こんにちは。GANG PARADEのキャ・ノンです。突然ですが、皆さんはネタバレはきらいですか?ちなみにわたしは大好きです。映画やドラマを見るときも、漫画を読むときも、ネタバレを先に読んでから見たい派です。あまり人に理解されませんが、何が起こるのか先に理解して見たいのと、ドキドキして疲れたくないのが理由です。たぶん作り手に対してかなりの冒涜ですが、わたしはすべて知った上で、すごく楽しめるのです(なので許して)。でも世間は、ネタバレに厳しいですよね。当たり前のことなのかもしれないけど、生活の中にはネタバレ注意の文字が溢れている気がします。メンバーの中にも、耳を塞いで遠くに逃げるほどネタバレがきらいな人もいて、会話にも気をつけなくてはいけません。世知辛いですね。というわけで今日は、FANCLUB TOUR ASOVIVA『 QUEEN OF PUNK』初日、札幌公演の日のことを書いていこうと思います。ネタバレ注意です。

 

毎年恒例になりつつある、夏のFCツアー。昨年は衣装総選挙、一昨年は楽曲総選挙を行って、上位に選ばれた楽曲や衣装を披露した。そして今年は、ギャンパレツアー総選挙が行われた。メンバーが一人ずつ、衣装やビジュアルイメージ、ツアーのコンセプトを考え、その内容で選んで投票してもらう。一位になったメンバーの完全プロデュースで、各公演回ることができるというものだ。そうして今回、一位を獲得したユアち
ゃんのプロデュースでFCツアーを回ることが決まった。まだこのときは、よかったねえとにこにこと笑っていた自分が羨ましい。

 

セットリストが上がり、それに合わせて12人体制のフォーメーションを作ったり、練習を進めていった。毎日集まって練習して、1日9時間スタジオに篭った日もあった。一曲ずつ確認して、潰していく作業をしているとき、それに気付いたのだ。「なんか、全部つらくない?」誰かが言った。ユアちゃん以外の全員が薄々と勘付き、でも黙っていた言葉だ。やっぱりそうか、みんな思ってたんだという安堵と、やっぱりしんどいセットリストだということが、はっきりとわかってしまった。ホワイトボードに書かれた曲はすべて、かなりハイカロリーなものしかなく、次の曲にいってもいっても、優しい曲は現れなかった。なるほど・・・、と腹を括って、向き合うのはライブハウスでと心に決めたのだ。

 

そして本番。衣装もパンクをイメージして、革ジャンを着ているメンバーもいれば、シャツを着ているメンバーもいた。わたしは革のパンツに、長袖のニットで、革ジャンを着ているメンバーよりはマシかもしれないが、本当に暑い。信じられないくらい暑すぎる。息を吸っても吐いても酸素が足りなくて、久々に意識が半分になる感覚を思い出した。

 

今回は元PARADISES、元GO TO THE BEDS、月ナスなど、全員でのパフォーマンスだけではない時間もあったり、メドレー形式でいろんな楽曲を披露した。普段だったら絶対にやらないことをできるのが、FCツアーのいいところだ。そして、他のメンバーがステージに立っているこの時間が唯一、息を整えることが許された。袖に捌けると、汗まみれのメンバーが、ゾンビのように至るところに転がっていた。壁や床に冷たさを求めて倒れ込む。腹を括るだけじゃ越えられない壁が、確かにそこにあった。

 

束の間の息整えタイムは終わり、MCを挟んでそこから6曲ノンストップが始まった。会場の熱気にくらくらして、モッシュエリアに目を向けると、信じられないほど元気な遊び人の姿が見えて恐ろしささえ覚えた(すごいよみんな)。負けてられないぞ!と思いたかったけど、暴れまわるみんなの姿を見たら、そんなこと言えない気がしてしまった。きっとこのライブは、己との戦い、そして遊び人とのモッシュなのだ。

 

ライブを終えて袖に捌ける。わたしたちは、ギリギリ人間の形を保っていたゾンビだった。汗をぼたぼたと垂らしながら、ありえないほどゆっくりと階段を上った。限界が近づくほど、もっといける気がするし、もう無理な気もする。そのヒリヒリがたまらなく好きだ。脳みそのキャパが狭くなって、考えられることが減って、今ここに立って、歌って踊ることだけを考えられる。12人体制になって、急ピッチで作ったフォーメーションも歌割も、冷静になれるライブだったら、考えてしまって頭を使ってしまうけど、このライブはただ目の前のことだけに、必死になれるのだ。まだ1公演しかやっていないことも、あと5回も残っていることも信じられない。しかし、あと5回しかないと自分に言い聞かせて、ひりひりとするこの境地を楽しむのみだ。

過去の連載記事はこちら
https://strmweb.jp/tag/ca_non_regular/

キャ・ノン

「みんなの遊び場」をコンセプトに活動する12人組アイドルグループGANG PARADEのメンバー。また、「KiSSをあなたにお届けchu!♡」をキャッチコピーに活動するWACK初の王道5人組アイドルグループ『KiSS KiSS』のメンバーの一人でもある。ライブ好きで、苦手なことや、できないことは出来るようになればいいというタフでロックな精神の持ち主。2024年5月31日より自分自身のライブレポートなどを綴った『アイドルリアル備忘録』をSTREAMにて連載中。