舞台は全身を見られるので、指先までしっかり自分の意思を通しておかなきゃいけない

――百瀬さんは、どのように俳優活動を再開したんですか?

百瀬 高校時代、東京の事務所を受けて入ることになりました。なので最初の一年間ぐらいは地元から東京に通いだったんですけど、たくさん仕事があるわけでもなく、週末になると学校終わりに新幹線に乗って東京までオーディションを受けに行って、日曜日に家に帰って翌日は学校に行くみたいな生活でした。部活もやっていたので、我ながらよくやってたなと思います。

――ご家族は俳優活動に賛成だったんですか。

百瀬 そもそも入りが母親だったので賛成でしたし、家族全員ミーハーなので応援してくれています。父親と兄貴はマンガやアニメが大好きなので、大阪で2.5次元の舞台に出るときは観に来てくれるし、原作について相談することもあります。

――上京するときに俳優一本でやるという選択肢はなかったんですか。

百瀬 僕は関西の学校を中学受験して、そこが大学まで一貫校だったので、高校を卒業して辞めるのはもったいないなという気持ちがありました。でも上京したかったので親に相談したら、ちゃんと大学は通いなさいということで、明治大学で演劇学を専攻しました。

――久具さんの家族も、俳優活動は賛成だったんですか。

久具 そうですね。ただ僕の親も同じく、「せめて大学には行ってくれ」というのがあったので、地元の大学に入ったんです。それ以外は基本反対もなく、今も応援してくれています。

――舞台ならではのやりがいは、どんなときに感じますか。

百瀬 映像作品と違って、準備期間が長いので、より深く作品を理解できるのが楽しいですね。特に今回の舞台は2本分のボリュームがあるので、すごくやりがいがあります。

久具 舞台は基本、全身を見られるので、指先までしっかり自分の意思を通しておかなきゃいけないみたいなところは俳優の仕事としての究極さを求められているという気がしていて。お客さんはどこを観ているか分からないし、100人いたら100人違うところを観ている可能性もあるので、「気を抜いてる」と思われないように、常に集中力を高めていかなきゃいけないところにやりがいを感じます。毎日、何時間もかけて稽古をするのも舞台ならではだと思いますし、どんどん役者としてスキルアップできる環境も素晴らしいですし、何よりもカーテンコールでのお客様の拍手は、この仕事をやってて良かったと思える瞬間です。

――最後に今年の抱負をお聞かせください。

百瀬 今年7月で30歳になるので、一つの節目かなと思うんです。そんな年に、去年12月から今回の舞台稽古をさせてもらって、すごくやりたい作品だったので、幸先が良いなというのがあって。30歳に向けて、仕事もプライベートも充実させていきたいです。

久具 僕は今31歳なんですが、30歳はあまり僕の中で仕事を決められなかった一年で。たくさんオーディションに行かせてもらえるようになったんですけど、なかなか自分でチャンスを掴めなくて悔しい思いをしました。でも30歳の間に今回の舞台が決まって、今年に入って、この後に別の舞台も決まったので、このまま上手いこと仕事を繋いでいきたいですね。

Information

『インヘリタンス-継承-』
【東京公演】
日時:2月11日(日祝)~2月24日(土)
場所:東京芸術劇場 プレイハウス

【大阪公演】
日時:3月2日(土) 前篇12:00 後篇17:00
場所:森ノ宮ピロティホール

【北九州公演】
日時:3月9日(土) 前篇13:00 後篇18:00
場所:J:COM北九州芸術劇場 中劇場

福士誠治 田中俊介 新原泰佑 
柾木玲弥 百瀬朔 野村祐希 佐藤峻輔 
久具巨林 山本直寛 山森大輔 岩瀬亮 
篠井英介/山路和弘/麻実れい(後篇のみ)

作:マシュー・ロペス
E・M・フォースターの小説『ハワーズ・エンド』に着想を得る。
訳:早船歌江子
ドラマターグ:田丸一宏
演出:熊林弘高

【 前 篇 】
エリック(福士誠治)と劇作家のトビー(田中俊介)、初老の不動産王ヘンリー(山路和弘)とそのパートナーのウォルター(篠井英介)の2組のカップルを中心に物語は展開する。ウォルターは「田舎の家をエリックに託す」と遺言して病死する。トビーの自伝的小説がヒットしてブロードウェイで上演されることになるが、その主役に抜擢された美しい青年アダム(新原泰佑)の出現により、エリックとトビーの仲は破たんする。しかしトビーはアダムにふられ、彼にそっくりのレオ(新原泰佑 二役)を恋人にする。一方、リベラルと保守の両極のようなエリックとヘンリーが、ふとしたことから心通わせる。エリックは、ウォルターの遺言の「田舎の家」が、エイズで死期の近い男たちの看取りの家となっていることを知る。

【 後 篇 】
エリックとヘンリーが結婚することになり、ジャスパー(柾木玲弥)ら古い友人たちとの間に溝ができる。結婚式に、トビーがレオを伴って現れる。レオを見て顔色を変えるヘンリー。トビーは式をぶち壊して失踪する。トビーに捨てられHIVに感染し行き場をなくしていたレオをアダムとエリックが救う。 レオを「田舎の家」に連れて行くと、そこには男たちに寄り添い続けたマーガレット(麻実れい)がいて、この家で起ったことを語り始める……。ウォルターの遺志を継ぐ決心をするエリック。レオは彼らの物語を書き残していく。

公式サイト

百瀬朔

1994年7月8日生まれ。兵庫県出身。2013年にドラマ『仮面ライダー鎧武』(EX系)でペコ役として抜擢され本格的に俳優活動を開始。その後映画、ドラマ、舞台に多数出演。近年の主な出演作に、【映画】『映像研には手を出すな!』(20)、『まっ白の闇』主演(17)【ドラマ】『闇金ウシジマくん外伝 闇金サイハラさん』(22・MBS・TBS)、『顔だけ先生』(21/CX系)、大河ドラマ『おんな城主 直虎』(17/NHK)【舞台】『ワールドトリガーthe Stage B級ランク戦開始編』『カッコウの雛に陽は当たる』(23)、『ディグ・ディグ・フレイミング!』(22)、『血界戦線』『莫逆の犬』(21)に出演。2023年12月舞台『短編集 説得してるのは僕の方』主演にて出演。

久具巨林

1992年11月10日生まれ。愛知県出身。10代は地元名古屋で小劇場を中心に活動し、大学卒業後、2013年に本格的にキャリアをスタート。その後、映画、ドラマ、舞台に多数出演。俳優としてだけでなく、舞台の作・演出にも力を入れ、2019年には舞台『吐露』にて演出を手掛けた。主な出演作に、【映画】『オレンジ・ランプ』『また、いつかどこかで』(23)、『野球部に花束を』(22)、『FUNNY BUNNY』(21)、『罪の声』(20)、【ドラマ】NHK特集ドラマ『ガラパゴス』(23・NHK)、『合コン行ったら女がいなかった話』(22・KTV)、『やめるときも、すこやかなるときも』(20・NTV)、【舞台】『ぼうだあ』(20) 、『振り返れない』『部屋と僕と弟のはなし』(19)などがある。『東京ノ空ハ、タダ蒼ク』(20)では脚本、演出を担当。

PHOTOGRAPHER:TOSHIMASA TAKEDA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI