芝居のことを考えている時が一番楽しい

――「夜叉ヶ池」は、PARCO劇場開場50周年記念シリーズの節目を飾る作品です。勝地さんはPARCO劇場にどんな思いをお持ちですか?

勝地涼(以下、勝地) PARCO劇場は、お客様との一体感を感じられる場所で、観に行く側としても作品に没入できる劇場です。昔のPARCO劇場の頃から、自分が演じたり、数々の作品を観たりしてきた思い入れのある劇場に、座長として立たせていただけることにワクワクしています。お客様と一緒に幻想的な世界に浸りたいと思っています。

――「夜叉ヶ池」はご存知でしたか?

勝地 作品の存在は知っていたんですが、台本を読んでから「こういう作品なんだ」と理解しました。言葉が現代的じゃないので読むのに苦労しましたが、この世界を表現するには必要なことだと思いましたし、稽古を進めるごとにセリフの美しさを噛みしめています。

――セリフを覚えるのが大変そうです。

勝地 全体的なセリフ量は多くないのですが、一度に喋るセリフの量が多いんです。特に、鐘つきになった話をするところはセリフを覚える大変さはもちろん、初めて聞く人に情景を届けるのと同時に、言葉に説得力も持たせなくてはいけないので大変です。イメージを膨らませながらセリフを喋ることに苦労しています。

――感情の乗せ方も難しそうですね。

勝地 演出家の森新太郎さんから、細かい指示をいただけているので、難しく感じたことはないです。本読みをたくさんして慣れてきたからかもしれません。

――台本読んだ時の印象を教えていただけますか。

勝地 最初は「難しそうだな」という印象を持ちましたが、読み込んでいくと話は単純で「なるほど」と。皆さんと稽古に入る前に、作品の背景など、分からないことを調べて勉強していかなければと思いました。

――演じる上でどんなことを意識しましたか?

勝地 森さんの指示を理解した上で、お腹の底からじわじわと感情を出すように声を出すセリフの言い回しですね。お腹に空気を取り込んで、その状態を保ちながらセリフを言うのは、感情だけでは表現できない、身体的な要素が大きいので意識して身につけるようにしています。

――森さんからの演出はいかがですか?

勝地 とにかく細かいですが、分かりやすいです。稽古場からの帰り道や家で、森さんに言われたことを思い浮かべながら、セリフに落とし込む作業をしています。

――共演した入野自由さんの印象を教えてください。

勝地 自由くんとは以前アニメ「UN-GO episode:0 因果論」(2011)でご一緒したことがあります。今回も積極的に僕と関わろうとしてくれて、すごく信頼しています。声優の経験が豊富で、舞台の経験もあるから、言葉がはっきり伝わるし、説得力があるんです。森さんからは、「今回の舞台では腹に何かあるような感じでやってくれ」と言われています。昨日も「腿上げしてからセリフを言って」と言われていて。僕は笑わないように我慢しながら横で見ていましたが(笑)、実際、腿上げをした後に出てくるセリフがいいんです。森さんから、テクニックじゃなくて、体全体でセリフを言うことを教わっています。

――瀧内公美さんはいかがですか?

勝地 言葉が難しいセリフが多いので、イントネーションに関しては一番しごかれているかも。でも、真面目な方なので上達スピードが速いです。

――那須凜さんの印象はいかがですか?

勝地 那須さんもセリフには苦労されているけど、お腹から出てくるエネルギーがすごいので、本読みの時に「面白い!」とニヤニヤしちゃいました。あれくらいの力がなきゃダメなんだなと思い知らされました。

――上演に向けて楽しみにしていることを教えてください。

勝地 鐘を鳴らして階段を下りてくる時の動作、瀧内さん演じるお百合さんとのじゃれ合いなどで、お互いの愛しさを表現するにはどうすればいいか、そんなことを考えている間が一番楽しいです。とにかくたくさん稽古をして、説得力のある芝居がしたいです。