェームス武
監督:中島良 脚本:都築隆広・本庄麗子 キャラクターデザイン:六角桂・横井三歩
主題歌:ももんぬ「記憶」 音楽:清川進也 モーションアクター:劇団一の会
製作:合同会社ズーパーズース 配給:トリプルアップ
Ⓒズーパーズース
ゾンビウイルスが全国を覆い尽くした日本。政府は治療可能な感染者だけを病院に送り込んだ。ウイルスに侵されている研修医のリカ(中村ゆりか)は、16歳で天才詩人のレイ(長江崚行)と妹のユウナ(真山りか)の看病をしていた。ある日、ユウナの症状が悪化し、ゾンビ化して暴れ出してしまう。リカとレイは恐怖と混乱に包まれた病院を逃れる。リカは生きる希望を見出すため、海外へ逃げることを密航斡旋業者のタキシバ(山田ジェームス武)とともに提案するが、レイは故郷の家に帰ることに拘っていた。そしてレイの家にたどり着くのだが、そこで変わり果てた姿の妹から悲しい告白を受ける。絶望的な世界の中で、彼らは生きることへの希望を見出せるのか!?
中村ゆりか
1997年3月4日生まれ。神奈川県出身。2011年「5windows」で主演デビュー。2014年放送のTBS系ドラマ「家族狩り」や2015年放送のNHK朝ドラ「まれ」への出演で注目を集める。近年の作品では、映画『ラーメン食いてぇ!』(主演・2018年)21年公開映画『賭ケグルイ』。ドラマFOD×CX「花にけだもの」(主演・2018年)、「ギルティ」(2020年)、初挑戦のアクションドラマKTV「エージェントファミリー~我が家の特殊任務~」(主演・2021年)「部長と社畜の恋はもどかしい」(主演)、TX「チェイサーゲームW」(W主演)2024年1月放送。2022年11月にシングル「浮ついたHeart」で、念願の歌手デビュー。現在、アルバム『Moonlight』が発売中。
中島良
1983年4月30日生まれ。山梨県出身。2007年、長編自主映画『俺たちの世界』が第29回ぴあフィルムフェスティバルにて審査員特別賞を含む3賞を受賞し、バンクーバー国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭など海外の映画祭多数に招待され、2008年ニューヨーク・アジア映画祭で最優秀新人賞を受賞。2009年『RISE UP』にて商業映画デビュー。主な監督作品として、『RISE UP』(2009)、『スイッチを押すとき』(2011)、『俺たちの明日』(2013)、『サムライ・ロック』(2015)、『なつやすみの巨匠』(2015)、『兄友』(2018)、『アパレル・デザイナー』(2020)などがある。モーキャプスタジオ『アインス』を運営。
PHOTOGRAPHER:TOSHIMASA TAKEDA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI