自分の原点でもあるインディー時代のアルバム『烈火』に回帰した

――2月28日にリリースした『LIBERTY ERA』は約7年ぶりとなるアルバムになりますが、いつぐらいから制作が始まったのでしょうか。

lecca 7年かけて作ったという訳ではなくて、休んでいる時期もあったので、本格的にアルバムを作ることになったのは最後の1年間ぐらいでした。

――2019年にリリースした「team try」「少年」を始め、既発曲も収録されていますが、新曲とのバランスはどのように考えたのでしょう。

lecca 私は曲作りが大好きなので、たくさん曲を作るんですけど、それをどう仕上げて、どう伝えていくかみたいなのは、プロモーションの部分も含めて、スタッフの皆さんが考えてくださったことを一緒にやるという形なんです。今回もデモを作るところまでは私一人でやったんですが、出来上がった曲を聴いてもらって、みんなの意見を聞いて、どれを入れるかという選曲に関しては、ほとんどお任せでした。

――『LIBERTY ERA』というタイトルには、どういう意味合いが込められているんですか。

lecca コンセプトアルバムではないので、後付けで付けたタイトルではあるんですが、4年前に書いた曲も入っているので、一言で言い表すことは難しいなと。あえて、このアルバムに名前を付けるとすればなんだろうと考えたときに、この4年間は個人的に、非常に厳しい期間だったんです。というのもleccaの誕生から、ずっとパートナーとして一緒にやってきたエイベックスのディレクター・柳和実さんが2年前に亡くなったんですよね。そこからの苦しさ寂しさもあって、公私ともに体験したことのない長い長いトンネルに入ってしまいました。政治活動もあったので一旦音楽活動を休止して、2022年に復帰させていただいて、いろんな方と再び会えるようになって、幸せも感じていたんですが、自分の中で抑圧や苦しさがあったんですよね。苦しいときって現実しか見えなくて、生きているだけでも精一杯。そこまでの状態に落ちていた自分が、もう一歩踏み出して、また夢を見るとか、理想を持つということをしてもいいのかなという風に、ここ数ヶ月で思えるようになってきて。抑圧の時代を経て、自分で自分を解放してあげようみたいな、そういうことができるといいなという期待も込めて、『LIBERTY ERA』というタイトルにしたんです。

――そんな辛い状況にいたとは思えないほど、自己肯定感を高めることの大切さを歌った曲などもあります。

lecca 元々そういう曲を書く傾向はあったんですが、落ち込んだ時期に、「素晴らしい人生」という曲を書いて。自分自身が本当に聴きたかった曲だし、自分が自分に言ってあげたかった言葉でもあったんです。この曲で、今のあなたでいいよ、今の私でも完璧だよといったことを歌って、その先に何が言えるのかと考えたときに、自分の原点でもあるインディー時代のアルバム『烈火』に回帰したんです。あの頃の自分が見ていた景色、見たいと思っていた景色、そういうものを思い出す時期があって。当時の自分は少しでも良い景色を見たくて、より良い人間になりたくて頑張っていて。そんな時代の自分を再確認するように、今回のアルバムで書いた曲は、トラックも歌詞も鼓舞するようなテイストが戻ってきている気はします。

――アルバムの中で「コペルニクス」は異色というか、“ぼっちでもかまわない”“仲間感もいりません”と挑発的なメッセージを放ちます。

lecca トラック先行で作った曲です。いただいたトラックがすごくかっこよかったので、それに引っ張られるように書いた歌詞なんですが、アルバムには入らないだろうなと思って作ったら選ばれました。

――今回のアルバムを作るにあたってサウンド面で意識したことはありますか。

lecca 自分は懐メロのヒップホップが大好きで、いまだにサウスの泥臭くてスモーキーなヒップホップや、Salt-N-Pepaなんかをめっちゃかっこいいと思って聴いています。自分はレゲエも大好きですけど、改めてヒップホップもすごく好きなんだよなと思いながら、今回一緒に制作したトラックメーカーさんたちに、「この曲はこういうところがかっこいいよね」みたいなリファレンスをして、目的地を確かめながら作っていきました。結果、バラエティに富んだ楽しいアルバムになりました。

――音の面でも原点回帰をしたと。

lecca 今風のやり方があるのかもしれないですけど、個人的に自分が好きなことを突き詰めるのが一番いいと思ってやらせていただいています。もちろん新旧の音楽を聴いて作るようにはしているんですけど、だからと言って“旧”は隠さないですね。

――歌唱面での変化はありますか。

lecca 自分ではあんまり感じていないんですけど、これまでの作品を全て一緒に作ってきたディレクター柳さんがいなくなったので、もしかすると楽な歌い方をしているかもしれません(笑)。以前は「ここは半音上げようよ」とか、「ここまでいけるよ」みたいなことを散々言われてきましたから。「ちから」「My measure」「紅空」など、そういうことが多々ありました。今回は自分の好きなように歌わせていただいて、それが吉と出ているのか凶と出ているのか自分では分からないんですけど、ライブでの再現度は高いはずです。