体が思うように動くようになると、体を動かす感覚が楽しい

――ターニングポイントになった作品を教えてください。

武本 ミュージカル「『刀剣乱舞』 ~江水散花雪~」(以下、『刀剣乱舞』)がなかったら、きっと今ここにいないですし、演出家の茅野イサムさんとの出会い、キャストのみんなとの出会い、全てが貴重な経験でした。ミュージカル『新テニスの王子様』でデビューした後、幾つかの舞台に出演させていただいたんですが、いかに自分はお芝居のことを分かっていなかったか、舞台やミュージカルで役を演じる上で大事なものがどれだけ欠けていたかを気付かされた場だったんですよね。自分の土台を作ってくれたのは間違いなく『刀剣乱舞』です。もちろん全ての作品が今の自分に繋がっていますし、これからもそうだと思うんですが、『刀剣乱舞』で得た経験はかけがえのないものです。

――『刀剣乱舞』で共演した方々には特別な仲間意識みたいなものがあったりしますか。

武本 特別ですね。家族と言ったら臭く聞こえるかもしれないですが、一つの劇団の仲間みたいな気持ちなんですよね。チームであり、カンパニーであり……やっぱり家族ですね。

――今年だけでも、たくさんの舞台に出演していますが、役の切り替えはスムーズにできるほうですか。

武本 あまり深く考えたことはないんですが、長くやった役であればあるほど、自分の中に染みついて絶対に消えないものなんです。ずっと生きているものなので、それが死ぬことはありません。だから演じた役は全て自分の中にありますし、それを活かしながら、新しい役に入っていくという感覚です。

――お忙しい中、オフはどう過ごすことが多いですか。

武本 最近はオンオフ関係なく筋トレばかりしていて、ボルダリングジムに入り浸っています。同じジムだけではなく、いろんなところに通って、それぞれの特色を見るのも楽しいです。

――学生時代からボルダリングをやっていたんですよね。

武本 中学・高校と競技としてボルダリングをやっていました。

――どういうきっかけで始めたんですか。

武本 中学生になって、何か部を選ばなきゃいけないというときに、普通のことをしてもツマらないなと思ったんです。そしたら運命的に家の徒歩3分圏内にジムがありまして、これは行くしかないなと。最初は興味本位で行ったんですが、始めてみたら全身を使う競技で、誰でも気軽に始められる。一つのことに集中すると、それにどんどんはまっていくタイプなので、気付けばボルダリングを何年も続けていました。それに僕の地元の佐賀では、わりと学校でもボルダリングが盛んなんですよね。

――体幹も鍛えられたんじゃないんですか?

武本 仰る通りで、全身を使う競技なので体幹も鍛えられますし、足の指先まで意識することが必要になります。今もダンスをすると、「指の先まで神経を使って踊っているね」と言っていただけるのですが、それは学生時代にやってきたボルダリングのおかげですね。ただ、しばらくブランクがあったんです。

――どうして久しぶりにボルダリングをやろうと思ったんですが。

武本 今年6月に出演した舞台「川越ボーイズ・シング」が、かなり体を使う役で。今年は映像作品が続いて、あまり体を動かしていなかったので、このままじゃいけないということで始めました。

――すぐに勘は取り戻せましたか。

武本 行けるかなと思って、初日から気絶するぐらい自分の体を追い込んで(笑)。4日連続で通ったら、疲労が積み重なっていたんでしょうね。ものすごい筋肉痛で動けなくなって、手も震えて、かろうじて指が動くぐらいの状態になり、力が入らなくて重いものが持てなかったんです。携帯電話も重く感じるぐらいの全身疲労に襲われました。

――一度通い出すと、行けない日は物足りないですか?

武本 そうですね。鍛え始めると、打ち上げなどがある日も「早めに切り上げてジムに行くか」という思考になりますし、行けない日が続くと、「ハードな筋トレをしないで何日も経過してしまった……」と後悔します。体が思うように動くようになると、体を動かす感覚が本当に楽しいんですよ。だからジムに行けない日は、家で洗濯物を回しながら腹筋や腕立てのメニューなどをやっています(笑)。

Information

『ペテン狂想曲』
2024年7月5日より、池袋HUMAXシネマズほか全国ロードショー

林光哲 武本悠佑
松田将希 山縣悠己 大滝紗緒⾥ 三好大貴 蔵田尚樹 石川鈴菜
本間優人 阿部冬夜 ひと:みちゃん 石田優奈 大野泰広

監督・脚本:松本了
🄫2024「ペテン狂騒曲」製作委員会/ユーフォリア

ハイエナと呼ばれた弁護士・坂木誠人(林光哲)と、裁判に勝つためには手段を選ばない検事・我妻泰史(武本悠佑)。二人が真っ向から対決した殺人事件裁判は無罪判決で坂木の勝利に終わった。時の人となり栄光を掴み取った坂木弁護士。一方、エリートキャリア組から脱落し地方へ左遷された我妻検事。『驕れる者久しからず』。数年後、経営失敗により破産し、弁護士資格を失った坂木は借金取りから逃げ回る日々を送っていたが、かつて坂木が弁護した殺人事件の被疑者・内田光流(山縣悠己)の甘い誘いにより、マルチ詐欺に参加する。そんな坂木を、左遷から戻った我妻が虎視眈々と狙っていた。

公式サイト
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武本悠佑

1998年5月1日生まれ。佐賀県出身。特技のダンスを生かしたTikTok投稿がバズり注目を浴び始めた頃に受けたオーディションのミュージカル「新テニスの王子様」The First Stageのメインキャストに抜擢され、本格的に俳優の道を歩み始める。演技に対するストイックさや礼儀正しさが日々の成長につながり、続々と出演作品を重ねている。

PHOTOGRAPHER:TOSHIMASA TAKEDA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI