芝居の基礎にあるのは、岸谷五朗さんから教わったこと

――キャリアについてお伺いします。『イン・ザ・ハイツ』はダンスシーンがふんだんにありますが、平間さんは小さい頃からダンスをやっていたそうですね。

平間 幼少期の僕は喋ることが苦手で、お腹すいた、あれやりたい、これ欲しいといった、自分の思いを言うのが苦手だったんです。歌うことも声を発するので苦手だったんですが、親戚の集まりでカラオケに行ったときに、みんなが歌っている曲に合わせて体を動かすのが楽しかったんです。それでダンスをやりたいと思って、小学4年生からダンススクールに通い始めました。

――周りでダンスをやっている友達はいたんですか?

平間 小学校にはいなかったですね。だから当時の記憶は学校よりもダンススクールのほうが鮮明ですね。

――最初からヒップホップダンスがメインだったんですか。

平間 そうです。僕が小学2、3年生のときに、SAMさんと優香さんがMCで『RAVE2001』(テレビ東京)というストリートダンス番組があったんです。深夜放送だったんですが、お姉ちゃんが録画していて。それを観たときに衝撃を受けて、ヒップホップを踊りたいなと思ったんですよね。

――『RAVE2001』はコンテスト形式のダンス番組でしたが、平間さんもダンスの大会には出場していたんですか?

平間 地元が北海道だったので、ほとんど大会がなかったんですよね。東京に出てきてから、一回だけブレイキンの大会に出ましたけどね。

――当時の北海道のダンスシーンはどんな感じだったんですか。

平間 今ほどネットが普及していないのもあって、当時よく言われていたのが「北海道は2個遅れているよ」と。大体、沖縄、大阪、東京みたいな感じで南から最新のステップが入ってくるので、北海道までたどり着く頃には、流行りのステップは2個先に行っちゃっているんです。ダンスを始めた頃からダンサーになるのが夢だったので、このまま北海道にいてはまずいなと。中学2年生からアミューズにお世話になっていて、最初は東京と北海道を行き来していたんですが、このままだとダンスで遅れを取ってしまうからと事務所に直談判して、上京して寮生活をすることになりました。

――そもそも、どういうきっかけでアミューズに所属することになったんですか。

平間 アミューズの方が、僕が通っていたダンススクール主催のライブを観に来てくれて、そこで声をかけていただきました。

――上京する時点で、お芝居をやる気持ちはあったんですか?

平間 全くなかったです。夢は変わらずダンサーでした。ただ東京に出てきて、レッスンに打ち込んでいたら、事務所の方から、「そんなに踊りたいなら、踊れる場所があるぞ」と勧められたのが舞台でした。僕も深く考えずに、人前で踊れるんだという興味だけで出演を決めたら、『FROGS』という舞台で、踊りだけでいいと聞いていたんですが、しっかりセリフもあって(笑)。

――でも、やらざるを得ない状況ですよね。

平間 他にも同世代の子たちが出演していて、がっつりお芝居をしていたので、戸惑いながらも頑張ってやりました。

――もともと人前で声を発することが苦手なのに……。

平間 最初は本当に恥ずかしかったです。ただ稽古をやっていくうちに、意外と喋ることは平気になりました。『FROGS』はアミューズ企画の舞台で、演出家が岸谷五朗さんだったんです。舞台のことは何も分からず、五朗さんのこともドラマ『みにくいアヒルの子』(フジテレビ)に出ていた人ぐらいの認識で、周りから「怖い人だよ」と聞いていました(笑)。でも実際にお会いすると全然怖くなくて、僕もお芝居のことを知らないから、怖いもの知らずで臨めたのも結果的に良かったのかもしれません。だから僕のお芝居の基礎にあるのは、五朗さんから教わったことです。

――どのぐらいからお芝居に興味を持ち始めたんですか。

平間 『FROGS』の再演で、五朗さんから「お前が主役をやってみないか」と機会をいただいたんです。それをやると決めてから、興味を持ち始めました。

――高校卒業後の進路選択のときに、俳優でやっていく不安はありましたか。

平間 ありました。まだダンサーになりたい気持ちも強かったですし、アルバイトでダンスも教えていました。俳優としての自覚が生まれたのは、もっと後で、2015年に出演した舞台『RENT』ですから二十代半ばのときです。この時期ぐらいから僕を応援してくださるファンの方も増えました。ただ今も俳優一本と決めている訳ではなく、自分にやれることがあったら、いろんなことやっていこうというスタンスです。

――『イン・ザ・ハイツ』のようにダンスシーンが盛り込まれた作品もありますが、それ以外でダンスとお芝居で共通していると感じることはありますか。

平間 それこそウスナビじゃないですけど、僕は踊っているときに、「自分に注目してくれ!」というよりも、みんなと踊るのが好きだったんですよね。だからセンターで、一人で踊ってくださいと言われても楽しくない。踊っている最中に横を見たときに、仲間と目が合うみたいなのが楽しくて、繋がっているなと感じられるんですよね。そういう繋がりの大切さは、お芝居にも通じているのかなと思います。