ZEEBRAさんから「Nasをロールモデルにしろ」と言われていた

――ヒップホップとの出会いを教えてください。

Novel Core  クラシックの指揮者をやりたくて、音楽大学に行きたいと思ったのですが、家計的に厳しそうということで諦めました。でも、音楽の仕事はしたいという感情を持ち続けていて、高校生になってからはYouTubeでいろんな音楽動画を観ていたんですが、たまたま関連動画でヒップホップのインストが出てきたんです。他のジャンルのドラムをサンプリングして引っ張ってくるなど、いろんなジャンルが一つになっているのが面白くて、そこからハマりました。

――どういうアーティストに惹かれたのでしょうか。

Novel Core  音楽として面白いなと思ったのと同時に、カルチャーがすごく気になって。音楽を好きになると、カルチャーや裏にある歴史も掘り下げたくなるタイプだったので、いろいろ聴いてみようと思って、聴き始めたのがケンドリック・ラマー。自分の半径数メートルで起きたことを歌っているだけなのに、その中に社会的な問題提起もあって。自分も当時は社会に対して伝えたいメッセージがたくさんあったので、ケンドリックみたいになりたいなと。その流れでヒップホップの成り立ちを知りたかったので、1970年代のブロックパーティーの時代から遡って聴いて、ちょうど公開されたNWAの実録映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』(2015年)なんかも見たりして。ケンドリックと同じく、Logic、J. Coleみたいな、コンシャスなラップをするラッパーたちの作品を聴くことで、ヒップホップは社会性があって、メッセージが強く前面に出る音楽だなと思って惹かれていきました。

――日本よりも海外のヒップホップに惹かれたんですね。

Novel Core 最初はそうですね。次第に日本のラップも聴き始めて、ZEEBRAさんやRHYMESTERの世代のラップを聴いてかっこいいなと思って、自分もやってみたいと思うようになりました。ちょうどフリースタイルラップが流行り始めた時期で、MCバトルが勢いのあるタイミングだったので、フリースタイルでMCバトルだったら、自分も始められそうだなと思って、部屋で壁に向かってやるようになりました。いろんなジャンルを聴いてきたおかげで、自分的に「こういうラップをしたいんだろうな」というのは当時から何となくあったんです。今振り返ってみると本当に下手くそでした(笑)。でも最初から楽しくラップができましたね。

――ラップを始めた頃は、どういうスタイルだったのでしょうか。

Novel Core  海外のラップが大好きだったので、当時は英語でしか成立しないようなフロウに興味があったんです。だから日本語の発音を英語っぽくぼかしたりした時期もあったんですが、最終的には、ちゃんと日本語が美しく聴こえるラップのスタイルを身につけていきました。ZEEBRAさんたち世代のラップのかっこよさは、歌詞がすっと入ってくるところだと思うんです。「日本人のラップは、こういうスタイルがかっこいい」と刺激を受けたので、かなり意識していたかもしれません。

――当時からヒップホップのリリックもチェックしていたんですか?

Novel Core 和訳のサイトをガーっと漁っていました。そこから歌詞の中に出てくる物事がどういうことなのかなどを理解したらどんどん楽しくなっていって。その中に登場する事件だったり抗争だったり、アーティストの名前だったりを掘っていったら他のアーティストに繋がるじゃないですか。それでいろんなアーティストを聴くようになって、気づいたらヒップホップばかり聴くようになってた、みたいな感じでしたね。

――メッセージ性という観点からもケンドリックの影響は?

Novel Core ありますね。彼自身、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアに対しての敬意がすごく強いというところで、僕も中学校1年、2年ぐらいのときにキング牧師のことを大好きになって。書物などで読んだりした彼のスピーチだったり、やろうとしていたことだったり、歴史を追っかけていたので、共感するような歌詞が多くて。ただケンドリックの影響で1番強いのは、先ほどもお話しした通り意外と身近なことを歌ってるというところの刺激が大きかったです。世界がどうこうというテンションじゃなくて、自分たちの身の回りで起こった事件などを歌うことによって、どうしてそれが起きてしまうのか、根っこに貧困があるよねとか、そっちに問題意識が向いていくっていう、その形がすごく美しいなと思って。すごく刺激を受けています。

――80年代や90年代のヒップホップも聴いていましたか?

Novel Core 聴いています。ちょうどラップを始めたタイミングから半年後ぐらいにZEEBRAさんと出会って、ZEEBRAさんの事務所に所属することが決まって以降、遡って昔のアーティストを聴いていました。レーベル所属が決まったときにZEEBRAさんから「CoreにはNasみたいになってほしい。だからNasを聴け!」と言われて。

――どういう真意だったんですかね?

Novel Core  Nasも王道のギャングスタラップとはちょっと違ったところに軸があったじゃないですか。多分そういうのを目指してほしいというのがあったんだと思うんです。ヒップホップに敷かれたレールの上を歩くだけではなくて、自分が歩んできた道と重ね合わせて、時代に合わせてちゃんと再解釈して、ちゃんと次世代のことを意識しながら音楽を作っていってほしいという思いがZEEBRAさんは強かったみたいで。「王様を目指すより先生を目指せ」「Nasをロールモデルにしろ」と言われていました。