役作りのためにバッティングセンター通い
──今回のドラマ『三ツ矢先生の計画的な餌付け。』では、山崎まさよしさんとW主演を務めています。役が決まったときは、どう感じました?
酒井大成(以下、酒井) すごくうれしかったです。僕はオーディションで合格をいただきこの作品に出演させていただいたのですが、オーディションを受ける前には原作も読み込んで準備していました。読んでいてとても面白かったですし、心が温かくなるようなメッセージ性を感じました。本当に素敵な作品です。特に(山崎が演じる)三ツ矢(歩)先生と石田が出会って、お互いに知らなかった価値観や考え方に生活の中で触れていくところとか。
──繊細な心の機微が描かれる難しい役どころですが、演じるうえでプレッシャーは?
酒井 僕は役者としてのキャリアはまだ浅いのですが、この作品の前は1年半ほど戦隊作品をやらせていただいていました非現実的な世界観から、現実世界のお芝居に切り替えることは意識しました。同じドラマとはいえ、まったくの別物なんだと感じました。
──そういうものなんですね。
酒井 1年半ほど同じ役と向き合っていると、癖がついてしまっているんじゃないかという心配はありました。随所で決めポーズを取ったりとか、そういう大きなアクションが身体に染みついているもので(笑)。だからこそ今回のドラマをやらせてもらえることでワクワクすると同時に、「大丈夫なのか?」という不安も正直ありました。
──今回のドラマは、料理をテーマにしているのも大きなポイントだと思います。
酒井 三ツ矢先生と石田の関係が動いていく中、必ず料理という要素が入ってくるのは自分としても新鮮でした。僕たちは普段当たり前のようにごはんを食べているけど、そこにはいろんな要素が詰まっていると思うんです。美味しい料理を口にすることで、感情も大きく動く訳ですし。そう考えると、改めて料理ってすごいジャンルだなと気づきました。
──視聴者に「美味しそうだな」と感じさせるように食べるというのも、高度な演技力が求められそうです。
酒井 色々な番組を観て勉強させていただきました。例えば『男子ごはん』(テレビ東京系)とか、ドラマだったら『きのう何食べた?』(テレビ東京系)とか。あと役作りという点に関しては、僕が演じる石田くんは大学まで野球をやっていた人物だったので、身体作りも頑張りました。
──酒井さん自身も、プロを目指していたほどゴリゴリのサッカー経験者じゃないですか。
酒井 サッカーと野球の選手では体型が全然違うんですよ。よく言われるのは、野球選手ってお尻のあたりがすごくがっしりしているということ。だから僕も今回の作品に向けて筋トレは頑張りましたし、食事の量も普段より増やしました。もちろんバッティングセンターにも通いましたし、時間があるときはひたすら素振りしていました。
──そこまで!
酒井 ドラマの中でも野球シーンが出てくるので、そこで野球を知っている人に「おいおい!そのプレーは不自然すぎる!」って思ってもらいたくないんです。それと同時に素振りを毎日やっていると、だんだん僕自身も石田の気持ちが分かってくるところがありました。台本に書かれていないところでも、「石田だったら、下半身を鍛えるためにランニングはしているだろうな」とか自分なりに想像して身体を動かしていました。
──まさに役になりきったという訳ですね。
酒井 石田は雑誌の編集者でもあるので、編集者としての面も意識しました。知り合いに編集の仕事をやっている人がいるので、いろいろヒアリングしたんです。1日のスケジュールとか、日々のやりがいとか。驚いたのは、仕事量がとにかく多いなということ。2~3ケ月先の企画を考えたりもするし、文字起こしの作業とか、データの下調べとか、ページのラフを切ったりとか、キャッチーなフレーズを編み出したりとか……。僕もこういう仕事をしている関係上、編集者の方とご一緒させていただく機会はあるんですが、すごく気持ちが沸きました。