周囲から「色がない。周りを立てず、自分を出せば?」と言われたMCが気が付けば天職に

――著書では、現在出演されている毎週日曜に生放送中の情報番組『シューイチ』などに言及する箇所で「自分が司会を務める番組で、演出担当者が代わった時は、必ず話し合いの場を設け、疑問に思っていることを聞きます」と明かしていました。その理由は?

中山 受け継いでいってほしいものがあるから、ですかね。演出家が変わって、時折「自分のカラーを出したい」として、いきなり模様替えしようとする人もいるんですよ。もちろん、新しく面白い提案は歓迎したいんですけど、視聴者の方が気付かないほど少しずつ変化していくのがいい番組だと思っていて、意見をすり合わせるために話し合いの場を設けてもらっているんです。

――『シューイチ』は、2024年4月で14年目に。放送当初から、変わらないこともありますか?

中山 番組スタート時から続く、僕自身が世の中の物事を取材するコーナー『中山のイチバン』です。企画段階で「これが『シューイチ』なんだと言える、自分目線のコーナーを作らせてほしい」とお願いしたんですよ。MCになると外へ出る機会が少なくなってしまって、誰かがロケをしたVTRを見て、スタジオの出演者で侃々諤々するのが普通のフォーマットだと思うんです。でも、僕は「自分が興味を持っている、いいものを取り上げられるコーナーを」と考えて、14年目となってからもブレない、番組の軸になっているかなと思います。

――かつて出演した番組の経験も、ブレずにテレビタレントを続けていらっしゃる背景にありそうで。麻木久仁子さんと2人でMCを務めたバラエティ番組『TVおじゃマンボウ』では当初、麻木さんの進行に「合わないなぁ」と感じつつ、自分の立ち回りを変えてからは「名コンビ」と呼ばれるほどになり、「自分を変える」が大切さを学んだと著書で振り返っていました。

中山 最初は、麻木さんが一方通行でやりづらかった(笑)。でも、麻木さんの気持ちも分かるんですよ。大学卒業後から苦労して、レポーターなどの下積みもあって30歳でようやくつかんだMCともなれば、張り切るじゃないですか。当時、僕は25歳ですでにMC経験もあって、ノリに乗っていたし、自分のやり方ができつつあったんですよ。でも、僕から「こうしてほしい」と言えたかもしれないけど、モットーとして「現場に行くのが嫌だ」とも思ってほしくなかったんです。「じゃあ、僕が麻木さんに合わせれば、上手くいくかもしれない」と考え方を変えて、苦肉の策でしたけど、今思えば正解でしたね。女性の共演者との現場で学んだことは多く、街ブラ番組の『DAISUKI』も同じ。松本明子さんや飯島直子さんとの出会いも学びで。音楽バラエティ番組『THE夜もヒッパレ』で共演した安室奈美恵さんであったり、破壊力あるトークで場を盛り上げてくれた『ウチくる!?』で共演した飯島愛さんであったり、番組での“相方”には成長させてもらいました。

――今や、芸能界では大ベテランとなり、若い方々からも新たに吸収することは多そうです。

中山 若さは今しかない武器ですし、華を咲かせてあげたいとは思いますよね。『シューイチ』でアシスタントを務めてくれている岩田(絵里奈)アナウンサーも、息子と年齢がほとんど変わらないので、親子で司会をやっているような感覚ですけど、学ぶことも多いんです。岩田アナはデビューが『シューイチ』で、一度番組を離れたんですけど、人事異動でずっと「シューイチに戻りたい」と希望していたそうなんです。成長してもなお、古巣に戻りたいと願ってくれていたのは幸せで。これからますます、MCとして輝きを増すでしょうし、僕もできる限りに応えてステップアップを支えていきたいです。

――テレビのスターに憧れて、群馬から上京して40年以上。年齢に応じてまた、価値観も変わってきたんですね。

中山 芸能界で「MCになりたい」と思ったことが一度もなかったのに、いつからか、板に付いてきたのも不思議ですよね。僕は元々、スターになりたかったから。20歳の頃、バラエティ番組『トキメキおちゃめ組』では兵頭ゆきさんと一緒に進行を任されて、同世代の織田裕二くんや、事務所の後輩だった吉田栄作に「最近、ハマっていることは?」と聞いていたときは違和感もあったし、本当は「そう聞かれる側」になりたかったんです。でも、経験を重ねるにつれて「もっと上手くなりたい」と意識も変わってきて、徳光和夫さんや島田紳助さん、上岡龍太郎さんの技術を盗み、自分流にアレンジして取り入れるようになりました。

――長年、テレビ業界にいる当事者として。業界の変化も感じていますか?

中山 お笑い芸人、特にコンビでMCを目指す人が増えてきたんです。イメージではくりぃむしちゅーのような、MCに上田(晋也)くんがいて、パネラーの筆頭に有田(哲平)くんがいる構図が、理想形らしいんですよね。それぞれピンでもMCで活躍できるのが憧れとも、よく聞きます。若手の頃は「MCをやりたい」という人間は珍しかったし、僕自身も「色がない。周りを立てず、自分を出せば?」とよく言われたんですよ。でも、次第に楽しくなっていって。自分で話題を振り、時にはみずからオチをつけてと工夫するようになったし、「ここで終わり」と着地点を決めて、番組を仕切るMCにはやりがいもたくさんあります。

Information

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中山秀征

1967 年生まれ。群馬県出身。テレビタレント。14 歳でデビューして以来 40 年以上にわたり、バラエティ 番組や情報番組の司会、俳優、歌手として活躍している。

PHOTOGRAPHER:TOMO TAMURA,INTERVIEWER:SYUHEI KANEKO