カーテンコールは舞台をやっていく中で一番やりがいを感じる瞬間

――キャリアについてお伺いします。舞台に興味を持ったのは、どういうきっかけだったのでしょうか。

武本 僕が初めて観た舞台は、姉に連れて行ってもらった『弱虫ペダル』でした。もともとアニメが好きだったのもあって、自転車競技のお話を、実際に自転車を使うことができない舞台上でどう再現して、観客を熱くさせるんだろうと、想像もつかなかったんですよね。ぶっちゃけ『弱虫ペダル』のアニメが大好きだったからこそ、生身の人間に演じて欲しくない気持ちもありました。ところが実際に観劇すると、大好きな推しのキャラクターが2Dではなく人間の肉体を持って目の前にいる感覚が新鮮で。アニメの推しが自分と同じ世界線で生きているということを実現できるのが2.5次元の良さだなと感じたんです。その作品には今共演させていただくこともある鳥越裕貴さんや太田基裕さんなども出演されていたんですが、その方々のお芝居に生で触れて、自分も同じ舞台に立ちたいと思うようになりました。

――芸能活動を始める前から2.5次元の舞台に触れていて、デビュー後、自分も出演する立場になるのは珍しいケースですよね。

武本 あまり聞かないですよね。姉に誘われて『弱虫ペダル』を観ていなかったら、興味を持つこともなかったと思います。最初に観客として2.5次元に触れていたからこそ、お客さんの気持ちも分かりますし、作品を大切にされている方がたくさんいるのも知ることができました。だからこそ自分がやるときに、どれだけ大変かも分かっていましたし、誰よりも自分が演じるキャラに対して愛を持ってやりたい、誰よりも好きでいたいという気持ちでやっています。

――武本さんは2020年にミュージカル『新テニスの王子様』のオーディションに合格し、本格的に俳優業をスタートします。

武本 白石蔵ノ介としてステージに立って、40公演ぐらいやらせていただいたんですが、公演初日が無事終わったときの、カーテンコールの風景は忘れられないですね。それを見たときに、「自分は俳優でやっていこう。この仕事で生きていこう」と覚悟が決まったんです。今でも自分にとってカーテンコールは、舞台をやっていく中で一番やりがいを感じる瞬間。ずっと集中して稽古してきたものを本番で披露して、一旦スイッチをオフにして、来てくれた皆さんの顔をしっかり見ることのできる貴重な時間なんです。たくさんの舞台に出させていただいていますが、いまだにカーテンコールを見て思うことは毎回違うんです。ミュージカル『新テニスの王子様』の初日に見た景色を見て、自分はこの仕事で生きていくというふうに決めました。

――過去にアイドル経験もありますが、そのときの経験がお芝居に活きている面もありますか。

武本 歌とダンスをやったことは当然活きていますが、直接お芝居に関係ないと思うようなことさえも全て今の仕事に繋がっているんですよね。アイドル活動があったからこそ、舞台に起用していただくこともあったでしょうし、見ているお客さんに飛ばすエネルギーも、それまでの活動がなかったら届けられなかったと思います。