ハロプロ研修生で“先輩に追いつかなきゃ”と励んでいた牧野、一方の井上は学校の下校時に大好きな歌を

――ここからはお二人の原点に立ち返るお話を。それぞれ加入時期は異なるもののオーディションを経て、グループの活動を共にしています。オーディションを受けた当初、どのような思いがあったのでしょうか?

牧野 最初に受けたのは「モーニング娘。10期メンバー『元気印』オーディション」(2011年)で、(OGで10期メンバーの)佐藤優樹さんと(Juice=JuiceのOGの)宮崎由加さんも会場にいたのを覚えています。でも、三次審査で落ちてしまったんです。その後、地元の愛知県でドリームモーニング娘。さんの公演を見に行って「あきらめたくない、絶対に入りたい!」という思いが強くなり、翌年には「モーニング娘。11期メンバー『スッピン歌姫』オーディション」(2012年)も受けたんですけど、最終審査で落ちてしまって。合格した(11期メンバーの)小田さくらさんはもちろん、小田さんが親友と公言されている(元こぶしファクトリーの)浜浦彩乃さんも参加していて、お二人にハロプロ研修生の経験があったのを考えると、レベルが全然違ったんですよね。歌やダンスが未経験のまま受けていた私も、落選後にハロプロ研修生へのお誘いをいただいたのでレベルアップのためにと加入し、2年後の「モーニング娘。’14<黄金(ゴールデン)>オーディション!」(2014年)でようやく合格しました。アイドルになりたいより「モーニング娘。に入りたい!」が強かったし、結果を出せなければ「今、何をやっていたのか」と考えると恐ろしいです(笑)。

――(笑)。三度目の正直での合格は、まさに執念ですね。ハロプロ研修生では“16ビートのリズムを叩き込まれる”などの伝統もありますが、当時学んだことは何でしょうか?

牧野 たくさんあります。ハロプロ研修生の定期公演で、当時はつんく♂さんがゲネプロ(通しリハーサル)や本番を見に来てくださり「牧野は粘り気があって、歌がよかった」と褒めていただいたときはうれしかったです。リズムを取るのが苦手だったので、つきっきりで私ができるまで教えてくださったときもあったし、スキルが高くお手本になる先輩方に囲まれていたので、ハロプロ研修生としてのバックダンサー経験でもたくさんのことを学びました。ハロプロ研修生で一緒に活動していたメンバーもすごくて、モーニング娘。の「愛の軍団」とか、MV公開の翌日にはみんなが踊れたんです。だから、私も負けないように、ステージで「先輩に追いつかなきゃ」という思いも強かったです。

――2024年6月には、モーニング娘。’24のメンバーとしてハロプロ研修生の定期公演に初めて“がい旋”しましたね。ステージでは、ハロプロ研修生の当時にしていた“二つ結び”の髪型も披露されて。

牧野 自分にとっての原点なので。ステージで歌って踊れるのが楽しく、幸せだと実感しました。ハロプロ研修生時代は踊れなければ出演できないし、歌が上手でなければ歌えないしマイクすら持てなかったんです。今いるハロプロ研修生の子たちのパワフルさも感じましたし、忘れてはいけない気持ちを思い出しました。

――かたや、井上さんは「モーニング娘。25周年記念 オーディション」(2022〜2023年)がグループ加入のきっかけでした。

井上 中学時代、コロナ禍の自粛期間にアイドルが大好きになったんです。色々な方々のMVを見ていたら、スマイレージさんのMVが目に止まり「キラキラしてかわいいな」と思い、ハロー!プロジェクトが好きになってオーディションを受けました。でも、テレビをマネして踊る程度で、歌やダンスの経験はなかったです。

――とはいえ、田舎町で育って、学校の下校時には大きな声で歌っていたそうですね。

井上 山や田んぼに囲まれていて、人もほぼ通らないし動物しかいない環境だったんです(笑)。周りに何もないので思いっきり大声を出して、モーニング娘。の「雨の降らない星では愛せないだろう?」とかを歌っていました。

――2023年6月に日本武道館でのお披露目を経て、同年8月には池袋サンシャインシティ 噴水広場で行われたアルバム『モーニング娘。 ベストセレクション~The25周年~』のリリースイベントで初パフォーマンスもありました。

井上 披露したのは「なんざんしょ そうざんしょ」の1曲だけでしたけど、場位置(ステージ上のポジション)を覚えるのが大変だった記憶はあります。最初はマイクの持ち方も分からなかったので、教育係の(12期メンバーの)羽賀(朱音)さんにマイクホールドの秘けつも教わりました。

――同年9月には「モーニング娘。’23 コンサートツアー秋 『Neverending Shine Show』」もスタートして、より忙しくなったのではないかと思います。

井上 秋はツアーだけではなく、ハロー!プロジェクトの25周年コンサートもあったので、何をやっているの分からないほど大変でした。ひたすら振り入れをやっていたし、会場の国立代々木競技場・第一体育館は会場が広く、メインステージやセンターステージ、花道の位置関係が複雑だったので、お家でマスキングテープを使って会場のミニチュアを作り、場位置を覚えました。

――その後もステージ経験を重ねて、自信はついてきましたか?

井上 まだまだです。繰り返し披露している曲もすぐ忘れてしまうので、毎回、リハーサル前に覚え直しているんです。だんだん慣れるかなと思ったけど、ずっと緊張しています。でも、同期のげったーがいるのは心強いです。リハーサル前には相談しながら振り付けを覚えて、電話をしながら一緒にステージの映像を振り返るときもあります。