憧れの日本人ダンサーakihic☆彡さんと共演する夢が叶った瞬間

――俳優としてターニングポイントになった作品は何でしょうか。

平間 やっぱり『RENT』が大きいですね。演出がアンディ・セニョールJr.で、それまでの僕は“演じる”ということに重きを置いていたんですが、『RENT』は演技をしようとするとアウトだったんですよ。

――どういうことでしょうか?

平間 「オーディションの段階で、その役だと思って壮一を選んでいるんだから、ウソの演技を重ねられると違うじゃないか」と。僕自身の持っているもので演じてほしいと言われました。

――演技をすると見抜かれるんですか。

平間 一言目で見抜かれます。だから、みんなに迷惑をかけるんですよ。通し稽古だったのに、僕が一言目を喋った時点でストップ。みんなで話し合うところからやり直しで、丸一日を潰すことになるから、半ば強制的に演技するということをやめさせられました。

――演技をしないとは具体的にどういうことなのでしょうか。

平間 たとえば「今どんな気分?」と聞かれたときに、「今日はちょっと眠たいです」と答えたら、「だったら眠たいと思いながら演じなさい」と。無理やり、「今日は元気です」という気持ちで演じられても、それは嘘だから違うんだと。すごいなと思いましたが、頭では理解しても演技をしないのは難しかったですね。ただ年齢を重ねていくと、流れに乗ることの大切さも分かってくるんですよね。演じようとしなくても、共演者との会話や音楽の力を借りると、自然とお芝居が流れていくんです。もちろん、それが通用しない作品もありますし、五朗さんとアンディでは演出方法も全く違いますが、いろんな方から演じ方を教わって良かったです。

――平間さんは今もお仕事以外でダンスをすることはあるんですか。

平間 今も家ではゴリゴリに踊っていますし、ブレイキンのアクロバティックな技も練習しています。

――ダンサーでリスペクトしている方はいらっしゃいますか。

平間 ずっと憧れている日本人ダンサーはakihic☆彡さんです。東京に出てきたときに、akihic☆彡さんのスタジオに通っていた時期があって、本当にかっこいい人だなと。すでに僕はお芝居をやっていたので、いつかakihic☆彡さんとお仕事でご一緒したいなと思っていました。その夢が2022年に実現したんです。

――それはすごい!

平間 僕が主催したダンスイベント『S×?vol.2 RADIO BOX』に出演していただいたんですが、十数年越しの夢が叶いました。めちゃめちゃ緊張しましたけどね。

――今回の『イン・ザ・ハイツ』で、ダンス面で楽しみにしていることは何でしょうか。

平間 TETSUHARUさんはクラシック、ストリートダンスの両方ができるんです。前回はストリートのダンスに、ジャズやバレエの要素が入ってくるという面白さがあったんですが、今回はヒップホップが入ってくるので、また雰囲気が変わるんじゃないかと。TETSUHARUさんがどういう振付をするのか楽しみなんですが、キャストに任せる部分も多いのではないかと予想していて、少しダンスが変わるかもしれませんね。

――前回はラテン色が強かったんですよね。

平間 強かったですね。前回出演したエリック・フクサキという子がペルー育ちで、ラテン系の踊りは体に染みついているから、すごく上手なんです。女性をリードする動きも完璧でかっこ良くて。TETSUHARUさんがエリックの踊りを見て、それを実際に取り入れることもありました。今回、ヴァネッサ役を演じる豊原江理佳さんはドミニカ共和国出身なんですが、ラテン音楽で踊れないと親から怒られるらしいです(笑)。そういう方が座組に入ってくださると頼りになりますね。

――今回の『イン・ザ・ハイツ』では、若い世代の俳優も出演していますが、平間さんの世代と比べて、何か変化は感じますか。

平間 感じますね。僕は日頃から様々な舞台で活躍している俳優もチェックしているんですが、めちゃくちゃダンスが上手い子、アクロバットが超人的にできる子、アクションが得意な子、とてつもなく歌が上手い子など、それぞれ何かに特化したスペシャリストがたくさん出てきた世代だと思っています。正直、そんな子たちがミュージカルの世界で伸び伸びと活躍しているのは脅威でもあるんですが、抜かれないように、まだまだ頑張りたいなと思っています。

Information

Broadway Musical 『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』

【東京公演】
劇場:天王洲 銀河劇場
公演日程:2024年9月22日(日祝)~10月6日(日)

【京都公演】
劇場:京都劇場
公演日程:2024年10月12日(土)~10月13日(日)

【名古屋公演】
劇場:Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
公演日程:2024年10月19日(土)~10月20日(日)

【神奈川公演】
劇場:大和市文化創造拠点シリウス 1階芸術文化ホール メインホール
公演日程:2024年10月26日(土)

ウスナビ:Micro [Def Tech]/平間壮一(Wキャスト)
ベニー:松下優也
ニーナ:sara
ヴァネッサ:豊原江理佳
ソニー:有馬爽人
ダニエラ:エリアンナ
カーラ:ダンドイ舞莉花
ピラグア屋:MARU
グラフィティ・ピート:KAITA
ケヴィン・ロザリオ:戸井勝海
カミラ・ロザリオ:彩吹真央
アブエラ・クラウディア:田中利花
ほか

原案・作詞・作曲:リン=マニュエル・ミランダ
脚本:キアラ・アレグリア・ウデス
演出・振付:TETSUHARU
翻訳・訳詞:吉川徹
歌詞:KREVA
音楽監督:岩崎廉

マンハッタン北西部、移民が多く住む町ワシントンハイツ。ドミニカ系移民のウスナビは両親の遺した商品雑貨店を守りながらドミニカで暮らす事を夢見ている。タクシー会社で働くベニーは、経営者夫妻の娘ニーナに想いを寄せている。ハイツの希望の星として名門大学に進学したニーナは、ある秘密を抱えて帰ってきた。ウスナビが恋心を寄せるヴァネッサはダニエラの経営するヘアサロンで働きながらハイツの外の世界に憧れている。そんな中、皆から慕われているアブエラに奇跡が起きる!狂喜乱舞する住人達。しかし予想もしなかった混乱と不安が突然ハイツを襲う。ウスナビとヴァネッサ、ベニーとニーナの恋の行方は?ハイツの未来は?大切にしたい自分の居場所はどこにあるのか――。

公式サイト
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平間壮一

1990年2月1日生まれ。北海道出身。2007年『FROGS』にて舞台デビュー。その後、数々の演劇・ミュージカルに出演。2015年『WASABEATS』では自身のダンスを活かし世界一のタイトルを獲った共演者に引けをとらないダンスパフォーマンスで魅了。同年、舞台『RENT』にドラァグクイーン・エンジェル役として出演。ダンスで培った体現をもって女性らしさを見事に演出し話題を集めた。2016年1月、地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』メインキャストに抜擢。2017年、豪華キャスト陣が集結した人気作品、劇団☆新感線『髑髏城の七人-Season月<上弦の月>』に出演。その後も着々と舞台・ミュージカル界での実績を積み、2018・2019年『IndigoTomato』での主演、2020年『RENT』マーク役、2021年『イン・ザ・ハイツ』ウスナビ役を務めるなど主演作品での活躍も続いている。

PHOTOGRAPHER:TOMO TAMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:スギノトモユキ,STYLIST:岡本健太郎